ゲームを遊んでいると、こちらを襲ってくる敵よりも、むしろ「絶対に怒らせない方がいい」と感じるNPCに出会うことがあります。普段は店番をしていたり、武器を強化してくれたり、村の中をのんびり歩いていたりと、一見するとこちらに危害を加えるような存在には見えません。
ところが、試しに攻撃してみたり、商品を盗んでみたりすると話は一変します。さっきまで穏やかだった相手が突然襲いかかってきたり、ゲームの進行に関わる重要な機能が使えなくなったり、中にはその周回でしか見られないイベントそのものが消えてしまうケースまであります。
しかも厄介なのは、こうしたNPCの多くが最初から「危険な相手」として配置されているわけではないことです。だからこそ、軽い好奇心で手を出した結果、「こんなことになるとは思わなかった……」と後悔したプレイヤーも少なくないはずです。実際、商品を盗んだ瞬間に強烈な追跡が始まる店主や、敵対すると武器強化すらできなくなるNPCなど、ゲーム側がかなり本気で制裁を用意している例もあります。
そこで今回は、絶対に敵対してはいけないゲームのNPC8選として、怒らせた瞬間に本性を現す住人たちを紹介していきます。単純に戦闘能力が高いだけではなく、「倒したあとに困る」「逃げ切れない」「物語そのものを失う」といった、それぞれ違った怖さを持つNPCばかりです。
カクレオン|泥棒した瞬間、ダンジョン最強クラスの店主に追われる【ポケモン不思議のダンジョン】
まず紹介したいのが、『ポケモン不思議のダンジョン』シリーズに登場するカクレオンです。普段の姿だけを見れば、ダンジョン内で商品を販売してくれる普通の店主でしかありません。ところが、このカクレオンに対して「代金を払わず商品を持ち逃げする」という一線を越えた瞬間、それまでの印象が完全にひっくり返ります。
ダンジョン内のカクレオンのお店では、並んでいる商品を拾った状態で代金を支払わず店の外へ出ると泥棒扱いになります。ここまでは「まあ、店の商品を盗んだのだから怒られるよな」と納得できる話なのですが、問題はその後。店番をしていたカクレオンが襲ってくるだけでは終わらず、次から次へとカクレオンがフロア内に出現し、プレイヤーを追い詰めてくるのです。
しかも『青の救助隊・赤の救助隊』におけるカクレオンは、軽い気持ちで戦ってどうにかなるような相手ではありません。攻撃や防御をはじめとした能力が非常に高いうえ、倍速で行動するため、逃げているつもりでもあっという間に距離を詰められます。さらに泥棒状態では通常の野生ポケモンが新たに出現しなくなり、代わりにカクレオンが次々と現れるという徹底ぶり。気がついた頃には周囲を囲まれ、「ちょっと商品を盗んだだけなのに、なぜこんなことに……」という状況へ追い込まれます。
だったら道具を使って脱出すればいいと思うところですが、そこにも罠があります。泥棒状態になると「あなぬけのたま」が不発になり、倒されてしまえば救助依頼を出すこともできません。つまり、強敵に負けたときの救済まで封じられた状態で、自力で階段まで逃げ切らなければならないわけです。
何より怖いのは、それまで普通に買い物をさせてくれていたカクレオンとの落差かもしれません。見るからに危険なボスなら最初から身構えられますが、相手は少し前まで店番をしていたポケモン。それがたった一度の泥棒をきっかけに、ダンジョンでも屈指の危険な存在へ変貌するのですから、初めて遭遇したときのインパクトは相当なものがあります。
「ゲームなんだから、一度くらい盗んでみてもいいか」と好奇心を出したプレイヤーに対して、想像をはるかに超える形で代償を払わせてくるカクレオン。まさに今回のテーマである、絶対に敵対してはいけないNPCを象徴する存在と言えます。
鍛冶屋アンドレ|倒した後に気づく「取り返しのつかなさ」が怖い【ダークソウル】
カクレオンのように、敵対した瞬間から圧倒的な力で追い回されるのも十分に怖いのですが、『ダークソウル』には少し違った意味で「手を出してはいけない」と感じさせるNPCがいます。それが、不死教区で鍛冶屋を営んでいるアンドレです。
アンドレは武器の強化などを担当してくれる鍛冶屋で、敵だらけの世界を進んでいくプレイヤーにとって非常に重要な存在です。それだけならゲームでは珍しくない鍛冶屋なのですが、彼自身の人柄も印象に残ります。初対面から気さくに接してくれるうえ、別れ際にはこちらの身を案じる言葉までかけてくれるなど、殺伐とした『ダークソウル』の世界では数少ない安心して話しかけられる相手でもあります。
そんなアンドレにも、プレイヤーの攻撃は普通に当たります。もちろん最初から倒すつもりで攻撃する人もいるかもしれませんが、怖いのは操作ミスや何気なく振った武器が当たってしまうケース。攻撃を重ねて敵対状態に入れば、それまでこちらを気遣ってくれていたアンドレと戦うことになり、当然ながら武器強化や買い物も利用できなくなってしまいます。
ただ、本当に恐ろしいのはここからです。勢い余ってアンドレを倒してしまうと、彼が担当していた3種類の派生強化が、そのプレイでは利用できなくなります。つまり「強いNPCに襲われて負ける」という分かりやすい制裁ではなく、これから先の冒険で使うはずだった武器の成長ルートそのものを、自分の手で潰してしまうわけです。
一応、倒してしまう前の敵対状態であれば救済手段は残されています。不死教区の教会にいるオズワルドへ頼めば関係を修復でき、その費用はキャラクターのレベル×500ソウル。ただし、ここにも『ダークソウル』らしい容赦のなさがあり、なんと救済を担当するオズワルド自身にも攻撃できてしまいます。アンドレだけでなくオズワルドまで倒してしまえば、その救済手段さえ自分で消すことになります。
考えてみれば、かなり怖い仕組みです。ゲーム側から「このNPCは重要人物なので攻撃できません」と止められるのではなく、攻撃する自由も、敵対する自由も、そのまま倒してしまう自由までプレイヤーに与えられています。ただし、その選択によって何を失うのかについても、ゲーム側はきっちり責任を取らせてくるのです。
目の前の敵に何度倒されても、やり直せば先へ進めるのが『ダークソウル』ですが、味方であるアンドレを自分の手で失った場合は話が違います。「倒されることより、必要なNPCを失うことの方が怖い」。そんな別方向の恐怖を教えてくれる存在だからこそ、アンドレの前では武器を振り回さない方が身のためです。
コッコ|ただのニワトリだと思って斬り続けた勇者の末路【ゼルダの伝説シリーズ】
アンドレの場合は、敵対した後になって「とんでもないことをしてしまった」と気づくタイプの怖さでした。一方、『ゼルダの伝説』シリーズにはもっと分かりやすく、手を出した本人へ全力で報復してくる存在がいます。村や牧場を歩いているニワトリのような生き物、シリーズではおなじみのコッコです。
コッコが初登場したのは、1991年発売の『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』。その後もさまざまな作品に登場しているため、シリーズを遊んできた人なら一度は見かけたことがあると思います。普段は地面をつつきながら歩いているだけで、こちらから何もしなければ危険性などまったく感じさせません。
ただ、ゲームを遊んでいると試したくなるんですよね。「このニワトリ、剣で斬ったらどうなるんだ?」と。実際に攻撃すると、最初のうちは鳴きながら逃げ回るだけなので、この時点では特に問題が起きたようには見えません。ところが、面白がって何度も攻撃を続けると、ある瞬間を境にコッコの怒りが爆発します。
すると画面の外から仲間のコッコたちが次々と飛来し、リンクへ一斉攻撃を開始。しかも一羽ずつの攻撃を軽く見ていると危険で、周囲を囲まれれば連続してダメージを受けることになります。『時のオカリナ』などではその場を離れるまで追撃が続くうえ、肝心のコッコたちは基本的に倒せません。つまり、普段は魔物を相手に剣を振るっている勇者が、ニワトリの大群を前に逃げ回るしかなくなるわけです。
この光景を初見で経験すると、かなり面食らいます。強そうな敵を怒らせて返り討ちに遭うならまだ分かりますが、きっかけになったのは村を歩いていただけのコッコ。それまで危険な気配など一切なかった相手だけに、大量の仲間を呼び寄せて反撃してくる姿との落差が強烈なのです。
とはいえ、カクレオンやアンドレと比べれば救いはあります。コッコの怒りは永続するわけではなく、基本的にはマップを切り替えれば追撃が止まり、同じ場所へ戻った頃には何事もなかったかのように普段の姿へ戻っています。
だからこそ、取り返しのつかないペナルティというより、「余計なことをしたプレイヤーへのお仕置き」に近い存在なのかもしれません。それでも、何気なく剣を振ったことから始まり、最後には大量のコッコから逃げ回る羽目になる展開は、一度経験すればなかなか忘れられないものがあります。
魔王を倒す勇者であっても、世の中には喧嘩を売らない方がいい相手がいる。**『ゼルダの伝説』を遊ぶなら、コッコがどれだけ無防備に見えても剣を向けない。**これだけは覚えておいた方が良さそうです。
店主と番犬|商品を盗んだ瞬間、出口まで完全封鎖される【風来のシレン6】
コッコの場合は、ちょっとした悪ふざけに対して強烈なお仕置きが返ってくるという、どこかコミカルな怖さがありました。ただ、『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』の店で同じような軽い気持ちを出してしまうと、笑って済ませるのが難しい状況に追い込まれます。
『風来のシレン6』では、ランダムに構造が変化するダンジョンを探索していると、フロア内に店が出現することがあります。そこには冒険を有利にしてくれるアイテムが並んでいて、手持ちが心細いときほど魅力的に見えるもの。もちろん代金を支払えば普通に購入できますが、商品を持ったまま店の外へ出てしまうと、その瞬間に「泥棒」として扱われます。
ここまでは最初に紹介したカクレオンと似ていますが、『風来のシレン6』で恐ろしいのは、店主だけをどうにかすれば終わりではないところです。泥棒が成立すると店主が襲いかかってくるうえ、階段の周囲には番犬が4体出現して脱出経路を押さえ、さらにフロア全体にも追っ手が現れます。つまり商品を持ち逃げした瞬間、店員一人ではなく、フロア全体を使った包囲網から逃げるゲームへ変わってしまうわけです。
中でも厄介なのが番犬で、攻撃力と防御力が高いだけでなく、倍速で行動して2回攻撃まで仕掛けてきます。部屋から通路へ逃げ込んだからといって安心もできず、匂いをたどって追跡してくるため、「とりあえず店から離れれば何とかなる」という甘い考えも通用しません。しかも、この状態で倒されると風来救助を受けられず、その冒険はそこで終了します。
ただし、『風来のシレン』らしいのは、これだけ厳しい泥棒対策が用意されている一方で、絶対に逃げ切れない仕組みにはなっていないことです。事前に道具を揃え、階段までのルートを考えておけば、追っ手をかいくぐって商品を持ち逃げする余地も残されています。たとえば「トンネルの杖」で壁を掘り、階段へ向かうための抜け道をあらかじめ作っておくといった方法もあります。
だからこそ、シレンにおける泥棒は単なる悪ふざけではなく、一種の攻略として成立しているのが面白いところです。成功すれば店の商品をまとめて手に入れられるものの、失敗すれば強烈な追っ手に囲まれ、救助すら許されないまま冒険が終わる。そのリスクを理解したうえで「それでも盗むのか?」とプレイヤーに迫ってきます。
目の前に欲しいアイテムが並んでいると、つい出来心が生まれるかもしれません。しかし、何の準備もなく商品を抱えて店を飛び出せば、待っているのは店主と番犬たちによる容赦のない追跡劇。『風来のシレン6』で店を敵に回すなら、それは衝動ではなく、脱出まで計算したうえで挑む覚悟が必要な行為なのです。
村人とアイアンゴーレム|たった一発の誤爆から村全体が居心地の悪い場所へ【Minecraft】
『風来のシレン6』では泥棒をした瞬間、分かりやすい形で追っ手が現れました。しかし『Minecraft』の村人は、もう少し静かな方法でプレイヤーの行動に反応します。こちらが何をしたのかを内部的に覚えていて、それが後になって取引やアイアンゴーレムとの関係にまで影響してくるのです。
そもそも村人は、エメラルドと引き換えに食料や道具などを取引できる存在で、村を拠点として利用しているなら何度も顔を合わせることになります。ところがJava版では、プレイヤーから受けた行動を村人それぞれが「評判」として記録しており、攻撃すれば当然ながらその評価は悪化。今まで安く取引できていたものでも、以前より多くのエメラルドを要求されるようになります。
これがなかなか嫌な仕組みで、村人を一発殴ったからといって、その本人が武器を持って襲いかかってくるわけではありません。表面上はいつもの村人なのに、いざ取引しようとすると値段が変わっている。しかも評判は村人ごとに持っているため、誰と取引するかによって価格への影響にも違いが出てきます。派手に殴り返されるより、こうして取引画面を開いたときに「ちゃんと覚えられていたのか……」と気づく方が、妙な気まずさを感じるかもしれません。
さらに村人との関係を悪化させると、気にしなければならない存在がもう一体います。それが村を守っているアイアンゴーレムです。普段はこちらから何もしなければ、村の中を歩きながら住人を守っている頼もしい存在ですが、村人への攻撃をきっかけに敵対すれば立場は一変。先ほどまで安全だった村の中で、今度は自分が警戒される側へ回ることになります。
特に拠点として整備してきた村でこれをやってしまうと厄介です。ベッドを置き、チェストにアイテムを保管し、村人を育てて取引環境まで整えていた場所が、自分の行動ひとつで居心地の悪い空間へ変わってしまいます。どこか遠くの敵対モブなら倒して先へ進めば済みますが、日常的に利用していた村で関係を悪化させるとなると、話は少し違ってきます。
とはいえ、一度やらかしたら永久に嫌われ続けるわけではありません。評判は時間の経過などによって回復する余地があり、ゾンビ化した村人を治療すると、その村人との関係を大きく改善することもできます。ただし、こうした効果がすべての村人との関係を一度に元通りにしてくれるわけではなく、悪化した評判については少しずつ取り戻していく必要があります。
『Minecraft』は自由度が高いゲームだけに、「攻撃できるなら殴っても問題ないだろう」と考えてしまいがちです。しかし、村人は何をされても無反応な背景キャラクターではなく、プレイヤーの行動が後々まで残る仕組みを持っています。
間違えて一発殴っただけならまだ挽回できますが、何度も危害を加えていれば、そのツケは取引や村での過ごしやすさとして返ってくる。何でもできる世界だからこそ、何をしても許されるわけではない。村人とアイアンゴーレムは、そのことを意外なほどしっかり教えてくれる存在です。
トリル|無人販売だからとタダで持ち帰ると容赦なく襲ってくる店番【ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
『Minecraft』の村人はプレイヤーの行動を記憶し、後になってその影響が返ってくるタイプでした。それに対して、『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』に登場するトリルは非常に分かりやすく、「代金を払わなかったら、その場できっちり取り立てる」という店番です。
トリルがいるのはフィローネの森の奥にある小さな店で、カンテラの油や赤いクスリなどを販売しています。とはいえ、人間の店主がカウンター越しに待っているわけではなく、店番をしているのは大きなくちばしを持った鳥。しかも一般的なショップのような会計画面はなく、欲しい商品を取ったあと、自分で木箱へルピーを入れるという変わった仕組みになっています。
さらに面白いことに、支払う金額までプレイヤー側で決められます。となれば、「これ、お金を入れずに商品だけ持っていけるんじゃないか?」と考えてしまうのも自然な流れ。ゲーム側から強制的に会計させられるわけではない以上、一度くらい試してみたくなる人もいるはずです。
そして実際、1ルピーも払わず店から立ち去ることはできます。ただし、それで商品をタダでもらえたと思ったら大間違い。トリルからしっかり泥棒扱いされ、その状態で再び店へ戻ると、大きなくちばしでリンクをつついて攻撃してきます。見た目だけなら少し笑える光景ですが、攻撃にはきちんとダメージがあり、支払いを済ませるかその場から逃げるまで容赦してくれません。
しかもトリルは、「払ったか、払っていないか」だけを見ているわけではありません。支払った金額によって反応が変わり、少ない金額しか入れなければ文句を言われ、それを何度も繰り返していると態度まで悪くなっていきます。反対に多めのルピーを入れておけば機嫌よく送り出してくれるので、かなり細かいところまでプレイヤーの支払い方を見ている店番なのです。
ただ、ここまで紹介してきたNPCと比べると、トリルの怒りを収める方法はかなり良心的です。一度無銭で商品を持ち出してしまっても、きちんと代金を支払えばそれで解決します。アンドレのように重要な機能を永久に失うわけでもなければ、カクレオンのような圧倒的な戦闘能力で追い詰められるわけでもありません。
それでも印象に残るのは、この店そのものがプレイヤーの良心を試すような作りになっているからです。システム上は商品を持ち逃げできるし、支払う金額まで自分で決められる。ゲーム側が行動を縛らない代わりに、ズルをすればトリルがちゃんと反応してくるため、「できること」と「やっていいこと」は別だと分からされます。
誰もレジに立っていないからといって、商品をタダで持ち帰ってはいけない。森の中にある小さな無人販売店でも、トリルだけはしっかりこちらを見ています。
NPCたち|倒してから後悔しても遅い…失われるのは「物語」そのもの【ELDEN RING】
トリルの場合は、怒らせてしまっても代金を支払えば関係を修復できました。しかし『ELDEN RING』では、同じ感覚でNPCへ手を出すと、その後の冒険そのものに大きな穴を開けてしまうことがあります。なぜなら、このゲームに登場する商人や協力者の多くは単なる便利キャラクターではなく、それぞれがイベントや物語を背負っているからです。
『ELDEN RING』では、フィールドや拠点で出会ったNPCにもプレイヤーの攻撃が当たります。何度か攻撃を加えれば当然ながら敵対し、それまで会話していた相手が武器を手にして襲いかかってくることも珍しくありません。オープンワールドを自由に探索できる作品だけに、NPCを攻撃することまでプレイヤーの選択として許されているわけです。
もちろん、相手を倒せば何らかのアイテムを落とすこともあります。商人の場合は、倒した際に入手できる「鈴玉」を円卓にいる双子の老婆へ渡すことで、その商人が扱っていた商品を引き続き購入できるケースもあるため、「それなら倒しても困らないのでは?」と思うかもしれません。
ところが、ここで失うものは商品だけではありません。
『ELDEN RING』のNPCには、会話を重ねたり、特定の場所で再会したり、依頼を進めたりすることで展開していくイベントが数多く用意されています。つまり、その人物を途中で倒してしまえば、そこから先に用意されていた会話もイベントも発生しなくなり、その人物がどんな結末を迎えるはずだったのかさえ分からないまま終わってしまうのです。
これが『ELDEN RING』でNPCを敵に回す怖さだと思います。カクレオンのように大量の追っ手が現れるわけでも、アイアンゴーレムのように強烈な一撃で吹き飛ばされるわけでもありません。その場の戦闘だけなら勝てる相手もいますが、勝ったあとで「あのNPC、まだイベントが続いていたのか」と気づいても遅い。手に入らなくなったものがアイテムなら性能を調べれば分かりますが、失った物語は初見プレイでは存在していたことすら気づけない場合があります。
とはいえ、うっかり攻撃して敵対させただけなら、まだ取り返せる可能性は残されています。NPCが生きている状態であれば、結びの教会で「星の雫」を使って贖罪することで敵対関係を解除できる場合があります。ただし、すでに殺してしまったNPCがそれによって生き返るわけではありません。
だからこそ、初見プレイでは特に「話しかけられる相手には、とりあえず武器を振らない」という意識が大切になります。広大な狭間の地では、その場では何者なのか分からないNPCが、何十時間も先で思わぬ人物や場所につながっていくこともあるからです。
目の前のNPCを倒す自由はある。しかし、その一撃で消えてしまうのは一人のキャラクターだけではなく、その人物を通して見るはずだった物語かもしれない。『ELDEN RING』では、それこそがNPCを敵に回したときに支払う、最も大きな代償なのです。
道具屋の店主|万引きすると一生「どろぼー」扱い、戻ればさらに悲惨なことに【ゼルダの伝説 夢をみる島】
『ELDEN RING』では、NPCを倒したことで失った物語が後になって重くのしかかってきました。そして最後に紹介する『ゼルダの伝説 夢をみる島』の道具屋も、一度やってしまった行動をしっかり記憶している相手です。ただし、こちらの場合はもっと直接的で、しかも少し意地の悪い形でプレイヤーへ報いが返ってきます。
物語序盤から訪れるメーベの村には、盾や爆弾、弓などを購入できる道具屋があります。当然ながら商品には値段が設定されているのですが、実は店主の視線をうまく誘導しながら商品を持って店外へ出ると、代金を支払わずに持ち逃げすることが可能。高額な商品を見て「これ、本当に盗めるのか?」と試してしまった人もいるかもしれません。
そして、ここからが『夢をみる島』らしいところです。万引きに成功すると、その場で大量の敵が追いかけてくるわけではありません。店から出ること自体はできるので、一見すると「うまくいった」と思えてしまいます。
ところが、その代償は島の住人たちとの会話に現れます。それまで主人公の名前を呼んでくれていた住人たちが、以降は「どろぼー」と呼ぶようになり、一度ついた不名誉な呼び名は簡単には消えてくれません。こっそり商品を盗んだつもりだったのに、気がつけば島中に悪事が知れ渡っているわけですから、ある意味では敵に追い回されるより精神的にきつい仕返しかもしれません。
それでも、「もう一度あの店に入ったらどうなるんだ?」と気になるところ。実際に道具屋へ戻ると、今度こそ店主が容赦しません。こちらへ強烈な攻撃を浴びせ、主人公はその場で倒されてしまいます。しかも、体力がなくなった際に復活できる「ヒミツのくすり」を持っていても、この制裁から逃れることはできません。
さらに痛いのが、『夢をみる島』にはゲームオーバーにならずにクリアすることで見られる特別な演出が用意されていることです。万引き後に店へ戻って制裁を受ければ当然その条件にも影響するため、目先の商品をタダで手に入れた代わりに、最後までノーミスで進めてきた記録まで失うことになります。
こうして見ると、この道具屋が面白いのは「万引きそのものをシステムで禁止していない」という点です。商品を盗む方法が存在し、実際に成功もする。その代わり、実行した後には住人からの呼ばれ方が変わり、店へ戻れば店主から強烈な制裁まで受けるという形で、プレイヤー自身に選択の結果を背負わせています。
高額な商品を目の前にして、ほんの出来心で「ちょっと借りるだけ……」と考えたくなる気持ちは分かります。しかし、その一回で主人公の名前まで「どろぼー」に書き換えられ、何食わぬ顔で店へ戻れば命まで取られる。『夢をみる島』の道具屋は、盗めるからといって盗んでいいわけではないことを、かなり強烈な方法で教えてくれる店なのです。
NPCを攻撃できる自由があるからこそ「やってはいけない」が記憶に残る
ここまで8つの例を見てきましたが、改めて振り返ると、どのNPCも単純に「戦うと強い」というだけではありません。カクレオンのように圧倒的な力で追い詰めてくる相手もいれば、アンドレのように倒した後でゲーム進行への影響を思い知らされる人物もいます。さらに『ELDEN RING』では、その場では気づきにくいイベントや物語まで失う可能性がありました。
一方、コッコやトリル、『夢をみる島』の道具屋などは、プレイヤーのちょっとした好奇心をうまく利用した存在でもあります。「攻撃したらどうなるんだろう」「お金を払わず持っていけるのでは?」と考え、実際に試せてしまうからこそ、その先に用意された反応が強く印象に残るのです。
もし最初からNPCへの攻撃が禁止されていたり、商品を持ったまま店の外へ出られなかったりすれば、こうした体験は生まれません。ゲーム側が「それはできません」と止めるのではなく、あえて実行できるようにしたうえで、その行動に対する結果まで用意している。ここに、今回紹介したNPCたちの面白さがあるように感じます。
特に印象的なのは、作品によって「報復」の形がまったく違うところです。力ずくで追いかけてくる、取引条件が悪くなる、重要な機能が使えなくなる、住人から「どろぼー」と呼ばれるようになるなど、ゲームごとの世界観やシステムに合わせた形でプレイヤーへ結果を返してきます。
だからこそ、一度経験すると妙に忘れられません。ボスに負けた記憶とは少し違って、「あのとき余計なことをしなければ……」という自分の行動まで含めて思い出として残るからです。
ゲームのNPCは、話しかけたり買い物をしたりするためだけに存在しているとは限りません。こちらの行動に反応してくれるからこそ、その世界で暮らしている存在として感じられることもあります。そして自由に行動できるゲームほど、「できるけれど、やらない方がいい」という一線を自分で見極める面白さも生まれてきます。
もし今回紹介したNPCたちに初めて出会ったなら、とりあえず武器をしまって普通に話しかけるのが一番です。もっとも、「絶対に攻撃するな」と言われると一度くらい試したくなるのも、ゲームを遊んでいる人間の困ったところなのですが。
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