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なぜCDからモンスターが生まれた?『モンスターファーム』の仕組みが今見ても天才的だった

なぜCDからモンスターが生まれた?『モンスターファーム』の仕組みが今見ても天才的だった

『モンスターファーム』を当時遊んでいた人なら、一度くらいは家にあるCDを片っ端からPlayStationに入れた経験があるのではないでしょうか。

普段聴いている音楽CDはもちろん、親や兄弟が持っていたCDまで借りてきて、「これは何が出るんだ?」と試してみる。ゲームを始める前から、そんな宝探しのような遊びが始まっていたのが『モンスターファーム』でした。

そもそも本作は、自分がブリーダーとなってモンスターを育て、大会へ出場させながら成長させていく育成シミュレーションゲームです。トレーニングや食事などを通して能力を伸ばしていく一方、モンスターには寿命があるため、いつまでも同じ相棒と一緒にいられるわけではありません。育て続けるほど愛着が湧くのに、いつか別れが訪れる。この少し切ない仕組みも、本作に夢中になる理由の一つでした。

ただ、『モンスターファーム』を他の育成ゲームと大きく分けていたのは、やはり音楽CDなどのディスクから新しいモンスターを誕生させられる「再生」システムです。

CDをPlayStationに入れると、ディノやライガー、プラント、ゴーレム、ドラゴンなど、さまざまなモンスターが現れる。しかも、読み込ませるCDによって生まれる種類だけではなく、能力まで変化しました。

子どもの頃は「このCDには、このモンスターが入っているのかな」と何となく受け入れていた人もいるかもしれません。

ところが、大人になって考えてみると不思議です。

音楽を収録しただけのCDと、ゲーム内に登場するモンスターには、本来なら何の関係もありません。それなのに、なぜPlayStationへCDを入れただけで毎回異なるモンスターを生み出せたのか。

実はここに、『モンスターファーム』というゲームの面白さを支えていた、かなり巧妙な仕組みが隠されていました。

CDの中にモンスターが入っていたわけではない

では、『モンスターファーム』はゲームとは無関係な音楽CDから、どうやってモンスターを生み出していたのか。

ここでまず押さえておきたいのは、CDの中にモンスターのデータが入っていたわけではないということです。ゲーム側が音楽を聴いて、「この曲は激しいからドラゴン」「落ち着いた曲だからプラント」と判断していたわけでもありません。

実際に利用されていたのは、もっと機械的なCD固有の情報でした。

たとえば、CD全体に何曲収録されているのか、1曲目や2曲目がどこから始まるのか、最後の曲の開始位置はどこなのか、そしてCD全体の長さは何分何秒なのか。こうした、いわばCDの「目次」に近い情報を読み取り、それをモンスターを決めるための数値として利用していたのです。

この仕組みが分かると、CDによって違うモンスターが生まれていた理由も見えてきます。

アルバムが違えば、収録されている曲数も違いますし、それぞれの曲が始まる位置やCD全体の長さも変わります。その違いをゲーム側の計算処理へ通すことで、メインとなる種族や個体を決定し、さらに基本能力などを設定して、一体のモンスターとして誕生させていました。

つまり、ゲーム側からすると音楽CDは単に曲を聴くための媒体ではなく、一枚ごとに異なる数字を持った「モンスターの種」のような存在だったわけです。

しかも、この方法ならCDに収録された音楽そのものを最初から最後まで読み込む必要がありません。プレイヤーとしてはCDをセットして少し待つだけなのに、その裏側では必要な情報だけを拾い出し、ゲーム側のルールに沿ってモンスターへ変換していたことになります。

今なら仕組みを知って「なるほど、そういうことだったのか」と理解できますが、何も知らずに遊んでいた当時はそうはいきません。

お気に入りのCDを入れた瞬間、見たことのないモンスターが画面に現れる。別のCDに交換すれば、今度はまったく違うモンスターが出てくる。

仕組み自体は数値を利用した計算でも、プレイヤーから見れば本当にCDから生命が生まれているように感じられた。

『モンスターファーム』のCD再生が強烈な印象を残した理由は、この「仕組みを知らなくても直感的に面白い」という部分にもあったのだと思います。

レアモンスターだけは別だった?特定CDに仕込まれた遊び心

CDごとの情報を数値として利用していたと分かれば、通常のモンスターが変化する仕組みについては納得できます。

ところが、『モンスターファーム』のCD再生には、それだけでは説明しきれない面白さがありました。

特定のCDを読み込ませたときだけ、普段とは違う特殊なモンスターが現れることがあったのです。

少なくとも『モンスターファーム2』では、CDを読み込むと通常の計算処理へ進む前に、特殊なモンスターを再生する条件を満たしているか確認する仕組みが存在していました。CD全体の長さや2曲目の開始位置、最後の曲が始まる位置などを取得し、あらかじめ設定された値と一致すると、通常とは異なる再生処理へ進むという流れです。

これだけなら、単に「レアモンスター用のCDが設定されていた」で終わる話かもしれません。

面白いのは、選ばれたCDと生まれてくるモンスターの間に、思わずニヤリとしてしまうような関連性を感じられる組み合わせが存在したことです。

たとえば、特定の楽曲や作品を読み込ませることで、そのタイトルや内容を連想させる特殊なモンスターが登場するケースがありました。ほかにも、メーカー自身の別ゲームを使った組み合わせなどが存在し、偶然とは思えないようなネタがいくつも盛り込まれています。

ただし、ここは少し注意して見ておく必要があります。

初代『モンスターファーム』の開発者が、「このCDだから、このモンスターを設定した」と個々の組み合わせについて具体的に説明した情報までは確認されていません。一方で、発売前のインタビューでは、お気に入りのCDからモンスターを生み出して育ててもらいたいという考えが語られており、「自分が持っているCDから何が生まれるのか」という体験そのものを大切にしていたことはうかがえます。

だからこそ、当時は攻略情報を知らなくてもCDを交換する行為そのものが楽しかったのだと思います。

「このタイトルなら、もしかして……」

そんな予想をしながらCDを入れて、本当にそれらしいモンスターが出てきたらうれしい。何の関係もなさそうなCDから見たことのないモンスターが現れれば、それはそれで友達に話したくなる発見になります。

単に大量のモンスターを用意するだけではなく、プレイヤーが自分で偶然見つけたと思える余白までゲームに組み込んでいた。

この仕掛けがあったからこそ、CD再生は新しいモンスターを手に入れるためだけのシステムではなく、「次は何を入れてみよう」と現実世界まで探し回りたくなる遊びへ変わっていったのです。

家中のCDを漁る行為そのものがゲームになっていた

こうして振り返ると、『モンスターファーム』のCD再生が画期的だった理由は、珍しいモンスターが手に入ることだけではなかったと感じます。

むしろ大きかったのは、ゲーム機の外にある現実の物まで、遊びの一部に変えてしまったことではないでしょうか。

普通のゲームなら、新しいキャラクターやアイテムを手に入れるために探索する場所は、基本的にゲームの中にあります。しかし『モンスターファーム』では、PlayStationの前から離れたところから探索が始まりました。

自分が普段聴いているCDを試したら、次は家族のCDラックを探してみる。それでも足りなくなれば、友達が持っているCDも気になってくる。「このCDからは何が出るんだろう」と考え始めると、それまで音楽を聴くためにしか使っていなかった一枚が、急に未知のモンスターが眠っているアイテムに見えてきます。

しかも、実際に読み込ませるまで結果は分かりません。

見慣れたモンスターが出てくることもあれば、今まで見たことのない個体が現れる場合もある。CDによって種類や能力にも違いが出るため、「もう一枚だけ試してみよう」がなかなか終わらなくなります。家中のCDを探して片っ端から再生したくなる面白さは、当時のプレイヤーにとって一種の宝探しに近い感覚だったはずです。

そして、特殊なモンスターの存在を知ってしまうと、この遊びはさらに深くなります。

「何か珍しいCDなら特別なモンスターが出るかもしれない」「タイトルと関係のあるモンスターが設定されているかもしれない」と考え始めれば、手元にあるCDを見る目まで変わってきます。攻略本やインターネットで答えを調べる前に、とりあえず自分で入れて確かめてみたくなる。そんな好奇心を自然に引き出す仕組みになっていました。

実際、特定のCDから特殊なモンスターが生まれる組み合わせは数多く存在し、それを探していく行為にはコレクション的な楽しさもありました。

ここが『モンスターファーム』のすごいところです。

ゲーム内に広大なフィールドを用意したわけでも、何百個もの宝箱を隠したわけでもありません。それでもプレイヤーにとっては、家にあるCDラックそのものが未知のモンスターを探すフィールドになっていたのです。

だから、「どのモンスターを育てたか」だけではなく、「あのCDを入れたら、こんなモンスターが出てきた」という記憶まで残っている。

ゲームの中だけで遊びを完結させず、現実世界でCDを探す時間までゲーム体験にしてしまったことこそ、『モンスターファーム』のCD再生が今振り返っても強烈に感じられる理由の一つなのだと思います。

現在の『モンスターファーム』ではCD再生をどう再現している?

ここまでCD再生の仕組みを振り返ってきましたが、一つ気になることがあります。

現在は音楽をサブスクリプションやダウンロードで聴く人も増え、そもそも自宅に音楽CDがほとんどないという人も珍しくありません。さらにSwitchやスマートフォンには、初代PlayStationのように音楽CDをセットするためのドライブもありません。

では、現在遊べる『モンスターファーム』では、シリーズを象徴するモンスター再生をどうしているのか。

2019年に登場した移植版では、CDそのものをゲーム機に読み込ませる方法から、データベースを検索する方法へと置き換えられています。

プレイヤーがCDのタイトルやアーティスト名を入力して検索し、そこから選んだ楽曲データを利用してモンスターを再生する仕組みです。つまり、手元に実物のCDがなくても、かつての「このCDから何が生まれるのか」という遊びを楽しめる形になっています。

これは現在の環境を考えれば、かなり遊びやすい変更です。

昔のようにCDラックから目的の一枚を探したり、PlayStationへディスクを入れ替えたりする必要がなく、タイトルさえ分かればゲーム内から探せます。さらに移植版ではロード時間の改善や新規モンスターの追加なども行われているため、純粋に育成ゲームとして遊うのであれば、オリジナル版より快適になっている部分もあります。

ただ、便利になったからこそ、少しだけ失われたものもあります。

昔のCD再生には、「何が出るのか分からない物を実際に持ってくる」というひと手間がありました。押し入れから昔のCDを引っ張り出したり、家族が持っているアルバムを借りたりして、それをPlayStationへセットする。結果が分からない状態で再生を始めるからこそ、モンスターが姿を現す瞬間に独特の期待感があったのです。

今の方式なら、同じモンスター再生という遊びをずっと手軽に楽しめます。一方、家の中を探し回って偶然見つけたCDから、思いもしなかったモンスターが生まれるという体験まで完全に再現するのは難しいところです。

とはいえ、CDを持っていない世代でも『モンスターファーム』らしい遊びに触れられるようになったのは大きな意味があります。

時代に合わせて「CDを読み込む」という手段は変わっても、「自分が選んだ音楽から何が生まれるのか」という根っこの面白さは残されている。

オリジナル版を知っている人なら昔との違いを楽しめますし、当時遊んだことがない人にとっては、なぜこのシリーズのモンスター再生がこれほど語り継がれているのかを実際に確かめられる形になっています。

今振り返ると『モンスターファーム』の発想はかなり異質だった

ここまで仕組みを知ったうえで改めて『モンスターファーム』を振り返ると、CD再生は単に目新しさを狙った機能ではなかったことが見えてきます。

やっていることだけを説明すれば、CDから取得した情報を数値として処理し、その結果をモンスターへ置き換えているだけです。ところが、プレイヤー側にはそんな計算を意識させず、「自分が持っているCDからモンスターが生まれる」という分かりやすい遊びに落とし込んでいました。

ここが、今考えてもかなり上手いところです。

新しいモンスターを手に入れるために、ゲーム内で特別なアイテムを集める必要はありません。家にあるCDを一枚持ってくれば、それがそのまま新しい出会いにつながります。

しかも、そのCDにはゲームを買う前から別の思い出があります。

好きなアーティストのアルバムだったり、家族がよく聴いていた一枚だったり、たまたま家に置いてあったCDだったりする。それまで『モンスターファーム』とは何の関係もなかった物に、「このCDからはあのモンスターが生まれた」という新しい記憶まで加わっていくわけです。

初代の発売前に語られていた「お気に入りのCDからモンスターを生んで育ててほしい」という考え方を踏まえると、CD再生は単なるランダム生成の代替手段ではなく、自分が持っている物とゲームを結びつける体験そのものが重視されていたことが分かります。

さらに面白いのは、その遊びが一度モンスターを生み出したところで終わらないことです。

誕生したモンスターには餌を与え、トレーニングや休養を調整しながら育て、大会へ出場させていきます。そして、モンスターには寿命があるため、どれだけ気に入った一体でも永遠に育て続けられるわけではありません。

だからこそ、「CDを入れたら珍しいモンスターが出た」で終わらず、そこから自分で育てた時間まで含めて、そのCDに結びついた思い出になっていくのだと思います。

今なら、オンライン上からキャラクターを追加したり、ゲーム内でランダムに個体を生成したりする方法はいくらでもあります。それでも『モンスターファーム』のCD再生が今なお印象に残っているのは、便利だったからではありません。

むしろ、CDを探して、PlayStationへ入れて、何が出るのか待つという手間があったからこそ、その一連の行動まで遊びとして記憶に残りました。

ゲームの外にある物をゲームの中へ持ち込み、そこから生まれた一体に愛着を持たせる。

仕組みを知れば意外と合理的なのに、遊んでいる側にはどこか魔法のように感じられる。『モンスターファーム』のCD再生が今見ても天才的だと感じるのは、技術そのものより、こうした仕組みを「遊び」に変えてしまった発想にあるのかもしれません。

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