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【30年越しの発見】マリオ64の元画像を特定した人たちが凄すぎる!AIでは再現できなかった本物を追う

【30年越しの発見】マリオ64の元画像を特定した人たちが凄すぎる!AIでは再現できなかった本物を追う

『スーパーマリオ64』といえば、1996年の発売から30年が経とうとしている今も、研究や新しい発見が続いているゲームです。

RTAでは新たなルートが開拓され、長年知られていなかった仕様やデータが発見されることもあります。それだけでも十分すごい話なのですが、世界にはまったく別の方向からマリオ64を調べ続けている人たちがいました。

彼らが追いかけているのは、ゲームの攻略法でも隠し要素でもありません。

マリオ64の地面や壁、空などに使われている「テクスチャの元画像」を探しているのです。

昔のゲームを高画質化するだけなら、そこまで珍しい話には聞こえないかもしれません。ただ、彼らが目指したものは一般的なHD化とはかなり違っていました。

荒いテクスチャをAIで綺麗に拡大するのではなく、1996年当時の開発現場で使われた写真や素材そのものを探し出し、同じ素材からマリオ64のグラフィックを作り直そうとしたのです。

その中心となったのが「Render96」と呼ばれるプロジェクトでした。

発端となったのは、Nintendo 64時代のパッケージやゲーム雑誌などで使われていた、滑らかで美しい宣伝用CGです。当時のゲーム画面と比べると明らかに精細で、「このグラフィックのままゲームを遊べたら」と感じた人も少なくなかったはずです。

Render96を立ち上げた人物も、子どもの頃からそんな思いを抱いていました。そして2020年、マリオ64のプログラム解析が進み、ゲームの中身を作り替えられる環境が整ったことで、一つの発想にたどり着きます。

「誰かが作ってくれるのを待つのではなく、自分で作ればいい」

そこから始まった活動に同じ目的を持つ人たちが集まり、やがて20人を超える規模へ発展しました。テクスチャを作り直す人、元になった素材を探す人、足りない画像を新しく描く人と役割も分かれ、一人の思いつきだった計画がチームによる本格的なプロジェクトへ変わっていきます。

ただし、本当に大変なのはここからでした。

彼らが探そうとしているのは、今から30年ほど前にゲーム開発で使われた画像です。誰が撮影したのか、どこで撮られたのか、どの会社から販売されていたのか、そのほとんどが分かりません。

しかも、探す対象は一枚や二枚ではありませんでした。

地面も、壁も、空も含め、ゲーム一本分の元画像を可能な限り探し出す。

これが彼らの掲げた目標です。

ゲームから取り出したテクスチャは非常に小さく、拡大しても色の付いたモザイクのようにしか見えないものがあります。そこから「どの国で販売されていた、どの素材集の、どの写真なのか」を一枚ずつ特定しなければなりません。

手がかりのほとんどない30年前の写真を何百枚も探すとなれば、最初は無理だと思われても不思議ではありません。

それでも彼らは諦めませんでした。

そして、この途方もない探索を続けていくうちに、私たちが何十年も見てきたマリオ64の景色の中には、想像もしなかった現実世界の写真が隠されていたことまで明らかになっていきます。

そもそもマリオ64の景色はどうやって作られていたのか

30年近く前の元画像を探し出すというRender96の挑戦を理解するには、まず当時の3Dゲームがどのように作られていたのかを知っておく必要があります。

今ではゲームのグラフィックが非常に精細になり、岩肌の細かな凹凸や草木の一本一本まで立体的に表現される作品も珍しくありません。一方、マリオ64が発売された1990年代は、家庭用ゲーム機で本格的な3Dゲームを動かすこと自体が大きな挑戦だった時代です。

そこで重要な役割を担っていたのが「テクスチャ」でした。

簡単にいえば、3Dで作られた物体の表面に貼り付ける画像のことです。

たとえばゲーム内にレンガの壁があったとしても、レンガを一個ずつ立体的に作って積み上げているとは限りません。壁となる形を用意して、その表面にレンガが並んだ画像を貼り付ければ、プレイヤーからはきちんとレンガ造りの壁に見えます。

地面の土や洞窟の岩肌、空に浮かぶ雲といった景色も同じ考え方で表現できるため、限られた性能の中で3D空間を作るには非常に重要な技術でした。

ただ、ここで気になるのが、その表面に貼り付ける画像をどこから用意していたのかという部分です。

1990年代のゲーム開発では、市販されていた写真素材集を利用する方法が使われていました。今なら素材サイトから画像を探す光景を想像しやすいですが、当時は何百枚、何千枚もの写真を収録したCD-ROMが商品として販売されており、広告やチラシだけでなくゲーム制作にも利用されていたのです。

もちろん、これは開発者が楽をするためだけの方法ではありません。

マリオ64のカセットに収録されていたデータは全部合わせても8MBほどで、その中にステージ、キャラクター、音楽などを詰め込む必要がありました。さらに当時は3Dゲーム制作そのものが手探りだったため、容量だけでなく開発期間にも大きな制約があります。

そこで、本物らしい岩肌をゼロから作るのではなく、実際の岩を撮影した写真を小さく加工して貼り付ける。

限られた環境でリアルな質感を表現するには、かなり合理的な方法だったわけです。

そして、ここが今回の話を面白くしている部分でもあります。

私たちが子どもの頃から何度も見てきたゲームの景色には、現実のどこかで誰かが撮影した写真が、原形が分からないほど小さく加工されて残っている可能性があります。

Render96が探そうとしたのは、まさにその「加工される前の一枚」でした。

しかし、元の写真がゲーム内にそのまま残っているわけではありません。大幅に縮小され、ときには切り抜きや反転といった加工まで施された画像から、数十年前のオリジナルを突き止める必要があります。

では、そこまでして元画像にこだわる必要があったのか。

実はRender96も、最初から30年前の写真を一枚ずつ探していたわけではありません。彼らが最初に試したのは、AIを使ってマリオ64の画像を高画質化する、もっと現実的に見える方法だったのです。

AIで綺麗にするだけでは「本物のマリオ64」にならなかった

元画像を一枚ずつ探すという途方もない作業に入る前に、Render96も最初はもっと現実的な方法を試していました。

それが、AIを使ってゲーム内のテクスチャを高解像度化するアップスケールです。

マリオ64から取り出した低解像度の画像をAIに読み込ませ、元の色や形を参考にしながら「おそらく本来はこういう画像だったはず」と補完してもらう。現在では珍しくない技術ですが、粗かった画像を滑らかにする効果は大きく、見た目だけでいえばかなり綺麗になりました。

普通のHD化が目的なら、この時点でも十分な成果だったはずです。

ところが、Render96が求めていたものは単純な高画質化ではありませんでした。

AIがどれだけ自然な画像を作ったとしても、それは残された低解像度のテクスチャから推測して描き直した画像です。1996年当時、開発者が実際に手に取った素材や、そこから作られた本来の画像そのものではありません。

ここで彼らの目的が大きく変わっていきます。

「それらしく綺麗にする」のではなく、当時使われていた素材そのものを見つければ、本来の姿に限りなく近づけられるのではないか。

言葉にすると単純ですが、実際にやろうとすれば話はまったく違います。

たとえば岩肌のテクスチャがあったとして、AIなら残された画像から岩らしい細部を補完できます。しかし、その岩が本当はどこの写真から作られたのかまでは分かりません。元画像に小さな傷や独特な色の変化があったとしても、ゲーム内の数十ピクセルから失われた情報を正確に復元することはできないからです。

だからこそRender96は、AIに「答えを想像してもらう」のではなく、30年前に存在していた答えそのものを探す方向へ進みました。

当時の開発者が使っていたものと同じ写真を見つけ、同じように切り抜き、縮小や加工を施してテクスチャを作り直す。そうすれば、現代的な解釈で綺麗にしたマリオ64ではなく、1996年の制作環境をたどった高解像度版に近づけられます。Render96が掲げたのは、まさにそこまで踏み込んだ再現でした。

ただ、この方針を選んだ瞬間から難易度は一気に跳ね上がります。

ゲーム内には「この画像は○○社の素材集から使いました」といった情報が残されているわけではありません。手元にあるのは、30年近く前に大幅な縮小や加工を施された小さなテクスチャだけです。

そこから販売元も商品名も分からない元写真を探し出し、しかも地面、壁、空といったゲーム一本分の素材を可能な限り特定する必要があります。

一見すると、答えのない間違い探しを延々と続けるような作業です。

それでも彼らは、「当時の本物を使って作り直す」という目標を諦めませんでした。

そして実際に調査を始めると、ゲームのデータだけを眺めていても答えにはたどり着けないことが分かってきます。そこで彼らが目を向けたのが、1990年代のゲーム開発者たちが使っていた機材やソフト、そして当時販売されていた大量のCD-ROM素材集でした。

数十ピクセルの画像から30年前の写真を探す狂気の作業が始まる

元画像を探すと決めたところで、当然ながら「検索すればすぐに見つかる」という話ではありません。

ゲーム内に残されているテクスチャは大幅に縮小されており、拡大しても色の付いたモザイクのようにしか見えないものがあります。そこから元写真を特定するには、「何が写っているのか」だけでなく、どの国で、いつごろ販売され、どの素材集に収録されていたのかまで絞り込まなければなりませんでした。

そこでRender96のメンバーは、いきなり写真を探すのではなく、まず1990年代のゲーム開発者が何を使っていたのかを調べ始めます。

当時は現在の一般的なPCとは異なり、Silicon Graphics製の高価なワークステーションなどが3D制作に使われていました。そのためメンバーの一人は、当時のワークステーションで動いていた3Dソフトのファイルまで調べ、元画像につながりそうな手がかりを一つずつ探していったとされています。

そして、調査の流れを大きく変えたのが「日本で作られたゲームなら、日本で販売されていた素材を使っている可能性がある」という発想でした。

それまで英語圏を中心に素材を探していたところから、日本語でも検索するようになり、やがて候補として浮上したのが、日本のデータクラフトという会社が販売していた写真素材シリーズです。

1990年代から大量の写真を収録して販売していたもので、探していた条件にも合致していました。これによって、まったく手がかりのない状態から「このあたりの素材集を調べれば見つかるかもしれない」というところまで、ようやく範囲を絞れるようになります。

とはいえ、ここで元画像が見つかったわけではありません。

一つの素材集だけでも約200枚の写真が収録され、さらに同じシリーズが何十本、何百本と存在します。候補となる棚までは見つけたものの、その棚には膨大な写真が並んでいるような状態でした。

そこから行われた作業は、驚くほど地道です。

まずゲームからテクスチャを取り出して拡大し、何を撮影した画像なのかを推測する。そのうえでゲームの発売年や開発された国などから可能性の高い素材集を選び、収録されている写真を一枚ずつ見比べていきます。

しかも、元写真がそのまま縮小されているとは限りません。

一部分だけを切り取る、左右を反転する、上下をひっくり返す、鏡合わせにしてつなげる、さらには元写真へ別の要素を描き足す。こうした加工が施されているケースもあり、完成したテクスチャだけを見ても元写真の姿を想像できない場合がありました。

ここまで加工されると、現在のAIに大量の画像を読み込ませれば簡単に探せる、というわけにもいきません。

実際、この照合作業ではAIツールを使わず、人間の目で写真を比較していたとされています。原型が分からなくなるほど加工された数十ピクセルの画像と、何千、何万枚と存在する写真を見比べ、特徴が一致する一枚を探していくわけです。

それだけ聞けば、いつ終わるのか分からない作業に思えます。

ところが、一度「どの時代の、どの会社の、どのシリーズを探せばいいのか」という知識が蓄積されると、発見の速度も変わっていきました。

実際、マリオカート64のヨッシーバレーに使われていた草のテクスチャでは、候補となる素材集を数枚確認しただけで一致する写真を発見し、探索開始からわずか15分ほどで元画像へたどり着いた例まであります。

最初は30年前の写真を闇雲に探していた人たちが、経験を積むうちに「この質感なら、この年代のこの素材集が怪しい」と候補を絞れるようになっていったわけです。

そして、その積み重ねから発見されたものの中には、ゲームを何度も遊んだ人ほど驚かされる一枚がありました。

銀色に輝くメタルマリオ。その金属らしい模様の正体は、金属を撮影した写真ではなかったのです。

メタルマリオの正体は「金属」ではなく庭の写真だった

数え切れないほどの素材を照合していく中で、Render96の活動を象徴するような発見も生まれました。

その一つが、マリオ64に登場するメタルマリオのテクスチャです。

メタルキャップを取ると、マリオの全身が銀色に変化し、表面には光が反射しているような独特の模様が浮かびます。ゲームを遊んだことがある人なら、一度は目にしている姿だと思います。

見た目だけなら、金属板や銀色の物体を撮影した画像を加工して貼り付けたと考えるのが自然です。

ところが、2021年に元画像が特定されたことで、その予想は大きく外れることになりました。

メタルマリオの表面に使われていた画像の正体は、花が咲いている庭と、その隣に建つ家を撮影した風景写真だったのです。

金属とはほとんど関係のない、ごく普通の風景写真です。

なぜそれがメタリックな質感に見えていたのかというと、元の風景が分からなくなるほど小さく縮小され、キャラクターの表面へ貼り付けられていたためです。庭の花や建物と認識できた部分が色や明暗の細かな変化へと変わり、結果として、プレイヤーの目には金属特有の複雑な反射のように映っていました。

ここが昔のゲームグラフィックの面白いところでもあります。

最初から「金属らしい模様」を精密に描かなければ、金属を表現できないわけではありません。まったく別の写真であっても、縮小して色や明暗だけを利用すれば、それまでとは違った質感として成立する場合があります。

しかも、メタルマリオが登場したのは1996年です。

そこから25年もの間、多くのプレイヤーが銀色の身体を見続けてきたにもかかわらず、その中に庭と家の風景が隠れているとは分かりませんでした。元写真が特定された2021年になって、ようやく「自分たちはずっと風景写真を金属として見ていた」と判明したことになります。

一度それを知ってからメタルマリオを見ると、以前とは少し違って見えてくるのも興味深いところです。

そして、こうした発見はメタルマリオだけで終わりませんでした。

元画像を探すための知識や素材集の情報が蓄積されるにつれて、Render96の調査はマリオ64の枠を越えていきます。すると、子どもの頃に何気なく見ていた別のゲームの風景やアイテムからも、現実世界で撮影された写真の痕跡が次々と見つかっていったのです。

マリオ64だけではなかった!次々に判明する昔のゲームの「元写真」

メタルマリオから風景写真が見つかっただけでも十分驚きですが、元画像を探すための知識が蓄積されていくと、調査対象はマリオ64だけに収まらなくなっていきました。

というのも、1990年代から2000年代初頭にかけて、市販の写真素材をテクスチャとして利用していたのはマリオ64だけではありません。同じ時代に作られたゲームを調べてみると、「これも同じ素材集から作られているのではないか」という候補が次々と出てきたのです。

その一つが、2001年に発売された『大乱闘スマッシュブラザーズDX』でした。

スマブラDXには、おにぎりやラーメンなど、拾うと体力を回復できる食べ物が多数登場します。当時のゲームとしては妙に実写感のある見た目でしたが、その出所を調べてみると、料理を撮影した市販の写真素材集に行き着きました。

中でも分かりやすいのが、ざるそばの画像です。

元写真とゲーム内の画像を比べると、箸の置かれている位置や器の配置まで一致しており、写真をゲーム用に加工して使っていたことが分かります。

さらに、調査は『ゼルダの伝説 時のオカリナ』にも及びました。

2025年には、ゲーム内に登場する切り株の元になった画像が特定されています。ただし、こちらは元写真をそのまま小さくしただけではなく、写真の一部分を切り出したうえで鏡合わせにして複製し、一つの切り株として見えるよう加工されていました。

こうなると、元画像探しが難しい理由もよく分かります。

ゲーム画面と素材集の写真を横に並べれば誰でも気づけるものばかりではなく、写真のほんの一部分だけを切り出し、反転や複製まで加えた状態から元の一枚を見つけなければならないケースもあるからです。

『マリオカート64』でも、同じような発見がありました。

ヨッシーバレーに使われていた草のテクスチャを調べたところ、その元になっていたのは1994年に日本で発売された素材集に収録された写真で、黄色い花だけでなく桜まで写り込んだ、のどかな山の風景だったとされています。

ゲームの中では「草原の模様」としか認識していなかったものが、加工される前までさかのぼると、一枚の風景写真として存在していたわけです。

そして面白いのは、ゲーム内のテクスチャだけではありません。

マリオ64のパッケージやカセットラベルで使われていた青空についても調査が行われ、2021年には海外の写真素材集に収録されていた一枚だと特定されています。その際には、メンバーが実際に写真を収録したCDを購入し、元画像との照合まで行いました。

こうした発見を並べていくと、昔のゲームを見る感覚も少し変わってきます。

何気なく通り過ぎていた草原も、背景に広がっていた空も、アイテムとして置かれていた食べ物も、その向こう側には撮影した人がいて、元になった現実の風景や料理が存在していました。

そしてRender96の人たちは、それらを単なる雑学として見つけて終わったわけではありません。

彼らが元画像を探し続けていた本来の目的は、あくまで当時使われた素材からマリオ64を作り直すことです。

では、2020年に「パッケージで見たようなマリオ64を実際に遊びたい」という思いから始まった無謀とも思える計画は、その後どこまで実現したのか。

実は、彼らは元画像を探していただけではなく、本当にマリオ64のグラフィックを置き換えるところまでたどり着いていました。

そして3年後、本当に「当時の素材」でマリオ64を作り直してしまった

元画像を探し始めたRender96にとって、写真を特定すること自体が最終目的ではありませんでした。

彼らが最初から目指していたのは、1996年当時に使われた素材を可能な限り取り戻し、それを使ってマリオ64のグラフィックを高解像度で再構築することです。

そのため、新しい元画像が発見されるたびに、それまで使っていたAIアップスケール版のテクスチャから置き換える作業が進められていきました。

ここで重要なのは、単純に「昔のゲームを現代風に綺麗にした」という話ではないことです。

AIでアップスケールすれば、低解像度だった岩肌をより細かくしたり、ぼやけていた草を自然な形に補ったりできます。ただし、そこで追加される細部はAIが推測したものであり、1996年当時の開発者が使った情報ではありません。

一方、元になった写真そのものが見つかれば、話は変わります。

小さなテクスチャでは潰れてしまった岩の細かな模様や、草の一本一本、空に広がっていた雲の形まで、本来そこに存在していた情報を使って作り直せるからです。

だからこそ、彼らにとって元画像の発見は「昔のゲームに関する新しい雑学が一つ増えた」というだけではありません。その一枚が見つかるたび、Render96が目指していたマリオ64の姿へ少しずつ近づいていくことになります。

そして2022年から2023年にかけて、プロジェクトは大きな節目を迎えました。

当初のHDテクスチャパックに残っていたAIアップスケール画像の多くが、調査によって見つかった本来の素材を使ったものへ置き換えられていったのです。

もちろん、すべての元画像が発見できたわけではありません。

どうしても元になった素材を見つけられない部分については、当時どのように作られていたのかを分析し、その制作方法まで意識しながら再現する形が取られました。

つまり、元写真が見つかった場所はその素材から作り直し、見つからない場所についても1996年当時の作り方に近づけていく。単に解像度だけを上げるのではなく、「当時の開発者なら、この素材からどうやってこの画面を作ったのか」までさかのぼろうとしたわけです。

2020年にプロジェクトが始まった時点では、ゲーム一本分の元画像を探すという目標そのものが、どこまで実現できるのか分からない状態でした。

それが約3年という時間をかけて素材を探し続け、見つかったものを一つずつ置き換えていった結果、当初はAIによる推測で補われていたマリオ64が、実際に当時存在していた素材を中心とした姿へ変わっていきました。

ただ、それでRender96の活動が終わったわけではありません。

今も元画像が特定されていないテクスチャは残されており、探すべき「答え」はすべて見つかったわけではないからです。

そして、この話を最後まで追っていくと、彼らがやっていることは単なる高画質化とは少し違って見えてきます。

30年前のゲームを作り直しているようで、実際には30年前の開発者たちが何を見て、何を選び、どうやってあの世界を作ったのか、その痕跡そのものを掘り起こしているのです。

昔のゲームを調べると、開発者が見ていた景色まで見えてくる

Render96の活動を追っていると、最初は「マリオ64を綺麗なグラフィックで遊ぶためのプロジェクト」に見えていたものが、途中から少し違った意味を持っていることに気づきます。

なぜなら、彼らが見つけているのは単なる高画質版の画像ではなく、1990年代のゲーム開発者が実際に手に取り、作品の材料として選んだ写真だからです。

メタルマリオの表面に使われていた庭と家の写真も、ヨッシーバレーの草原に使われていた風景も、ゲームが発売された当時は特別なものとして意識されることなく、一つの素材として加工されました。

それが何十年も経ったあと、元写真を探す人たちが現れたことで、「この場所には、もともとこんな景色が使われていたのか」と分かるようになったのです。

しかも、元画像とゲーム内のテクスチャを比べていくと、当時の開発者が素材をそのまま貼り付けていたわけではないことも見えてきます。

必要な部分だけを切り抜いたり、左右を反転させたり、同じ部分を組み合わせたり、ときには元写真には存在しなかったものを描き加えたりする。限られた素材と容量の中で、ゲームの世界に合うよう工夫しながら一枚のテクスチャへ変えていました。

こうした加工の跡まで分かってくると、見えてくるのは「元画像が何だったのか」だけではありません。

一枚の写真を見た開発者が、そこから何を使えると判断したのか。

メタルマリオの例は、その面白さが特に分かりやすいと思います。

庭と家が写った風景写真を見て、それをそのまま風景として使うのではなく、大幅に縮小してキャラクターへ貼り付けることで金属のような質感に変えてしまう。完成したゲームだけを見ていると分かりませんが、元画像までさかのぼったことで、素材を別のものへ変換する発想まで見えるようになりました。

これは、現在の完成されたゲームから開発当時を逆向きにたどっているようなものです。

発売されたゲームには完成形しか残っていません。しかし、テクスチャの元画像を一枚ずつ特定し、その加工方法まで調べれば、30年前の開発者がどんな素材を使い、どんな工夫を加えながらマリオ64の世界を組み立てていったのか、その過程の一部まで浮かび上がってきます。

だからこそ、Render96が続けている元画像探しは、単なる高画質化だけでは終わらない面白さがあります。

マリオ64を遊んでいた頃には、地面の模様や壁の質感を見て「この画像はどこから来たのか」と考えることなど、ほとんどありませんでした。

それでも30年近く経ってから調べてみると、数十ピクセルの小さな画像の向こう側に、当時販売されていた写真素材集があり、その写真を選んだ開発者がいて、限られた容量の中でゲームとして成立させるための工夫まで残されています。

ゲームの中に残された一枚の画像から、30年前の制作現場までたどっていく。

マリオ64の元画像探しがこれほど多くの人を引きつけるのは、見つかった写真そのものだけではなく、そこから当時のゲーム作りまで見えてくるからなのかもしれません。

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