『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』をクリアしたあと、私の中に強く残っていたのは、派手な銃撃戦やマフィア同士の抗争よりも、エンツたちが生きていたシチリアの空気そのものでした。
20世紀初頭のシチリアを舞台に、鉱山で過酷な生活を送っていた青年エンツがトリージ・ファミリーに拾われ、裏社会の人間として生きていく。仲間との絆が生まれ、恋を知り、それでもマフィアという世界から逃れることはできない。そんな一人の青年の人生を追っていく重厚な物語は、シリーズの中でもかなり印象に残るものでした。
だからこそ、拡張コンテンツ「名誉の男」で再びシチリアへ戻れると知ったとき、個人的にはかなり気になったんですよね。
しかも今回描かれるのは、本編終了後の新たな物語ではありません。舞台となるのは、本編中盤にあたる冬のシチリア。エンツがトリージ・ファミリーに拾われてから約1年が経ち、ようやく組織の一員として仕事を任されるようになった頃へと時間を巻き戻します。
そして、そのエンツたちの前に現れるのが、シリーズファンなら聞き覚えのあるサリエリです。
後にアメリカでファミリーを率いることになる男が、まだ若く、野心と欲望をむき出しにしていた時代。そのサリエリとエンツが出会い、一緒に仕事をするというだけでも、『マフィア コンプリート・エディション』まで遊んできた人なら興味を引かれるところだと思います。
ただ、「名誉の男」は何十時間も遊べるような大型拡張ではありません。新たなストーリーチャプターは約2時間とコンパクトで、そこにフリーライド向けの追加コンテンツが加わる構成になっています。
そうなると気になるのは、1320円を払ってまで遊ぶ価値があるのかというところ。
実際に最後まで遊んでみると、ボリュームだけを見れば人を選ぶDLCなのは確かでした。一方で、本編を気に入った私にとっては、若きサリエリの人物像だけでなく、エンツやチェザレ、ルカたちと過ごした「あの頃」にもう一度戻れること自体に、このDLCならではの魅力を感じています。
今回はそんな「名誉の男」を実際にプレイして感じた面白さから、追加されたストーリーやフリーライドの内容、気になった部分、そして本当に1320円を払って遊ぶ価値があるのかまで、順番に掘り下げていきます。
『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』はどんなゲームだったのか
「名誉の男」の内容に入る前に、まずは本編となる『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』について簡単に振り返っておきます。
本作は2025年に発売された『マフィア』シリーズの最新作で、これまでアメリカ社会の裏側を描いてきたシリーズから大きく舞台を変え、20世紀初頭のイタリア・シチリアを舞台にマフィアの起源へ迫る物語が描かれました。
主人公となるのは、幼い頃に硫黄鉱山へ売られ、過酷な環境の中で生きてきた青年エンツォ・ファヴァーラ。鉱山から脱出した彼はトリージ・ファミリーに救われ、それまでとはまったく異なる裏社会での人生を歩み始めます。
もっとも、そこで描かれるのは「マフィアの世界で成り上がっていく」という単純な成功物語ではありません。
ファミリーの一員として仕事をこなし、仲間との関係を築いていく一方で、組織の掟に縛られ、自分が本当に望む人生との間で揺れ続ける。さらに禁断の恋や避けられない別れも絡み合い、エンツォがマフィアとしてどう生きるのかだけではなく、一人の人間としてどんな人生を選ぶのかが物語の大きな軸になっています。
ゲームとしても、近年よくある「広大なマップに大量のコンテンツを配置したオープンワールド」とは少し方向性が違います。
シチリアにはブドウ畑や農村、港町、古代遺跡などがシームレスに広がっているものの、自由探索そのものをゲームの主役にはしていません。むしろ、美しく作り込まれた街並みやそこで暮らす人々、映画的なカメラワークまで含めて、シチリアという土地そのものを物語に没入させるための舞台として使っているのが本作らしいところでした。
そのため、ひたすら寄り道をして遊び続けたい人には少々物足りなく感じる部分がある反面、物語に沿って一つひとつの出来事を追いかけたい人とは相性がいい作品です。銃撃戦を中心としたアクションには気になるところもありましたが、それ以上にエンツォたちの日常や裏社会特有の張り詰めた空気をじっくり味わわせることを優先した作りになっていました。
そして、本編を最後まで遊んだからこそ、「名誉の男」で描かれる時代には特別な意味が生まれます。
今回戻ることになるのは、まだエンツォがトリージ・ファミリーの中で必死に自分の居場所を作ろうとしていた頃。後に何が待っているのかを知った状態で、もう一度あの仲間たちと仕事をすることになるわけです。
そこへ若き日のサリエリまで加わるとなれば、単なる追加ミッションでは終わりません。シリーズの過去と未来が交差する物語として楽しめることこそ、「名誉の男」でまず注目したい部分でした。
DLC「名誉の男」で描かれるのは、本編中盤の“あの頃”
では、ここから「名誉の男」で追加されたストーリーを見ていきます。
今回の物語で面白いのは、本編のエンディングから続きを描くのではなく、時間を巻き戻してエンツォがトリージ・ファミリーの一員として過ごしていた時期に焦点を当てていることです。
舞台となるのは冬のシチリア。エンツォがファミリーに拾われてから約1年が経過しており、まだ若手ではあるものの、ドン・トリージのためにさまざまな仕事を任されるようになっています。
本編を遊んだ人なら分かると思いますが、この時期のエンツォは物語全体から見ると、ある意味かなり貴重な時間を過ごしていました。
チェザレと一緒に仕事へ向かい、兄貴分であるルカに導かれながら、ドン・トリージに一人前として認めてもらおうと必死に働く。危険な仕事をしていることに変わりはないものの、ファミリーの仲間たちと笑ったり、時には無茶をしたりと、そこには裏社会の殺伐としたイメージだけでは語れない日常があります。
幼い頃から鉱山という過酷な環境で生き延びることに精一杯だったエンツォにしてみれば、そんな時間は初めて手に入れた青春のようなものだったのかもしれません。
本編を初めて進めていたときには、それほど意識しなかった日常の場面も、物語の行く末を知った状態で改めて見ると受け取り方が変わってきます。「この頃はまだ、みんな普通に一緒にいたんだな」と感じられるだけでも、クリア済みのプレイヤーにとっては結構くるものがありました。
そんな時間の中へ突然入り込んでくるのが、刑務所から出てきたばかりの若きサリエリです。
後にアメリカを拠点とするサリエリ・ファミリーを率いることになる人物ですが、この時点ではまだその地位にはありません。かつてドン・トリージとの約束を守ってファミリーを救った経緯があり、その縁からエンツォとチェザレがサリエリの仕事を手伝うことになります。
ここが「名誉の男」というDLCの大きな仕掛けでもあります。
『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』だけを見れば、エンツォたちの過去を補完するエピソードとして楽しめます。一方、『マフィア コンプリート・エディション』まで知っていれば、後にロスト・ヘヴンで巨大なファミリーを率いるサリエリが、まだ何者でもなかった時代を目撃する物語という別の面白さが加わるんですよね。
しかも、若いサリエリは名前だけを借りたファンサービス的な登場人物ではありません。
後の彼を知っているからこそ、「なるほど、昔からこういう男だったのか」と妙に納得してしまう部分がしっかり用意されています。
その人物像が想像以上に強烈で、ここから「名誉の男」の物語が一気に『マフィア』シリーズらしい方向へ動き始めます。
若きサリエリとの出会いがシリーズファンにはたまらない
前の見出しでも触れた通り、「名誉の男」で物語の中心に入ってくるのが若き日のサリエリです。
『マフィア コンプリート・エディション』に登場したサリエリといえば、ファミリーのボスとして部下たちをまとめる一方、自分の目的を果たすためなら仲間さえ駒として扱う冷酷さを持った人物でした。その性格は後にファミリーそのものを揺るがすことになりますが、「名誉の男」に登場する若いサリエリにも、すでにその片鱗がはっきりと見えています。
そもそも今回サリエリが動き出す理由からして、いかにも彼らしいんですよね。
刑務所へ入る前、アメリカへ渡るために貯めていた金をかつての仲間に奪われており、それを取り戻すためにエンツォとチェザレを連れて復讐へ向かいます。まだ巨大なファミリーを率いるドンではないにもかかわらず、振る舞いにはすでに親分のようなところがあり、その一方で人使いは荒く、欲しいものを手に入れることへの執着も隠そうとしません。
ここが個人的にはかなり面白いところでした。
若いからといって、後のサリエリとはまったく違う純粋な青年として描かれるわけではありません。むしろ、私たちが知っているサリエリの原型が、すでに出来上がりつつあるという見せ方になっています。
もちろん、まだ若いぶん後年よりも荒々しく、欲望にも素直です。エンツォたちを半ば切り捨てるように扱う場面では普通に腹が立ちますし、「こいつ、本当に好き勝手やるな」と感じるところもある。それでも『マフィア コンプリート・エディション』を知っていると、目の前にいる男が後にあのドン・サリエリになると思うだけで、不思議と一つひとつの言動を追いたくなってしまいました。
こうした過去の描き方は、シリーズ作品をつなげるうえでも相性がいいと感じます。
単純に「過去にもサリエリがいました」と登場させるだけなら、懐かしいキャラクターを使ったファンサービスで終わってしまいます。しかし今回は、なぜこの男が後に大きなファミリーを率いるようになるのか、その答えをすべて説明するのではなく、後の姿につながる性格や価値観を若いサリエリの振る舞いから感じ取れるようになっています。
だからこそ、『マフィア:オリジン』からシリーズに入った人と、過去作まで遊んできた人では、この人物から受ける印象もかなり変わるはずです。
前者なら、エンツォたちを振り回す野心的なマフィアとして純粋に楽しめます。一方で後者にとっては、その言動の端々に「後のサリエリ」を重ねながら見られるため、短いストーリーながらシリーズ全体へと物語がつながっていく感覚があります。
そして、「名誉の男」が面白いのは、そんなサリエリの過去を見られることだけではありません。
若きサリエリという強烈な存在が加わったことで、逆に浮かび上がってくるのが、エンツォとトリージ・ファミリーの仲間たちが過ごしていた時間です。本編の結末まで知っているからこそ、何気ない会話や一緒に仕事へ向かう時間まで妙に愛おしく感じられる。
私にとっては、むしろそこに「名誉の男」を遊んで良かったと思える、もう一つの大きな魅力がありました。
エンツォたちの“失われた時間”をもう一度見られる
若きサリエリの登場は「名誉の男」における大きな見どころですが、実際に遊んでいて、それ以上に心に残ったのがエンツォとトリージ・ファミリーの仲間たちが一緒に過ごしている姿でした。
本編をクリアしていると、この時期が彼らにとってどれほど貴重なものだったのかを知っています。
チェザレとくだらない話をしながら仕事へ向かい、困ったときには兄貴分のルカが力を貸してくれる。そしてエンツォ自身も、ドン・トリージからファミリーの一員として認めてもらうため、与えられた仕事に必死で食らいついていく。そこには確かにマフィアとしての危険な日常があるのですが、不思議と殺伐としたものだけには見えません。
むしろ、仲間と仕事をして、時には無茶をして、それが終われば一緒に笑う。そんな時間を眺めていると、彼らなりの青春だったのだと感じられるんですよね。
特にエンツォの場合、幼い頃から硫黄鉱山という過酷な環境で生きてきました。それまでの彼にとって毎日は、生き延びるだけで精一杯だったはずです。そこからトリージ・ファミリーに拾われ、ようやく自分を必要としてくれる人たちと出会い、居場所と呼べるものを手に入れていく。そう考えると、この時期にエンツォが見せる姿にも自然と重みが出てきます。
そして何より、本編を一度クリアしていると、この時間が永遠には続かないことをプレイヤー側は知っています。
だから、初めて本編を遊んだときには何気なく見ていた仲間とのやり取りも、「名誉の男」では少し違って見えました。
何か特別な事件が起きなくてもいいんです。チェザレがいつもの調子で話していて、ルカが変わらずエンツォを気に掛け、ドン・トリージがそこにいる。それだけで、「もう一度この頃に戻ってきたんだな」という感覚が生まれます。
このあたりは、単純なプレイ時間だけでは測りにくい「名誉の男」の価値でもあります。
追加ストーリーだけなら約2時間と決して長くありませんし、まったく新しい大事件を描いた大型エピソードでもありません。 それでも本編を気に入った人にとっては、エンツォたちと過ごした時間そのものを補完してくれるため、短さがそのまま物足りなさにつながるとも限りません。
個人的にも、サリエリの過去を知れたことはもちろん面白かったのですが、終わってみれば印象に残っていたのは、むしろこちらでした。
本編では先へ進むことしかできなかった時間へ戻り、チェザレやルカと再び仕事へ出かける。結末を知っているからこそ、そこにある何気ない日常まで特別に感じられる――「名誉の男」は新しい物語を付け足すだけではなく、本編で失われてしまった時間をもう一度プレイヤーに見せてくれるDLCでもあるのです。
ゲームプレイは本編の延長線上。ただし新しいシチュエーションもある
ストーリーについては、本編をクリアした人ほど楽しめる内容になっている一方で、ゲームプレイそのものが大きく変わったのかというと、そこは少し話が違います。
「名誉の男」で用意されているミッションは、基本的に本編のゲームシステムをそのまま引き継いだものです。車で目的地まで移動し、状況に応じて銃撃戦やステルスで敵を突破していく。まったく新しいアクションや戦闘システムが追加され、それを中心に攻略していくようなDLCではありません。
そのため、本編のアクション部分に大きな不満があった人が、「名誉の男」で評価をひっくり返される可能性は低いと思います。
とはいえ、単純に本編と同じような場所で、同じような戦闘を繰り返すだけでもありません。
高低差のある鉱山を進んだり、強盗の舞台となる建物で戦ったりと、追加ストーリーならではのシチュエーションが用意されています。ミッション数そのものは多くないものの、短いストーリーの中でも場所を変えながら進んでいくため、同じ展開を何度も繰り返しているような単調さは感じにくくなっています。
中でも印象に残ったのが、敵に見つからないように進むステルスを意識した場面でした。
派手に銃を撃ちながら正面突破するのではなく、できるだけ騒ぎを起こさず仕事を終わらせる。マフィアの仕事という題材を考えても、こうした進め方は雰囲気によく合っていますし、銃撃戦だけに偏らないことでミッションにも変化が生まれています。
一方で、ここは期待値を上げすぎない方がいい部分でもあります。
新しいゲームを一本追加するような規模ではなく、あくまで**『マフィア:オリジン』のゲームプレイをもう少し楽しむための追加ストーリー**という感覚が近いです。新システムによる驚きを求めるというより、エンツォたちの新しいエピソードを遊びながら、その過程で銃撃戦やステルスも楽しむ。実際に触ってみると、ストーリーを軸にゲームプレイが付いてくるという本編の作り方を、そのままコンパクトにした印象を受けました。
個人的には、それで良かったとも感じています。
そもそも『マフィア:オリジン』は、アクションそのものを延々と遊び続けるというより、移動や戦闘も含めて一連の物語を体験するところに魅力がある作品でした。「名誉の男」もその方向性を崩さず、若きサリエリとの仕事を実際に自分でこなすことで、ストーリーだけを映像で見るのとは違った没入感につながっています。
ただ、本編発売当初から「せっかくここまでシチリアを作り込んでいるのに、物語から離れて自由に遊べることが少ない」と感じていた人もいるかもしれません。
そこについては、ストーリーチャプターとは別に用意されているフリーライドモードの拡張が、かなり重要な役割を担うようになっています。
フリーライドが拡張され、シチリアがようやく「遊べる世界」になった
ストーリー以外でもう一つ、「名誉の男」で押さえておきたいのがフリーライドモードの拡張です。
そもそも『マフィア:オリジン』には、発売当初からストーリーとは切り離された探索モードが用意されていました。広大なシチリアを自由に歩き回れるため、物語を進めている最中には素通りしてしまった場所を訪れたり、作り込まれた街並みをじっくり眺めたりできたのですが、遊びとして見ると少し物足りないところもあったんですよね。
景色はきれいで、街や農村にも生活感がある。それなのに、ストーリーから離れた途端、「この世界で何をして遊ぶのか」という部分が弱かったわけです。
そんな状況を大きく変えたのが、2025年11月の無料アップデートで実装されたフリーライドモードでした。
従来の探索モードに置き換わる形で登場し、車や馬を使ったレースに加えて、銃撃戦やステルスを中心とした戦闘チャレンジなど、各地で挑戦できるアクティビティが追加されています。クリアすればゲーム内通貨などの報酬が手に入り、さらに武器や衣装、チャーム、車両といったアイテムも入手できるため、シチリアを探索すること自体に目的が生まれました。
そして「名誉の男」では、そのフリーライドがさらに拡張されています。
新たに追加されたのがサリエリから受けられる依頼で、より難易度の高いチャレンジにも挑戦できるようになりました。訪れられるロケーションも増えているため、追加ストーリーを終えたあとも、今度は自由な遊びを目的としてシチリアへ戻ることができます。
細かいところでは、マップ上に2つのピンを設置できるようになったのも地味ながら嬉しい変更でした。気になった場所や収集アイテムを探しに行く際、複数の目的地を意識しながら移動できるため、広いフィールドを巡る際の使い勝手も良くなっています。
こうして改めて見ると、発売当初と現在ではシチリアというフィールドの役割が少し変わってきたように感じます。
本編では、あくまでエンツォの物語を描くための舞台という意味合いが強く、プレイヤーが好きなように遊び続ける場所ではありませんでした。ところが、無料アップデートでフリーライドが実装され、さらに「名誉の男」で遊びが追加されたことで、作り込まれたシチリアを一つの遊び場として楽しめるようになってきたわけです。
もちろん、ここで『マフィア:オリジン』が一般的なオープンワールドゲームに変わった、と考えるのは少し違います。
本編の魅力は今でもストーリーにありますし、フリーライドでは物語を追うのではなく、探索やチャレンジを自分のペースで攻略していくことが中心になります。そのぶんゲーム体験はかなり異なるため、重厚なドラマを求めて『マフィア』を遊んでいる人には、そこまで刺さらない可能性もあります。
ただ、あれだけ丁寧に作られたシチリアを、ストーリーをクリアしたら終わりにしてしまうのは惜しいとも感じていました。
その意味では、物語を味わう本編とは別に、今度は車や馬で走り回り、気になる場所へ立ち寄りながら各地のチャレンジに挑戦できるようになったのは素直に嬉しいところです。「眺めるためのシチリア」から「自分で遊ぶためのシチリア」へ少しずつ変わってきたことも、現在の『マフィア:オリジン』を評価するうえでは見逃せないポイントだと思います。
「名誉の男」のボリュームは?1320円は高いのか
ここまでストーリーとフリーライドの両方を見てきましたが、購入するか迷っている人にとって、やはり気になるのは1320円という価格に見合う内容なのかというところだと思います。
まずボリュームから見ると、「名誉の男」は大型DLCと呼べるほどの規模ではありません。追加されるストーリーチャプターは約2時間、フリーライド側の新コンテンツについても約5時間が目安となっており、何十時間も遊べるような拡張を期待すると、少なさを感じる可能性があります。
特にストーリーについては、若きサリエリというシリーズファンなら気になる人物を扱っているだけに、「もっと先まで見たかった」と感じる人もいるはずです。
サリエリがエンツォたちと出会い、彼らを巻き込みながら自分の目的を果たそうと動いていく。その過程で後の人物像につながる貪欲さも見えてくるため、題材そのものはかなり魅力があります。それだけに、一本の長編としてサリエリの若き時代をじっくり描くというより、本編の途中に新しいエピソードを差し込んだようなコンパクトさは頭に入れておいた方がいいと思います。
では、2時間程度のストーリーに1320円を払うのは高いのか。
ここは何を目的に購入するかで、かなり印象が変わってきます。
新しいマップが大規模に追加され、ゲームシステムまで変わるような拡張を求めているなら、正直なところ物足りなさは残ります。一方で、追加ストーリーだけではなくフリーライドにも新しい依頼や高難度チャレンジ、ロケーションが加わっているため、すべて含めて考えると内容が極端に少ないわけでもありません。
何より、「名誉の男」の価値はプレイ時間だけでは測りにくいところがあります。
本編をクリアした人にとっては、エンツォやチェザレ、ルカたちと再び仕事ができること自体が一つの魅力ですし、そこへ若きサリエリというシリーズをつなぐ存在まで加わっています。単純に「1320円で何時間遊べるのか」と考えるより、気に入った作品の世界へもう一度戻るために1320円を払えるかと考えた方が、このDLCの性格には合っています。
私自身、本編にそれほど思い入れがなかったとしたら、評価はもう少し厳しくなっていたと思います。
逆に、エンツォたちの物語が好きで、エンディングを迎えたあとにもシチリアの空気が頭に残っていた人なら、この価格で再び彼らの時間に入り込めることには十分な意味があります。さらに過去作まで遊んでいるなら、若きサリエリの存在によってシリーズ作品としての面白さも一段増してきます。
つまり「名誉の男」は、万人に価格以上のボリュームを提供するタイプのDLCではなく、『マフィア:オリジン』をどれだけ好きだったかによって1320円の価値が変わるコンテンツだと感じました。
では実際のところ、どんな人なら購入して満足しやすく、逆にどんな人なら見送ってもいいのか。最後にそこを整理しながら、「名誉の男」を遊び終えたうえでの評価をまとめていきます。
結局「名誉の男」はどんな人におすすめなのか
ここまで遊んできた印象をまとめると、「名誉の男」は『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』を気に入った人に向けて作られた、かなりファン寄りのDLCだと感じました。
新しい土地を何十時間も探索できるわけでもなければ、本編とは別物と言えるほどゲームシステムが変化するわけでもありません。ストーリーも約2時間と短いため、ボリュームだけを基準に評価すると、1320円という価格を少し高く感じる人がいても不思議ではないと思います。
それでも私が「本編を楽しめたなら遊んでみてほしい」と感じるのは、このDLCが単純にミッションを追加しただけではないからです。
若きサリエリが登場し、後に『マフィア コンプリート・エディション』へつながっていく人物像の一端を見せてくれる。そして何より、エンツォ、チェザレ、ルカ、ドン・トリージといった面々がまだ同じ場所にいて、それぞれの日常を過ごしていた時間へ戻ることができます。
本編をクリアしたあとだからこそ、ここが思った以上に効いてくるんですよね。
結末を知らずに本編を進めていた頃には、仲間と車で移動することも、仕事の合間に交わされる会話も、物語を進めるうえでの何気ない一場面に見えていました。しかし、その先で彼らを待ち受ける出来事を知った状態で再び同じ時間へ戻ると、それまで気にも留めなかった瞬間にまで意味を感じるようになります。
だから「名誉の男」を特におすすめしたいのは、エンツォたちの物語そのものが好きだった人です。
そこに『マフィア コンプリート・エディション』まで遊んでいるという条件が加われば、さらに相性は良くなります。若きサリエリの荒々しさや貪欲さを見ながら、「この男が後にあのサリエリになるのか」と過去作の姿を重ねられるため、『マフィア:オリジン』単体では得られないシリーズものならではの楽しみ方ができます。
反対に、本編でストーリーよりもアクションや探索に不満を感じていた人は、少し慎重に考えた方がいいかもしれません。
フリーライドにはサリエリからの新たな依頼や高難度チャレンジ、新しいロケーションなどが加わっていますが、ゲームそのものを別物へ変えるほどの拡張ではありません。 本編の方向性が合わなかった人に対して、このDLCだけで「今度は絶対に楽しめる」とまでは言いにくいところがあります。
逆に言えば、「もっとエンツォたちを見たかった」「あのシチリアへもう一度戻りたい」と思えた人なら、かなり分かりやすく購入候補に入ります。
私自身、遊ぶ前は若きサリエリの物語が一番の見どころになると思っていました。もちろん実際にそこは面白かったのですが、クリア後に振り返ってみると、それ以上に印象に残ったのはエンツォたちと再会できたことでした。
チェザレと仕事をして、ルカに導かれ、ドン・トリージに認められようと懸命に動き回る。そんな彼らの姿を見ながら、プレイヤー自身も本編中盤の“あの頃”へ戻っていく。資料の総評でも、大規模な拡張ではない一方、本編を気に入ったユーザーにとって再びシチリアへ戻る理由になる内容として評価されています。
1320円でどれだけ新しいものが増えるのかと考えると、人によって評価は分かれると思います。
それでも、『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』の物語が好きだった私にとって、「名誉の男」は買って良かったと思えるDLCでした。 若きサリエリの原点を知り、そしてエンツォたちともう一度あの時間を過ごす。その体験に魅力を感じる人なら、再びシチリアへ戻ってみる価値は十分にあります。
物語やキャラクターを「別の角度」から掘り下げたい人へ
『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』のように、登場人物の生き方や人間関係まで丁寧に描かれた作品は、ゲームを終えたあとにも「あの人物はなぜ、あの選択をしたのか」と考えたくなる面白さがあります。
今回の「名誉の男」も、まさにそうした楽しみ方ができるDLCでした。
若きサリエリの姿を知ることで後の人物像に対する見方が少し変わり、本編では通り過ぎてしまったエンツォたちの日常も、結末を知っているからこそ違った意味を持って見えてきます。新しい物語を知るだけではなく、一度見たキャラクターや人間関係を別の角度から見直せることも、物語作品を追いかける面白さの一つなのだと思います。
私自身、ゲームに限らず、登場人物の関係性や物語の背景まで踏み込んで作品を見るのが好きなので、別サイトでもそうした視点を軸に作品レビューをまとめています。
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