「カルドセプト」の新作が約10年ぶりに発売される。シリーズを知っている人であれば、この事実だけでもかなり驚いたのではないかと思います。
前作『カルドセプト リボルト』が発売されたのは2016年。それから長い期間にわたってシリーズの動きが途絶えていただけに、正直なところ、私自身も新作を遊べる日が本当に来るとは思っていませんでした。
そんな長い空白を経て登場したのが『カルドセプト ビギンズ』です。
カルドセプトといえば、ダイスを振ってマップを進むボードゲームの分かりやすさと、数百種類ものカードから自分なりのブックを組み上げるカードゲームの奥深さを組み合わせた、かなり独特なシリーズです。土地を確保して資産を増やすだけならシンプルなのですが、実際に遊んでみるとカードの使い方や土地への投資、相手への妨害などが絡み合い、一つの判断が試合の流れを大きく変えていきます。
ただ、その面白さとは裏腹に、これまでのシリーズには「一試合が長い」「覚えることが多そう」といった入りづらさがあったのも事実です。特に初めてカルドセプトに触れる人からすれば、ボードゲームとカードゲームを同時に覚える必要があるように見えるため、興味はあっても手を出しにくかった人は少なくないはずです。
では、約10年ぶりの復活となった『カルドセプト ビギンズ』は、その部分をどう変えてきたのか。
実際にストーリーモードとサブシナリオを最後まで遊んでみると、まず強く感じたのが**「カルドセプトって、こんなにテンポよく遊べるゲームだったのか」**ということでした。
従来の基本ルールを大きく崩したわけではありません。それでも魔力を獲得できる機会が増えたことで序盤から土地を確保しやすくなり、そのまま土地への投資や連鎖作りへ入っていけるため、試合が本格的に動き始めるまでの時間がかなり短くなっています。これまでなら1時間ほどかかることもあった一試合が、今回は15~30分ほどで決着することも珍しくありません。
しかも、単純に試合時間を短くしただけではなく、土地を確保し、周回して魔力を稼ぎ、その魔力を土地へ投資して総魔力を伸ばすという「カルドセプトで一番気持ちいい部分」に早い段階から触れられるようになっています。
一方で、遊びやすくなったからこそ失われたものもありました。土地連鎖とレベルアップによる資産形成が強力になった結果、相手の土地へ積極的に侵略したり、妨害しながら状況をひっくり返したりするより、自分の土地をひたすら育てたほうが効率的に勝てる場面もあります。従来作を遊び込んできた人ほど、この変化については好みが分かれるところかもしれません。
それでも、約10年ぶりの復活作として考えれば、シリーズが持っていた面白さを残しながら、現代のゲームとして遊びやすい形へ作り直そうとした意図はかなり伝わってきました。
今回は『カルドセプト ビギンズ』をクリアまで遊んだからこそ見えてきた魅力と、反対に「ここは少し気になった」と感じた部分まで含めて、じっくり紹介していきます。
『カルドセプト ビギンズ』とは?ボードゲーム×カードゲームという唯一無二のゲーム性
そもそも『カルドセプト』を遊んだことがない人にとっては、「ボードゲームとカードゲームを組み合わせた作品」と言われても、実際に何をするゲームなのかイメージしづらいかもしれません。
基本的な流れは意外とシンプルで、プレイヤーは「セプター」となってダイスを振り、マップ上を移動しながら土地を確保していきます。ただし、『桃太郎電鉄』のようにマスへ止まるだけで土地が手に入るわけではなく、ここで使うのが自分で用意したクリーチャーカードです。
土地へクリーチャーを配置すると自分の領地となり、その土地へ魔力を投資してレベルを上げれば、土地そのものの価値と相手から受け取れる通行料が高くなっていきます。反対に自分が相手の土地へ止まってしまえば通行料を支払うことになりますが、手札にクリーチャーがあれば侵略を仕掛け、戦闘に勝利して土地を奪い取ることも可能です。
このあたりだけを見ると、かなりボードゲーム寄りに感じるかもしれません。しかし、カルドセプトが面白くなってくるのは、ここへカードゲームならではの要素が絡んでからです。
本作には約400種類のカードが用意されており、その中から40枚を選んで「ブック」と呼ばれるデッキを作ります。カードは土地の確保や戦闘に使う「クリーチャー」、戦闘中に攻撃力を上げたり特殊な効果を発動したりする「アイテム」、そしてダイスの出目を操作したり相手を妨害したりできる「スペル」の大きく3種類。つまり、同じマップで戦っていても、どんな40枚を選ぶかによって立ち回りそのものが変わってくるわけです。
そして、勝利するために重要になるのが「総魔力」という考え方です。
本作には、クリーチャーの召喚やスペルの使用、土地への投資などに使う手持ちの「魔力」と、所有している土地などの資産価値まで含めた「総魔力」があります。勝利条件になっているのは後者なので、ひたすら魔力を貯金しているだけでは勝てません。ある程度の魔力が貯まったら土地へ投資し、それを資産へ変えて総魔力を増やしていく必要があります。
とはいえ、手持ちの魔力を土地へ使いすぎると、今度はクリーチャーを配置したい場面や重要なスペルを使いたい場面で魔力が足りなくなります。「今は土地を育てるべきか、それとも手元に残して次の展開へ備えるべきか」と考えながら、その時々で資産と手持ちの魔力をやりくりしていく。この判断がゲーム中ずっと続くため、ダイスを振って進むだけのゲームにはなっていません。
さらに、相手の高額な土地が近づいてきたら、ダイスを操作するスペルを使って回避するのか。それともクリーチャーとアイテムを温存して侵略を狙うのか。逆に自分が有利な状況なら、相手への妨害より土地への投資を優先して一気に総魔力を伸ばしたほうがいい場合もあります。
こうして考えることが次々と増えていく一方、最終的にやっていることは「土地を取って、育てて、資産を増やす」という非常に分かりやすいものです。このシンプルな目的へカードゲームならではのデッキ構築や戦闘、ボードゲームならではのダイスによる偶然性が重なっているからこそ、カルドセプトには他の作品ではなかなか味わえない独特の面白さがあります。
そして『カルドセプト ビギンズ』では、このシリーズならではのゲーム性を残しながら、従来作で少し気になっていた「面白くなるまでの時間」がかなり短くなりました。ここが実際に遊んでいて最も大きな変化を感じた部分でもあります。
初心者でも意外なほど入りやすい|複雑そうに見えて遊べばすぐ分かる基本ルール
ここまで基本的なゲームの仕組みを説明してきましたが、おそらく初めてカルドセプトに触れる人ほど、「やっぱり覚えることが多そう」と感じたかもしれません。
クリーチャーを配置して土地を確保し、魔力を使って土地を強化する。それと同時に40枚のブックを管理しながら、アイテムやスペルまで使い分ける必要があるとなれば、少なくともルールだけを文字で追っている段階では簡単なゲームには見えないと思います。
ところが、実際に『カルドセプト ビギンズ』を遊んでみると、この第一印象はかなり変わりました。
というのも、本作では序盤から魔力を獲得できる機会が多く、まずはクリーチャーを配置して土地を確保し、マップを周回して得た魔力を土地の強化へ使うという基本的な流れを自然に繰り返せるからです。何をすればいいのか分からないまま試合だけが進んでしまうのではなく、「土地を取ったから、次はここを育ててみよう」と目の前の目的を追いかけているうちに、ゲーム全体の仕組みが少しずつ見えてきます。
特に大きいのが、魔力不足によって序盤の行動を制限されにくくなったことです。
これまでのシリーズでは、序盤に十分な魔力がなく、やりたいことがあってもすぐには動けない場面がありました。それに対してビギンズでは、周回や砦の通過などによって得られるボーナスが増えたことで、比較的早い段階からクリーチャーを配置し、その後の土地強化まで進めやすくなっています。
この変更によって何が良くなったのかというと、単純にゲームのテンポが速くなっただけではありません。
カルドセプトでは、土地を取る、魔力を稼ぐ、土地を育てる、総魔力が増えるという一連の流れを理解してしまえば、「なぜ今この行動をするのか」がかなり分かりやすくなります。本作ではそこへ到達するまでが早いため、細かなルールを最初から全部覚えようとしなくても、遊んでいるうちに必要な知識が後からついてくる感覚がありました。
たとえば、最初のうちは土地へクリーチャーを置くだけでも十分です。しかし、何度か試合を続けていると「同じ属性の土地を集めたほうが総魔力を伸ばしやすい」「このクリーチャーなら相手の土地を奪えそう」「このスペルを残しておけば高額な土地を避けられる」といったことが少しずつ見えてきます。
つまり、最初からカード約400種類の効果やブック構築の理屈を理解する必要はありません。まず土地を確保して育てるところから始まり、慣れてきたらカード同士の組み合わせや相手への妨害まで考えるようになる。この段階を踏んで面白さが広がっていく作りになっているため、見た目ほど初心者を突き放すゲームではないと感じました。
もちろん、ボードゲームやカードゲーム自体に馴染みがなければ、ブック構築や試合中のカード運用で迷う場面は出てきます。それでも難易度そのものは『カルドセプト リボルト』などと比べて比較的ライトな作りになっており、シリーズ未経験者だけでなく、このジャンルをあまり遊んでこなかった人でも入りやすい作品になっています。
個人的にも、約10年ぶりの復活作でこの方向へ舵を切ったのは正解だったと思います。
シリーズ経験者だけを見て複雑さを積み重ねるのではなく、カルドセプトが本来持っている面白さへ新しいプレイヤーをどうやって早く到達させるか。その部分をかなり意識して作られているからこそ、『ビギンズ』というタイトルにも納得できました。
そして、この初心者でも入りやすいゲーム設計と密接につながっているのが、本作で大きく改善された「一試合のテンポ」です。ここについては、従来作を知っている人ほど違いを感じる部分だと思います。
一番驚いたのは圧倒的なテンポの良さ|1試合15~30分でカルドセプトの面白さを味わえる
先ほど触れた初心者への入りやすさにもつながりますが、『カルドセプト ビギンズ』を遊んでいて特に大きな変化を感じたのが、一試合あたりのテンポです。
カルドセプトはカードゲームとしての面白さがありながら、同時にボードゲームでもあるため、どうしても一試合が長くなりやすいシリーズでした。土地を確保して周回し、魔力を貯めてから土地を育てていくとなれば、それなりの時間が必要になります。
その点、ビギンズでは周回時や砦の通過などで得られるボーナスが増え、序盤から使える魔力に余裕が生まれやすくなりました。これによって、まず魔力が貯まるまで我慢する時間が短くなり、クリーチャーを配置して土地を取り、そこから土地への投資へ移るまでがかなりスムーズになっています。
実際、これまでなら1時間ほどかかっていた試合が、本作では15~30分程度で決着することも多くなりました。単純に数字だけを見てもかなり短くなっていますが、個人的には「試合時間が短くなった」という事実以上に、その短縮のさせ方がうまいと感じています。
というのも、カルドセプトの面白さまで一緒に削ってしまったわけではないからです。
序盤から土地を取りやすくなれば、当然ながら盤面には早い段階から各プレイヤーの領地が増えていきます。さらに周回で得た魔力を土地へ投資できるので、まだ試合が始まってそれほど時間が経っていない段階から、「どの土地を育てるのか」「どの属性で連鎖を作るのか」といった判断が必要になってきます。
つまり、これまで時間をかけて到達していた面白い部分へ、より早く入れるようになったということです。
ここはかなり重要で、仮に一試合を短くすることだけが目的なら、目標となる総魔力を下げたり、マップを単純に小さくしたりする方法もあったはずです。ただ、それでは試合が早く終わるだけで、土地を増やし、育て、自分の資産が膨らんでいくカルドセプトらしい手応えまで小さくなりかねません。
ビギンズの場合はそうではなく、プレイヤーへ早い段階から魔力を渡し、その魔力を使って積極的に行動できるようにすることでゲームを加速させています。そのためプレイ時間は短くなっているのに、「土地を取れない」「魔力がなくて何もできない」と待たされる時間は減り、むしろ一試合の中で何かを考えている時間は濃くなった印象でした。
そして、一試合がコンパクトになった恩恵は、ゲームそのもののテンポだけに留まりません。
15~30分程度であれば、「もう一試合だけやろう」と思いやすくなりますし、SwitchやSwitch 2の携帯モードで少しずつ進める遊び方とも相性が良くなります。実際、本作は一つひとつの試合が比較的コンパクトになったことで、テレビの前でまとまった時間を確保しなくても進めやすい作りになっています。
約10年という空白を経てシリーズを復活させる以上、昔のカルドセプトをそのまま持ってくるだけでは、今のゲームとして遊ぶには少し重かったと思います。だからといってルールそのものを簡略化しすぎれば、今度はシリーズが持っていた魅力が失われてしまいます。
ビギンズはその間を狙い、カルドセプトの核となる部分には大きく手を入れず、「面白さが動き出すまでの時間」を短くしました。この調整によって初心者はゲームの魅力を理解しやすくなり、シリーズ経験者にとっても以前より気軽に一試合を始められるようになっています。
そして、序盤から魔力を使いやすくなったことで、もう一つ早い段階から楽しめるようになったのが、土地を連鎖させて一気に資産を伸ばしていくカルドセプトならではの気持ちよさです。
土地を連鎖させて一気に資産を増やす瞬間が気持ちいい|ビギンズならではの爽快感
テンポが良くなったことで、これまで以上に早い段階から楽しめるようになったのが、土地を育てながら総魔力を一気に伸ばしていく気持ちよさです。
カルドセプトでは、確保した土地へ魔力を投資することで最大レベル5まで強化できます。レベルが一つ上がるごとに土地の資産価値は倍増し、レベル5まで育てれば初期状態の16倍。手持ちの魔力を土地へ注ぎ込むので一時的には所持金が減りますが、その分だけ資産価値が大きくなるため、勝利条件となる総魔力は一気に伸びていきます。
ただ、闇雲に土地をレベルアップさせればいいわけではありません。ここでもう一つ重要になってくるのが、同じ属性の土地を複数所有することで発生する「連鎖」です。
連鎖が成立すると土地の資産価値や通行料が上昇するため、同じ魔力を投資するにしても、単独で所有している土地より連鎖している土地を育てたほうが効率よく総魔力を増やせます。たとえば序盤から同じ属性の土地をいくつか確保できたなら、そこを守りながら周回し、貯まった魔力をまとめて投入する。うまく形ができれば、それまで横並びだった総魔力が一気に跳ね上がり、試合の主導権まで握れるようになります。
この瞬間が、かなり気持ちいいんです。
特にビギンズでは序盤から魔力を確保しやすくなっているので、土地を取ったものの育てられない時間が短く、連鎖を作って土地へ投資するところまでテンポよく進みます。「次の周回で魔力が入ったら、この土地をレベル5まで上げよう」と考えながら盤面を回り、予定通りに投資できた瞬間に総魔力が大きく伸びる。この積み上げが目に見える形で数字へ反映されるため、自分の戦略がうまく機能していることも実感しやすくなっています。
もちろん、そこまで簡単に理想の形を作らせてもらえるわけではありません。
狙っている属性の土地を先に相手へ取られることもありますし、せっかく育てた土地へ侵略を仕掛けられる可能性もあります。だからこそ、「この土地は絶対に守りたいから防御に強いクリーチャーを置く」「こちらの属性は連鎖が作れそうなので優先して確保する」といった考えが生まれ、ダイスを振るだけだったはずの一手にも意味が出てきます。
また、高レベルの土地は資産として価値があるだけでなく、相手が止まった際に発生する通行料も高くなります。自分が育てた土地へ相手が近づいてくると、「ここに止まってくれ」と思いながらダイスを見守ることになりますし、逆に自分が相手の高額な土地へ近づけば、一転して「そこだけは踏みたくない」という緊張感に変わります。
土地を育てるという一つの行動が、資産形成だけでなく、その後の盤面そのものに影響を与えていくわけです。
このあたりは、ボードゲームとカードゲームを組み合わせたカルドセプトだからこそ生まれる面白さだと感じました。カードゲームであれば強力なカードを引いた瞬間、ボードゲームであればダイスの結果がうまく噛み合った瞬間に気持ちよさがありますが、本作の場合はそこへ「自分で育てた土地」という積み重ねまで加わります。
だからこそ、偶然うまくいっただけではなく、「この属性を集めて、ここを育てよう」と考えていた戦略が形になり、それが総魔力という数字で一気に返ってくる瞬間には独特の達成感があります。
そして、この土地連鎖をどのように作り、どう守るのかを考え始めると、自然と重要になってくるのが40枚のブック構成です。どんなクリーチャーを入れるのか、土地を守るためのアイテムをどこまで用意するのか、スペルに何枚の枠を割くのか。ここから先は、カルドセプトのもう一つの大きな魅力であるブック構築の面白さが一気に顔を出してきます。
400種類のカードから「自分だけの40枚」を作るブック構築がとにかく面白い
土地をどう確保して、どこを育てていくのか。その戦略を考え始めると、次第に重要になってくるのが「どんなカードをブックに入れるか」です。
『カルドセプト ビギンズ』には約400種類のカードが収録されていますが、実際に試合へ持ち込めるのは40枚だけ。クリーチャー、アイテム、スペルという役割の異なるカードから40枚を選び、自分なりのブックを作っていくことになります。
この「約400種類から40枚」という制限が絶妙で、強そうなカードを片っ端から入れれば完成するほど単純ではありません。
たとえば、土地を積極的に確保したいからとクリーチャーを増やせば、序盤は動きやすくなります。ただし、それだけでは相手から侵略された際に守り切れなかったり、こちらから攻めたときにあと一歩のところで倒せなかったりするため、戦闘を補助するアイテムも欲しくなってきます。
ではアイテムを増やせばいいのかというと、今度は盤面へ干渉するスペルが少なくなります。ダイスの出目をコントロールしたり、土地の属性を変更したり、相手を妨害したりと、スペルには戦闘以外から試合を動かせる効果が揃っているため、こちらも簡単には削れません。
結局のところ、どれか一種類だけを充実させれば済む話ではなく、限られた40枚の中で自分がやりたい戦い方に合わせて配分を考える必要があります。
しかも、クリーチャーだけを見ても役割はかなり違います。攻撃力が高く相手の土地を奪うのが得意なものもいれば、HPの高さを生かして獲得した土地を守るのに向いているものもいます。さらに通常より先に攻撃できる能力を持っていたり、ほかのクリーチャーカードをアイテムのように使用できたりと、それぞれに特徴があるため、単純な数値の高さだけでは強さを判断できません。
ここが面白いところで、実際に試合へ持ち込んでみないと分からないこともかなりあります。
ブックを組んでいるときには「これは絶対に強い」と思ったカードが、いざ使ってみるとなかなか活躍する場面がなかったり、反対に何となく入れた一枚が思った以上に使いやすかったりする。そこで試合が終わったあとにブックを開き、「このカードは減らして、代わりにこっちを入れてみよう」と調整したくなってきます。
ストーリーモードも、最初にもらったブックをそのまま使い続ければ最後まで突破できるような作りにはなっていません。序盤こそ初期ブックでも進められますが、先へ行くほど相手も手強くなり、ステージによってはルールに合わせた専用のブックを考える必要まで出てきます。
そのため、負けたときにも「相手が強すぎた」で終わりにくいんです。
クリーチャーが足りず土地を確保できなかったのであれば枚数を増やしてみる。侵略で何度も競り負けたならアイテムを見直す。相手に好き放題動かれてしまったなら、今度はスペルを増やして盤面へ干渉する。こうして敗因を考え、それを次のブックへ反映させる余地があります。
もちろん、調整したからといって毎回狙い通りにカードを引けるわけではありません。特定の強力なカードを上限まで入れてみた結果、今度はブック全体のバランスが崩れ、必要な場面でクリーチャーを引けないといったことも起こります。だからこそ、単純な正解を探すというより、「自分ならこの40枚でどう戦うか」を考えること自体が遊びになっています。
そして、試合を重ねるほど新しいカードも手に入るので、ブックが完成したと思った頃にまた試したいカードが出てきます。
一枚入れ替えて試合へ行き、使い勝手を確認してまた調整する。その繰り返しで少しずつ自分の戦い方に合った40枚へ近づいていく感覚は、本作の中でも特に夢中になった部分でした。
土地を育てて総魔力を伸ばす面白さが一試合の中にあるとすれば、ブック構築は試合と試合の間まで含めて続いていく面白さと言えます。そして、この「一度試して、また組み直す」という流れが出来上がってくると、『カルドセプト ビギンズ』はかなり止め時を見つけにくいゲームになってきます。
新しいカードを手に入れるたびに組み直したくなる|対戦とブック調整を繰り返す中毒性
自分なりの40枚を考える面白さについて触れましたが、『カルドセプト ビギンズ』のブック構築が厄介なのは、一度それなりに完成したと思っても、なかなかそこで終わらせてくれないところです。
ゲームを進めていけば、バトルやカードショップなどを通じて新しいカードが手に入ります。すると、「今のブックにこれを入れたらもっと強くなるんじゃないか」と試したくなり、せっかく安定していた40枚をまた触り始めてしまいます。
実際、新しいクリーチャーを手に入れたら、とりあえず既存の一枚と入れ替えて試合へ持っていく。思ったほど使いやすくなければ元に戻し、逆に手応えがあれば枚数を増やしてみる。ところが、今度はそのカードを増やした影響でブック全体のバランスが崩れ、必要なカードを欲しいタイミングで引けなくなることもあります。
この試行錯誤が、かなり楽しいんです。
単純に強力なカードを集めていくというより、実戦を通して「自分のブックに必要なカード」を探していく感覚に近く、同じカードでも組み合わせ次第で評価が変わってきます。クリーチャーを増やしたことで土地は確保しやすくなったものの、戦闘用のアイテムが足りずに土地を守れなくなった。そこでアイテムを増やしてみたら、今度はスペルが減ったことで相手への妨害手段が乏しくなる、といった具合です。
何かを強くしようとすると、その代わりに別の部分へしわ寄せが来る。この40枚という限られた枠があるからこそ、ブック構築にはいつまでも考える余地が残されています。
さらに面白いのが、試合で負けたあとです。
普通なら負けが続けば少し嫌になってくるところですが、本作の場合は「次はこのカードを変えてみよう」と考えるきっかけになります。土地を十分に確保できなかったのか、相手のクリーチャーを倒せなかったのか、それとも盤面をコントロールするスペルが足りなかったのか。負け方を振り返ると、次に手を入れたい部分が自然と見えてきます。
そしてブックを少し調整すると、当然ながらその結果を確認したくなります。「さっき入れたカードは本当に機能するのか」と気になって、そのまま次の試合を始めてしまう。そこで狙っていた動きがうまく決まれば嬉しいですし、駄目ならまたブックへ戻って考え直すことになります。
対戦して、問題点を見つけて、ブックを調整し、また対戦する。
この循環が始まってからが、個人的には『カルドセプト ビギンズ』の面白さが一段深くなったタイミングでした。
しかも本作は、一試合そのものが従来よりコンパクトになっています。もし一回の検証に1時間近く必要なのであれば、ブックを少し変更するたびに試すのはさすがに億劫になりますが、15~30分ほどで終わることが多いビギンズなら、「少し変えたから一回試してみる」という遊び方がしやすいんです。
ここまで紹介してきたテンポ改善とブック構築は、別々の長所というより、実際にはかなり密接につながっているように感じました。
試合が短くなったから何度もブックを試せる。何度も試せるからカードの特徴が分かり、自分なりの戦い方も固まってくる。そして新しいカードが手に入れば、また40枚を見直したくなる。資料でも、実際の対戦と調整を繰り返しながら自分の戦い方に合う40枚を探していく部分に、高い中毒性があると評価されています。
ストーリーを進めることだけが目的なら、一度クリアすれば一区切りになるかもしれません。ただ、ブックそのものを強くしたい、自分の考えた構成を試したいという欲が出てくると、話は変わります。
「あと一枚だけ変えてみよう」とブックを触り始め、その結果を確かめるためにもう一試合。その試合で新しいカードを手に入れたら、またブックを開いてしまう。この繰り返しによって、気付けば予定していた以上に遊んでしまう中毒性がありました。
ただし、ここまで紹介してきたテンポの良さや土地を育てやすくなった調整が、すべて良い方向に働いているわけでもありません。遊びやすさを大きく向上させた一方で、従来のカルドセプトを知っているからこそ気になった部分もありました。
遊びやすくなった一方で気になった部分|相手との駆け引きは少し薄くなった
ここまで紹介してきたように、『カルドセプト ビギンズ』はゲーム全体のテンポが大きく改善され、以前よりも気軽にカルドセプトの面白さを味わえるようになりました。
ただ、クリアまで遊んでみると、この遊びやすさと引き換えに少し薄くなったと感じる部分もあります。
それが、相手の動きを読みながら妨害したり、土地を奪ったりする駆け引きです。
本作では序盤から魔力を獲得しやすくなったことで、土地を確保してから強化するまでの流れが非常に速くなっています。さらに同じ属性の土地を連鎖させれば資産価値が上昇するため、まとまった魔力をそこへ投入するだけでも総魔力をかなり効率よく伸ばせます。
これは先ほど紹介した爽快感につながっている一方で、試合終盤になると別の側面も見えてきます。
ある程度の連鎖が完成して魔力にも余裕が出てくると、相手の土地へ無理に侵略を仕掛けたり、スペルを使って妨害したりするより、自分の土地へ魔力を集中させたほうが勝利への近道になる場面が増えてきます。実際、相手の動きをそれほど気にしなくても、自分の連鎖した土地を育てて目標総魔力へ到達し、そのまま城へ戻ることで勝ててしまう試合もありました。
もちろん、これは必ずしも欠点と言い切れるものではありません。
自分の土地を確保し、それを守りながら育て、効率よく総魔力を伸ばしていくこと自体がカルドセプトの基本です。そこが分かりやすくなったからこそ、初心者でも勝つために何をすればいいのか理解しやすくなっていますし、一試合が15~30分程度に収まりやすくなったことにもつながっています。
ただ、シリーズ経験者からすると、「もう少し相手と殴り合いたかった」と感じる試合はあるかもしれません。
カルドセプトには、自分の計画だけを進めればいいわけではなく、相手が何を狙っているのかを見ながら予定を変えていく面白さもあります。せっかく育てた土地を奪われたり、こちらが狙っていた連鎖を相手に崩されたり、温存していたカード一枚で状況をひっくり返したりと、お互いの思惑がぶつかるからこそ生まれる面白さです。
ところがビギンズでは資産形成のスピードが速いため、場合によってはそうした駆け引きが本格化する前に、一人のプレイヤーが総魔力を伸ばしてそのまま逃げ切る展開も起こります。
特に土地の侵略は、仕掛ければ必ず成功するものではありません。相手のクリーチャーを倒すためのカードやアイテムが必要になりますし、当然ながら魔力も消費します。それなら確実に自分の総魔力を増やせる土地のレベルアップへ回したほうがいい、という判断になりやすいわけです。
このあたりは、ビギンズが何を重視して作られたのかを考えると納得できる部分でもあります。
一試合の時間を短くし、序盤から土地を確保して育てられるようにしたことで、カルドセプトの基本的な面白さへ早く到達できるようになった。その恩恵は間違いなく大きいのですが、一方で試合時間が長かったからこそ生まれていた相手との攻防まで、同じ密度で残すのは難しかったのだと思います。
そのため、個人的には「駆け引きがなくなった」というより、ゲームの面白さの重心が少し変わったと捉えるのが近いです。
相手を徹底的に妨害しながら長時間かけて盤面を奪い合う方向より、自分のブックで狙った形を作り、土地を連鎖させ、短い時間で総魔力を伸ばしていく気持ちよさを優先した。約10年ぶりの新作として新しいプレイヤーにも触れてもらうことを考えれば、かなり理解できる調整ではあります。
それでも従来作の駆け引きを特に好んでいた人にとっては、ここがビギンズの評価を分けるポイントになりそうです。遊びやすさについては明確に進化したと感じる一方、すべての変更がシリーズ経験者にとって純粋な上位互換になっているわけではない。この点は、実際に最後まで遊んだからこそ感じた惜しい部分でした。
ストーリーはあっさり気味|クリア時間・難易度・ボリュームについて
ゲーム部分についてはかなり満足できた『カルドセプト ビギンズ』ですが、購入を考えている人にとっては「実際どのくらい遊べるのか」も気になるところだと思います。
今回、ストーリーモードとサブシナリオをクリアするまでにかかった時間は、およそ25時間でした。途中からブック構築にかなり時間を使ったことに加え、15章では苦戦して何度も試行錯誤しているため、シリーズに慣れている人ならもう少し短い時間でクリアできるはずです。
とはいえ、25時間という数字だけを見て「ボリュームが少ない」と判断するのは少し違うかなと感じました。
というのも、本作はストーリーを一度クリアして終わるタイプのゲームではなく、カードを集めながらブックを調整し、そのブックを使って何度も対戦すること自体が大きな遊びになっているからです。前の見出しでも触れた通り、新しいカードが手に入れば今までの40枚を見直したくなりますし、構成を変えれば実際の試合で試したくなります。
そのため、ストーリーのクリア時間と「このゲームを何時間楽しめるのか」は、切り分けて考えたほうがいいと思います。
一方、ストーリーそのものに関しては、少し注意が必要です。
ストーリーモードという名前ではあるものの、物語をじっくり楽しませることより、あくまで試合を楽しむことに重点が置かれており、シナリオ自体は比較的あっさりしています。キャラクターや物語へ強く感情移入しながら先へ進むRPGのような遊び方を期待すると、ここは物足りなさを感じるかもしれません。
逆に言えば、「次の対戦へ早く進みたい」という人にとっては、このくらいの軽さがちょうどいいとも感じます。
本作の場合、ストーリーを進める目的の一つは、さまざまな相手やステージで戦いながらカードを集め、自分のブックを強くしていくことにあります。物語の途中で長いイベントシーンに何度も足止めされるような作りではないため、対戦とブック構築を中心に楽しみたい人であれば、むしろテンポを損なわない構成として受け入れやすいはずです。
また、難易度についても全体的には遊びやすく、『カルドセプト リボルト』などと比べると比較的ライトな調整になっています。シリーズ未経験でも入りやすい一方、最後までほとんど考えずに突破できるほど簡単なわけではなく、進行に合わせてブックを見直す必要が出てきます。
特に印象に残ったのが15章です。
ここでは一部のルールが変更されていることもあり、それまで使っていたブックをそのまま持ち込むだけでは苦戦しやすく、ステージに合わせた構成を考える必要があります。ここまでに集めてきたカードを見直し、「この条件なら何を入れるべきか」と考えることになるため、それまで覚えてきたブック構築を実践する場としても機能していました。
こうした場面があるおかげで、初心者向けに遊びやすくなったとはいえ、最後まで単調にはなりません。
むしろ序盤では土地を確保して育てる基本を覚え、そこからカードの特徴を理解し、後半になるにつれてステージに合わせたブックまで考えるようになる。最初から大量の知識を要求するのではなく、プレイヤーが慣れてきた頃に少しずつ考えることを増やしていく難易度の上げ方になっています。
さらに、一試合が比較的短くなったことで、25時間というプレイ時間そのものも進めやすく感じました。SwitchやSwitch 2の携帯モードとの相性も良く、まとまった時間が取れない日でも一試合だけ進められるため、「今日は時間がないから起動するのをやめておこう」となりにくいゲームです。
ストーリーの濃さを求める人には少し物足りないものの、カルドセプトの中心にある対戦とブック構築を楽しむためのモードとして見れば、十分な内容だったと思います。
そして、ストーリーをクリアして自分なりのブックが出来上がってくると、その40枚をCPU相手だけではなく、ほかのプレイヤーにも試してみたくなってきます。そこで一気に存在感を増してくるのが、オンライン対戦です。
クリア後こそ面白いオンライン対戦|CPU戦では味わえない「人間同士の読み合い」
ストーリーを進めながらカードを集め、試行錯誤を重ねて自分なりのブックが出来上がってくると、今度はその40枚がほかのプレイヤー相手にどこまで通用するのか試したくなってきます。
そこで遊びたくなるのが、本作に用意されているオンライン対戦です。
CPUを相手にしているストーリーモードでも、土地の奪い合いやブック構築といったカルドセプトの面白さは十分に味わえます。ただ、実際にオンラインへ入ってみると、同じルールで戦っているはずなのに試合中の緊張感はかなり変わりました。
やはり大きいのは、相手もこちらと同じように考えながら動いていることです。
たとえば相手が強力なアイテムを手札に残しているなら、こちらから安易に侵略を仕掛けるわけにはいきません。反対に、相手が重要そうなカードを使った直後であれば、「今ならあの土地を奪えるかもしれない」と攻める選択肢が出てきます。
土地の取り方についても同じで、相手が特定の属性を集め始めれば、当然その先には連鎖を作りたいという狙いが見えてきます。そこで先回りして土地を押さえるのか、それとも自分の連鎖作りを優先するのか。単純に自分がやりたいことだけを考えるのではなく、相手の狙いまで含めて次の一手を決める必要が出てきます。
この「相手は何を考えているのか」が入ってくるだけで、同じカードの使い方も変わってくるんです。
スペル一枚を使うにしても、効果が発揮できるからすぐに使うのではなく、「ここで見せてしまっていいのか」「もう少し残しておいたほうが相手への圧力になるのではないか」と考える場面が増えてきます。アイテムについても、目の前の土地を守るために使うのか、それとも後で狙われそうな高レベルの土地を守るために温存するのか。CPU戦以上に、一枚のカードを切るタイミングが気になるようになりました。
何より面白いのが、自分ではかなり完成度が高くなったと思っていたブックでも、対人戦へ持ち込むと新しい弱点が見えてくるところです。
ストーリーモードでは問題なく戦えていた構成でも、実際のプレイヤーはこちらの思惑通りには動いてくれません。こちらの連鎖を早い段階から警戒されたり、守りが薄い土地を狙われたりすれば、「この構成だとここが弱いのか」と気付かされることがあります。
すると、対戦が終わったあとにまたブックを開きたくなります。
先ほどまでの「新しいカードを手に入れたから組み直す」という楽しみ方に加えて、今度は「対人戦で見つかった弱点を修正するために組み直す」という目的まで生まれるわけです。ストーリーをクリアした段階でブック構築が終わるどころか、オンライン対戦へ進んだことで、むしろ考えることが増えていく感覚がありました。
また、先ほど本作の惜しい部分として、従来作と比べて相手へ干渉する駆け引きがやや薄くなったことにも触れましたが、オンライン対戦では人間同士だからこその読み合いが加わるため、この点もCPU戦とは少し印象が変わります。
相手がどのカードを残しているのか、どの土地を狙っているのか。そこを予想しながら行動することになるので、単純に自分の土地を育てて総魔力を伸ばすだけでは終わらない緊張感があります。ストーリーモードをクリアしたあとも毎日数試合遊びたくなるだけの違いは、しっかり感じられました。
もちろん、オンライン対戦が苦手だからといって、本作を十分に楽しめないわけではありません。ストーリーモードとサブシナリオだけでもブックを組み直す機会はありますし、CPU相手に自分の好きな構成を試していくだけでもカルドセプトらしい楽しさは味わえます。
それでも、自分なりの40枚が完成して「このブックならかなり戦える」と思えるところまで来たなら、一度はオンライン対戦へ持ち込んでみてほしいところです。
カードを集め、ブックを作り、実戦で試し、見つかった弱点をまた調整する。ここまで来るとストーリークリアはゴールというより、自分なりのカルドセプトを本格的に遊び始める一区切りに近くなってきます。
そして、ストーリーからオンライン対戦まで一通り触れてみると、『カルドセプト ビギンズ』がシリーズ経験者だけを見て作られた作品ではないことも、かなりはっきり見えてきました。では実際のところ、どんな人なら本作を楽しみやすいのか。次はその部分を整理していきます。
『カルドセプト ビギンズ』はどんな人におすすめ?シリーズ初心者にもかなり勧めやすい一作
ストーリーからオンライン対戦まで一通り遊んでみて感じたのは、『カルドセプト ビギンズ』はシリーズ経験者だけに向けた復活作ではなく、むしろ「カルドセプトを遊んだことがない人」にこそ勧めやすい作品になっているということです。
シリーズものが約10年ぶりに復活すると聞くと、過去作を知っていることが前提だったり、長年遊んできたファンへ向けてシステムがさらに複雑になっていたりする印象を持つかもしれません。
ところが本作の場合、その方向とはかなり違います。
もちろん、クリーチャー、アイテム、スペルを組み合わせたブック構築や、土地を連鎖させながら総魔力を伸ばしていく基本的な面白さは残されています。その一方で、序盤から魔力を獲得しやすくなり、一試合もコンパクトになったことで、シリーズの魅力へたどり着くまでのハードルはかなり下がりました。
そのため、まずおすすめしたいのは「カルドセプトには以前から興味があったけれど、何となく難しそうで手を出してこなかった」という人です。
約400種類のカードから40枚を選ぶと聞けば、カードゲームに慣れていない人ほど身構えてしまうと思います。ただ、最初からすべてのカードを理解する必要はなく、実際には土地を取って、周回して魔力を稼ぎ、その魔力で土地を育てるという分かりやすい流れから覚えていけます。
ゲームを進めるうちに、「同じ属性の土地を集めたい」「この土地は絶対に守りたい」「この相手にはスペルを増やしたほうが戦いやすそう」と考えることが自然に増えていくので、知識を先に詰め込むというより、遊びながら必要なことを覚えていく感覚に近いです。
難易度についても『カルドセプト リボルト』などと比べれば比較的ライトで、シリーズ未経験者はもちろん、これまでボードゲームやカードゲームをあまり遊んでこなかった人が新しいジャンルへ入る一本としても、ハードルは低くなっています。
反対に、カードゲームが好きな人にはブック構築の部分がかなり刺さると思います。
強いカードを集めるだけではなく、40枚という制限の中でクリーチャー、アイテム、スペルの比率を考え、実戦で試しながら少しずつ調整していく。完成したと思ったところへ新しいカードが手に入れば、また一枚入れ替えたくなるため、デッキを考えている時間そのものが好きな人とは相性がいいはずです。
また、「対戦ゲームは好きだけれど、一試合が長すぎるゲームは疲れる」という人にも勧めやすくなりました。
本作では一試合が15~30分程度で決着することも多く、SwitchやSwitch 2の携帯モードとも相性がいいので、少し空いた時間に一戦だけ遊ぶこともできます。もちろんブック構築まで始めると、その一戦だけでは終わらなくなることもありますが、少なくともゲームを起動する際の心理的な重さは従来よりかなり小さくなっています。
一方で、すべての人に同じようにおすすめできるわけではありません。
まず、ストーリーを最大の目的としてゲームを遊ぶ人には、少し相性が悪いと思います。シナリオは対戦を楽しむための導線という側面が強く、物語そのものは比較的あっさりしているため、濃密なドラマやキャラクター同士の物語を期待して購入すると、思っていたものとは違うと感じる可能性があります。
さらに、従来のカルドセプトで相手との激しい駆け引きを特に好んでいた人も、少し慎重に考えたほうがいいかもしれません。
ビギンズでは土地の連鎖とレベルアップによって総魔力を伸ばしやすくなったため、相手へ積極的に侵略を仕掛けるより、自分の資産形成を優先したほうが効率的な場面があります。ゲームテンポとの引き換えに相手への干渉がやや薄くなった部分はあり、この変更についてはシリーズ経験者ほど好みが分かれそうです。
それでも、「カルドセプトをこれから始める一本」という視点なら、かなりよくできた作品だと感じました。
シリーズ特有の面白さを初心者向けに別物へ作り替えたのではなく、土地を奪い、育て、ブックを組み、総魔力を競うという根っこの部分は残したまま、そこへ到達するまでの時間を短くしているからです。
タイトルに付けられた「ビギンズ」という言葉も、最後まで遊んでみるとかなりしっくりきます。
10年ぶりに戻ってきたシリーズを昔からのファンだけで囲むのではなく、ここから初めてカルドセプトへ触れる人にも入口を広げる。その意味では、本作は単なるシリーズ最新作というより、カルドセプトをもう一度始めるための一作として作られているように感じました。
まとめ|10年ぶりの復活作は「カルドセプトを始める一本」としてかなり良かった
約10年という長い空白を経て復活した『カルドセプト ビギンズ』ですが、最後まで遊んでみて感じたのは、シリーズの面白さを残しながら「今からカルドセプトを遊ぶなら、まずこれを選べばいい」と言えるところまで遊びやすく作り直した作品だということです。
特に大きかったのは、やはりゲーム全体のテンポ改善でした。
序盤から魔力を獲得しやすくなったことで、クリーチャーを配置して土地を確保し、周回で得た魔力を土地へ投資するという基本的な流れが早い段階から動き始めます。従来なら一試合に1時間ほどかかることもあったところ、本作では15~30分程度で決着する場面も多く、カルドセプトならではの面白さをかなり短い時間へ凝縮した印象がありました。
だからといって、単純にゲームを簡略化したわけでもありません。
同じ属性の土地を集めて連鎖を作り、そこへ魔力を一気に投資して総魔力を跳ね上げる爽快感はしっかり残っていますし、約400種類のカードから40枚を選ぶブック構築もかなり奥深いです。新しいカードを手に入れるたびに構成を変え、実際の試合で試してはまた調整する。この繰り返しが始まると、「あと一戦だけ」と思いながらなかなか止められなくなります。
その一方で、惜しいと感じるところがなかったわけではありません。
ゲームの進行が速くなり、土地の連鎖とレベルアップによって総魔力を伸ばしやすくなった結果、試合によっては相手へ積極的に干渉するより、自分の土地を育て続けたほうが効率よく勝ててしまいます。従来作で相手の土地を奪ったり、妨害しながら長時間じっくり戦ったりする部分が好きだった人からすると、少し物足りなく感じる可能性はあります。
ストーリーについても比較的あっさりしているので、物語を最大の目的として遊ぶゲームではありません。今回、ストーリーモードとサブシナリオのクリアまでは約25時間でしたが、むしろ本作の場合は、その過程でカードを集め、自分なりのブックを作っていくところに大きな意味があります。
そして、その40枚をオンライン対戦へ持ち込めば、今度はCPU戦とは違った人間同士の読み合いが始まります。
相手が何のカードを残しているのか、どの土地を狙っているのかを考えながら動き、対戦で見つかった弱点をまたブックへ持ち帰って修正する。ストーリーをクリアしても遊びが途切れず、その先へ自然につながっていくところも本作の魅力でした。
こうして振り返ってみると、『カルドセプト ビギンズ』が目指したものはかなり明確だったように思います。
10年前のカルドセプトをそのまま復活させるのではなく、シリーズの核となる部分は残しながら、一試合に必要な時間や序盤の動きづらさを見直し、初めて触れる人でも面白さへたどり着きやすくする。その結果として一部の駆け引きが薄くなった部分はあるものの、シリーズをもう一度動かすための作品として考えれば、この方向性にはかなり納得できました。
何より、約10年ぶりの新作で「昔から遊んでいる人しか楽しめないゲーム」にならなかったことは大きいと思います。
カルドセプトを知らない人が今から始めても基本ルールを覚えやすく、そこから土地連鎖の気持ちよさやブック構築の奥深さへ自然に踏み込んでいける。一方、シリーズ経験者には400種類のカードを使ったブック構築やオンライン対戦など、じっくり遊び込める余地も残されています。
もちろん、すべてが従来作の上位互換になったとは思いません。それでも、遊びやすさを優先しながらカルドセプトが持つ根本的な面白さを失わず、より多くの人が触れられる形へ再構築したという意味では、10年ぶりの復活は成功だったと感じました。
『カルドセプト』という名前は知っているけれど一度も遊んだことがない。カードゲームには興味があるものの、複雑そうでこれまで手を出せなかった。そんな人にとって、『カルドセプト ビギンズ』はシリーズへ入るきっかけとして、かなり選びやすい一本になっています。
そして何より、この作品が文字通り新しい「ビギンズ」となり、ここから再びカルドセプトというシリーズが続いていくことに期待したいところです。
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