『カルティベーター ~引退騎士とモン娘のにぎやか開拓記~』は、畑を耕して作物を育てながら、料理や採掘、鍛冶、探索、そして仲間との冒険まで楽しめる長編の開拓RPGです。
物語の始まりは、主人公が亡命を余儀なくされ、人里から離れた霊山へ逃げ込んだところから。そこで襲ってきた魔物を退けるのですが、その正体はアークデーモンの少女・メイファでした。
行く場所を失っていた主人公は、メイファに匿ってもらう代わりに、荒れてしまった霊山の復興を手伝うことになります。畑を作って食料を確保し、収穫した作物から料理を作る。必要な鉱石があれば自分たちで採掘し、それを使って武具を整えながら、まだ見ぬ土地へ足を延ばしていく。そんな生活と冒険が少しずつ広がっていきます。
農業を中心にしたのんびり系の作品かと思いきや、実際にはかなり大規模です。登場するヒロインは14人で、出会うまでに数十時間以上かかる人物まで存在します。それでも途中参加の脇役という扱いではなく、全員が最後まで活躍しながら、それぞれのエピソードを積み重ねていく構成になっています。
そして何より驚くのが、そのプレイ時間です。テストプレイヤーの平均プレイ時間は100時間を超えており、短時間で一気にクリアするタイプではありません。農業をして、料理を作って、仲間が増えて、新しい場所を探索して、強敵と戦う。その積み重ねによって霊山での暮らしそのものが大きくなっていくため、腰を据えて一つの世界に入り込みたい人ほど気になる内容になっています。
しかも、農業や探索がおまけとして付いているわけではなく、それぞれにかなり細かなシステムが用意されています。「100時間も何をして遊ぶのか」という部分まで見えてくると、本作の印象はかなり変わってくるはずです。
亡命した元騎士が始めるのは、荒れた霊山での開拓生活
『カルティベーター』の面白いところは、最初から「のんびり農業を始めよう」と主人公が霊山へやって来るわけではないことです。
主人公は、ある事情から亡命を余儀なくされた元騎士。人の暮らす場所から遠く離れた霊山へ逃げ込み、そこで襲いかかってきた魔物を退けます。ところが、その魔物は倒されたあとに女の子の姿となり、自らをアークデーモンのメイファと名乗りました。
行き場のない主人公をメイファは匿ってくれますが、もちろん何もしないまま居候できるわけではありません。その代わりとして任されたのが、荒れてしまった「霊山の復興」です。
そこで主人公は土地を耕し、作物を育てるところから新しい生活を始めます。収穫したものは料理にして仲間たちの食事に使い、装備が必要になれば鉱石を採掘して武具を鍛える。さらに活動範囲を広げるため未知の土地へ向かい、ときには山の魔力を独占している強力な魔物とも戦わなければなりません。
つまり本作の農業は、独立したミニゲームとして存在しているのではなく、霊山で生きていくための生活そのものになっています。
畑を広げれば収穫できるものが増え、手に入れた素材からできることも増えていく。そして探索を続けていると新しい出会いがあり、主人公の周囲は少しずつにぎやかになっていきます。何もない場所に自分たちの暮らしを作り、それが冒険の進行と一緒に広がっていく感覚が、本作の開拓RPGとしての土台になっているわけです。
さらに、主人公が出会うのはメイファだけではありません。異性の魔物とは「魂の契約」によって新しい仲間になる仕組みがあり、さまざまな個性を持ったモン娘たちが霊山へ集まってきます。
最初は亡命先にすぎなかった霊山が、開拓と新たな出会いを重ねることでどんな場所へ変わっていくのか。農業や料理だけを切り取るのではなく、この変化そのものを追いかけたくなるのが『カルティベーター』の魅力です。
作物は30種類以上。本格的すぎる農業システムが面白い
霊山での生活を支える農業ですが、『カルティベーター』では単に種をまいて、育った作物を収穫するだけでは終わりません。登場する作物はカブや稲、唐辛子、サトウキビなど30種類以上。それぞれに特徴があり、何をどのように育てるかまで考える作りになっています。
分かりやすいのが「旬」の存在です。たとえば白菜なら秋に育て、旬を迎える冬に収穫すると豊作を狙えます。とりあえず畑に植えておけば同じ結果になるのではなく、作物に合わせて収穫までの流れを考える必要があるわけです。
肥料についても同じで、多く与えれば必ず収穫量が増えるという単純な仕組みではありません。ナスは肥料を好む一方、サツマイモは与えすぎるとかえって収穫量が減り、痩せた土地のほうがよく育ちます。このあたりまで違いが設定されていると、30種類以上ある作物を育て比べる楽しさも出てきます。
しかも、ここにはモン娘たちの個性もしっかり絡んできます。
アルラウネは肥料の最適化を得意とし、蜘蛛のモン娘は害虫退治のスペシャリスト。仲間が増えることによって会話やイベントが増えるだけでなく、「誰と一緒に暮らしているか」が農業にも影響するため、開拓と仲間集めが別々の遊びになっていません。
ここまで細かく作られている理由を知ると、さらに驚かされます。ゲーム内に登場する作物は、農業システムを作るために作者自身が実際に栽培しており、その経験をもとに各作物のパラメーターが設定されています。ゲーム後半には家庭菜園の参考になるおまけまで用意されているほどで、農業を雰囲気作りだけで終わらせたくないというこだわりが感じられる部分です。
とはいえ、誰もがそこまで本格的な農業を求めているわけではありません。その点も考えられていて、じっくり楽しみたい場合は「本格農業モード」、テンポを優先したければ「カジュアル農業モード」を選択できます。
30種類以上の作物をどう育て、収穫したものを何に使い、仲間たちとの暮らしをどう豊かにしていくのか。農業だけを見ても想像以上に遊び方の幅があり、「100時間級」とされるボリュームの中で実際にどんな開拓生活が待っているのか、その中身が気になってくるところです。
育てて終わりじゃない。料理・採掘・鍛冶・探索が全部つながっていく
畑で作物を育てられるだけでもかなり本格的ですが、『カルティベーター』の開拓生活は農業だけでは完結しません。収穫した作物を料理やおやつに加工し、鉱石を掘って武具を整え、新しい素材を求めてまだ見ぬ土地へ向かう。ひとつの行動が次にやりたいことへつながっていくため、気が付けば霊山での活動範囲そのものが広がっています。
なかでも、生活している感覚を強くしてくれるのが料理です。
用意されている料理やおやつは約100種類。それだけなら単純にレシピの多いゲームともいえますが、本作では複数のヒロインに料理を食べたときの感想まで設定されています。せっかく収穫した作物を料理にするなら、誰かに食べてもらったときの反応も見たくなる。そんな小さな楽しみがあることで、畑仕事にも別の目的が生まれてきます。
さらに、冒険へ連れていく仲間によって、さまざまなイベントで専用の台詞が用意されているのも面白いところです。パーティーは最大4人なので、誰を連れていくかによって同じ世界を旅していても見られる反応が変わります。お気に入りの仲間をずっと連れ歩くのもよければ、メンバーを入れ替えながら、それぞれの会話を楽しむ遊び方もできます。
そして霊山の外へ目を向ければ、採取や釣り、採掘といった探索要素が待っています。手に入れた素材は鍛冶や調合などにも関わってくるため、探索そのものが次の開拓や冒険に必要な準備へつながっていきます。作品紹介でも「採取、釣り、鍛冶、調合、畜産」といった要素が並んでおり、かなり幅広い遊びが盛り込まれています。
こうした要素が別々に置かれているのではなく、畑で作物を育てることも、料理を作ることも、素材を探して冒険することも、すべて霊山で暮らしていく流れの中にあるのがポイントです。
今日は畑を整えるつもりだったのに、料理に必要な素材が足りず探索へ出かけ、その途中で別の素材を見つけたことで今度は装備を作りたくなる。さらに仲間を連れて歩けば、それまで知らなかった反応や会話にも出会える。やることが多いというより、ひとつの目的から自然に次の目的が生まれていくタイプのゲームになっています。
100時間を超えるプレイ時間も、単純にストーリーが長いからというだけではありません。畑を育て、料理を作り、素材を集め、仲間たちと各地を巡る。その積み重ねまで含めて遊ぶからこそ、この世界で過ごす時間そのものが大きなボリュームになっているようです。
14人が「ほぼメインヒロイン」。仲間が増えるほど生活がにぎやかになる
農業や料理、探索といった遊びを長く続けていくうえで、もうひとつ大きな存在になっているのが、霊山で暮らす仲間たちです。
『カルティベーター』には14人ものヒロインが登場します。人数だけを見ると「たくさんのキャラクターからお気に入りを見つけるゲーム」にも思えますが、本作の場合は少し違います。特定の数人だけが物語の中心になるのではなく、14人全員がメインヒロインに近い扱いとなっており、それぞれがエピソードを重ねながら最後まで活躍する構成です。
しかも、最初から全員が揃っているわけではありません。なかには出会うまで数十時間以上かかるキャラクターもいるため、長く遊んだ先にも新しい出会いが残されています。
これが100時間級の開拓RPGとはかなり相性が良く、霊山での暮らしが軌道に乗ってからも、新しい仲間との出会いによって雰囲気が変わっていきます。最初は主人公とメイファから始まった生活が、冒険を重ねるにつれて少しずつ大所帯になっていくわけです。
そして、仲間が増える意味はストーリー上の変化だけに留まりません。
農業が得意な種族も存在し、アルラウネなら肥料の最適化、蜘蛛のモン娘なら害虫退治といった形で、それぞれの特徴を開拓に活かせます。戦闘でも仲間ごとに能力が大きく異なるため、新しい人物との出会いが、そのまま農業や冒険の選択肢を増やすことにつながっています。
普段の交流についても細かく、約100種類ある料理やおやつには複数ヒロインの感想が用意され、共同作業や会話イベントも数多く収録されています。さらに、冒険中は連れているメンバーによってイベントの台詞が変化するため、好きな仲間をパーティーに入れているだけでも、そのキャラクターらしさに触れる機会が増えていきます。
こうして見ると、本作における14人という人数は、単純なキャラクター数を示しているだけではありません。
新しい仲間と出会えば会話が増え、畑仕事にも変化が生まれ、戦闘で取れる戦術まで広がっていく。だからこそ、「次はどんな仲間が霊山へやって来るのか」という楽しみが、長い開拓生活を進める理由のひとつになります。
数十時間遊んだ先にもまだ出会っていない人物がいて、その仲間が加わることで今までとは違った暮らしが始まる。14人全員が揃ったとき、最初は寂しかった霊山がどれほどにぎやかな場所へ変わっているのか。その変化まで見届けたくなる作りになっています。
戦闘まで本気。状態異常がラスボスにも通用するターン制バトル
仲間が増えて霊山でできることが広がっていく一方、外の世界を探索するとなれば、当然ながら危険な魔物とも向き合うことになります。生活や農業にかなり力が入っている『カルティベーター』ですが、戦闘についても片手間の要素ではなく、パーティー編成から行動順まで考えたくなるターン制バトルが用意されています。
基本となるのは、毎ターン蓄積するTPを消費してスキルを使うコマンドバトルです。ただし、キャラクターによって戦闘開始時のTPや毎ターンの回復量が異なるため、強い技を覚えたからといって全員を同じ感覚で動かせるわけではありません。誰がどのタイミングで技を使えるのかまで含めて、それぞれに役割を持たせる必要があります。
さらに面白いのが、仲間たちの能力です。
最大HPを超えるほどの毒ダメージを狙える仲間がいれば、倒した敵を復活させて操る仲間もいます。敵を倒し続ける限り1ターンに何度も行動できたり、力を溜めることで攻撃力を最大8倍まで引き上げたりと、能力の方向性そのものがかなり大胆です。
こうなると、新しい仲間との出会いは単純な戦力アップではありません。「この能力とあの能力を組み合わせたら何ができるのか」と考える余地が生まれるため、14人という仲間の多さがそのままパーティー編成の面白さにもつながっています。
そして、本作の戦闘で特に気になるのが状態異常の扱いです。
RPGではボスになると毒や行動阻害がほとんど効かず、結局は攻撃力の高い技で押し切る展開になることもあります。ところが『カルティベーター』では、雑魚敵だけでなくラスボスにまで状態異常が通用します。しかも敵の弱点や耐性、状態異常の付与率まで開示されているため、運任せに技を使うのではなく、相手の情報を確認したうえで攻略方法を組み立てられます。
強敵を前にして「レベルが足りないから上げる」だけではなく、編成を変えたり状態異常を利用したり、誰に攻撃を受けてもらうかまで考える。そうやって自分なりの突破口を探せるので、農業や開拓とはまた違ったところで、じっくり試行錯誤する楽しさが用意されています。
もちろん、開拓やキャラクターとの交流を中心に楽しみたい人まで、難しい戦闘を延々とこなす必要はありません。通常のイージーモードに加えて、戦闘をほぼカットできる「ピクニックモード」まで用意されており、反対に歯応えを求める人にはボスへ専用能力と報酬が追加される高難度も存在します。
農業は自分の好みに合わせて本格派とカジュアルを選べて、戦闘についても物語優先から高難度まで調整できる。それだけ遊び方に幅があると、100時間という数字だけでは分からない「自分ならどんな遊び方になるのか」まで気になってきます。
じっくり遊べる開拓RPGを探しているならチェックしておきたい一本
『カルティベーター』は、農業ゲームが好きという理由だけで選ぶより、ひとつの世界に長く滞在しながら、自分たちの暮らしが少しずつ出来上がっていく過程を楽しみたい人ほど魅力を感じやすい作品です。
最初は人里から離れた霊山へ逃げ込んだ主人公と、そこで出会ったメイファから始まります。それが畑を作り、食料を確保し、新しい土地を探索するうちに仲間が増えていく。できることが増えるのと同時に、主人公にとって霊山が単なる亡命先ではなく、自分たちが暮らす場所へ変わっていくところに本作ならではの面白さがあります。
そのため、拠点を発展させるゲームが好きな人はもちろん、集めた素材から新しいものを作ったり、仲間との会話を楽しんだりするRPGが好きな人とも相性が良さそうです。
一方で、戦闘ではキャラクターごとに大きく異なる能力を組み合わせ、敵の弱点や耐性、状態異常まで利用して攻略できます。単純にレベルを上げて強い技を使うだけではなく、「この相手なら誰を連れていくか」とパーティーを考えるタイプの遊びが好きなら、開拓以外の部分でもかなり時間を使えそうです。
何より、短期間で次々とゲームをクリアしていくというより、ひとつの作品を腰を据えて遊びたい人に合っています。
ヒロインは14人。それぞれにエピソードがあり、なかには出会うまで数十時間以上かかる人物も存在します。テストプレイヤーの平均プレイ時間も100時間を超えているため、週末だけ遊んですぐに終わるような規模ではありません。
反対に、「ストーリーは気になるけれど、農業や戦闘をそこまで細かく遊びたいわけではない」という人にも選択肢があります。農業にはカジュアルモードがあり、戦闘についてもイージーだけでなく、ほぼ戦闘を省略できるピクニックモードまで用意されています。遊びたい部分に合わせて負担を調整できるため、大ボリュームだからといって、すべてのシステムを同じ密度で遊び込む必要はありません。
農業、料理、採掘、鍛冶、探索、戦闘、そして14人の仲間との生活。どれかひとつだけを目玉にするのではなく、それぞれを積み重ねながら霊山で過ごす100時間そのものを楽しむのが『カルティベーター』です。
最初はほとんど何もなかった霊山が、長い開拓生活を経てどんな場所へ変わっていくのか。そして14人の仲間が揃った先で、主人公を待っているものは何なのか。そこは説明を読んで知ってしまうより、自分で開拓を進めながら確かめたくなる部分です。
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