ギャルとの何気ない会話が思わぬ交際につながったり、仕事に追われる社会人同士が偶然の出会いから距離を縮めたり。変熊の『えちえち継続中』は、そんな一筋縄ではいかない男女の関係を描いた短編漫画集です。
登場するヒロインも、思い込みの激しい人気者のギャルから、仕事に疲れ果てた社会人女性まで実にさまざま。しかも、単行本限定の描き下ろしエピソードに加え、デジタル版には未収録のショート漫画も追加されており、既存の短編だけでは終わらない構成になっています。
好きな本の話をしただけなのに?勘違いが二人の関係を変えていく
誰かと好きな本の話で盛り上がったからといって、それだけで恋人同士になるわけではありません。ところが、『ふ〜ん は勘違いの合図』に登場する柚木さんは、どうやら少し違った受け取り方をしてしまったようです。
柚木さんは、周囲からも人気のある明るい黒ギャル。ただ、天然という言葉だけでは片付けられないほど思い込みが激しく、ちょっとした勘違いから予想外の行動に出てしまう一面を持っています。
そんな彼女と主人公の関係が動き出すきっかけは、意外にも好きな本についての会話でした。
主人公にしてみれば、共通の話題で言葉を交わしただけのつもりだったのかもしれません。しかし、柚木さんの中ではいつの間にか話が大きく進んでおり、なんと二人はすでに付き合っていることになっていたのです。
ここで面白いのは、柚木さんが単に主人公をからかっているわけではなく、本人の思い込みによって二人の認識に大きなズレが生まれているところ。主人公が状況を理解するよりも先に彼女の行動が進んでしまうため、普通なら少しずつ距離を縮めていくはずの男女関係が、思いがけない速さで変化していきます。
しかも、この物語は二人の勘違いだけで終わりません。収録されている続編『ふ〜ん は勘違いの合図 after』では、そんな柚木さんとの関係がさらに描かれており、最初の出会いだけでは見えてこなかった二人の一面にも触れられる構成です。
好きな本の話から始まった何気ない交流が、いつの間にか恋人同士という認識に変わってしまう。その突拍子もない展開と、悪気なく主人公を振り回す柚木さんのキャラクターが、このエピソードならではの面白さになっています。
仕事に追われる二人が出会ったとき、思いがけない関係が始まる
先ほどの柚木さんとの物語が、ちょっとした勘違いから関係が変わっていく話だったのに対し、『勢いで掴める幸せもある』では、仕事に疲れた社会人同士の出会いが描かれています。
主人公は、毎日の仕事に追われる生活を送っている男性。そんな彼がひょんなことから知り合ったのが、同じように仕事で疲れ切っている隣人の女性でした。
二人に共通しているのは、仕事に追われ、自分のことを後回しにしてしまうほど余裕のない毎日を過ごしていること。最初から特別な関係だったわけではなく、顔を合わせて交流するうちに、少しずつ親しくなっていきます。
ただ、この物語で興味深いのは、二人の距離が縮まっていくきっかけが、必ずしも恋愛らしい出来事ではないところです。
仕事で疲れ果てたとき、誰かに話を聞いてもらったり、自分の弱い部分を見せられたりするだけでも、気持ちが軽くなることがあります。主人公と隣人の女性も、そうした日々の交流を通じて、お互いにとって気を許せる相手になっていったのかもしれません。
ところが、そんな関係が続いていたある日、限界を迎えた彼女が主人公に思いがけないお願いをします。
それまで少しずつ築いてきた二人の関係が、この出来事を境に大きく変わり始めるのです。
ここで注目したいのは、彼女が普段から積極的に主人公を振り回すような人物として描かれているわけではないこと。むしろ、仕事に追い詰められた末に、それまで表に出してこなかった気持ちがあふれてしまうという展開だからこそ、突然の行動にも彼女なりの事情が感じられます。
また、本作には描き下ろしの続編『勢いで掴める幸せもある after』も収録されています。
一度の出来事で終わるのではなく、その後の二人にも物語が用意されているのは、このエピソードの特徴です。偶然知り合った隣人同士が、互いの疲れや弱さを知ったことでどんな関係になっていくのか。社会人ならではの切実さが、二人の距離の変化に重なっています。
明るいギャルだけじゃない、登場人物ごとに変わる物語の雰囲気
ここまで紹介した二つのエピソードだけでも、勘違いから関係が始まるギャルと、仕事に疲れた社会人女性では、物語の雰囲気がかなり違います。
ただ、『えちえち継続中』に登場するヒロインは、それだけではありません。変熊の5冊目となる本作には、性格も立場も異なる女性たちが登場し、それぞれの関係性を軸にした短編が収録されています。
なかでも『これだけが』は、これまで紹介した作品とは少し違った人間関係が描かれるエピソードです。
主人公は、周囲からいじめを受け、ある出来事をきっかけに無視されるようになってしまった学生。そんな彼の前に現れるのが、明るい見た目の白ギャルでした。
普通なら、孤立していた主人公に声をかけてくれる存在として、彼女との出会いを前向きに受け止めたくなるところです。しかし、実際には彼女にも主人公へ近づいた理由があり、二人の関係は単純な恋愛とは異なる方向へ進んでいきます。
さらに興味深いのは、最初は彼女に振り回される立場だった主人公が、あるきっかけから関係の主導権を握ろうとすること。『ふ〜ん は勘違いの合図』ではヒロインの思い込みが物語を動かしていましたが、こちらは主人公自身の行動によって、それまでの力関係が変化していく構成になっています。
同じギャルが登場する作品でも、一方は勘違いによるコミカルな展開、もう一方は複雑な事情を抱えた二人の駆け引きが中心という違いがあるのです。
そして、本作には『はじまる! 楽しい夏休み』『助けて! 美弘先輩』『拘束は友達で』といった短編も収録されています。
一冊の中で複数の物語を楽しめるのはもちろんですが、単にヒロインの外見や性格を変えているだけではなく、登場人物が置かれた状況や、二人の関係が動き出すきっかけにも違いがあるところが特徴です。
明るいギャルに振り回される主人公もいれば、仕事に疲れた隣人との交流から新しい関係を築く男性もいる。さらに、最初は受け身だった人物が自分から行動を起こす物語まで用意されているため、読み進める作品によって男女の関係の見え方も変わってきます。
特に、登場人物のちょっとした勘違いや、それぞれが抱えている事情から物語が思わぬ方向へ進んでいく展開は、本作の短編を読み比べるうえで注目したい部分です。
勘違いから始まる恋愛や、意外な出会いを描いた短編が好きなら
『えちえち継続中』は、一人の主人公を追いかける長編作品ではなく、それぞれ異なる男女の関係を描いた短編集です。そのため、特定のヒロインとの物語をじっくり読みたい人よりも、さまざまな性格の登場人物や、予想外の出来事から始まる関係を楽しみたい人に向いています。
例えば、明るく積極的なヒロインが好きなら、『ふ〜ん は勘違いの合図』の柚木さんは印象に残る存在です。
好きな本について話しただけなのに、いつの間にか交際していることになっているという展開は、普通の恋愛漫画ではなかなか見られないもの。しかも、柚木さん自身は悪気なく行動しているため、主人公との認識のズレがそのまま物語の面白さにつながっています。
一方、学生同士の賑やかなやり取りよりも、社会人ならではの人間関係に興味があるなら、『勢いで掴める幸せもある』のような作品が合いそうです。
仕事に追われる二人が偶然知り合い、少しずつ親しくなっていくという流れには、ギャルが登場するエピソードとは違った落ち着いた雰囲気があります。そこから思いがけない出来事によって関係が変化するため、単なる隣人同士の交流では終わらないところも特徴です。
また、最初から対等ではない二人の関係や、立場が変わることで生まれる駆け引きに興味がある人には、『これだけが』のような物語も収録されています。
こうして比べてみると、本作はヒロインの見た目だけで好みを判断するよりも、どんな出会いから関係が始まり、何がきっかけで二人の距離が変わるのかに注目すると、それぞれの違いが分かりやすくなります。
さらに、短編ごとに登場人物や舞台が切り替わるため、一つの物語を読み終えた後に、まったく違う雰囲気の作品へ移れるのも短編集ならでは。気になったエピソードから読み始められるので、長いストーリーを追いかけるよりも、限られた時間でいろいろな人物関係を楽しみたい人にも合っています。
ただし、収録作品は成人向け漫画として描かれており、一般的な恋愛コメディとは表現の方向性が異なります。あくまで個性的なヒロインとの関係や、意外な展開を楽しむ作品集として捉えておくと、内容をイメージしやすいはずです。
勘違いから始まる賑やかな関係、疲れた社会人同士の出会い、そして複雑な事情を抱えた男女の駆け引き。同じ作者の短編集でありながら、どのエピソードに興味を持つかによって、本作の印象もずいぶん変わってきます。
『えちえち継続中』は描き下ろしとデジタル限定おまけも収録
ここまで紹介してきた『えちえち継続中』ですが、本作には既存の短編をまとめただけではない、単行本ならではの追加要素も用意されています。
特に注目したいのが、『勢いで掴める幸せもある after』という描き下ろしエピソードです。
仕事に疲れた主人公と隣人の女性が、偶然の出会いから親しくなっていく『勢いで掴める幸せもある』。その後の二人を描いた物語が追加されているため、本編で関係が変化した二人の続きを楽しめる構成になっています。
また、『ふ〜ん は勘違いの合図』にも続編となる『ふ〜ん は勘違いの合図 after』が収録されており、柚木さんとの物語を一つのエピソードだけで終わらせずに読めるところも特徴です。
短編集の場合、気に入った登場人物がいても、その後の関係までは描かれないことがあります。その点、本作では複数のエピソードに続編が用意されているため、最初の出会いや関係の変化を知ったうえで、同じ人物たちの別の一面に触れられます。
さらに、デジタル版には単行本未収録のショート漫画が1本追加されています。
もともと複数の短編を収録した作品集ですが、こうした追加要素があることで、単行本としてまとめられた本編に加え、デジタル版ならではの内容も楽しめるようになっているわけです。
収録作品を振り返ると、勘違いから交際へと発展してしまう柚木さんとの物語、仕事に追われる社会人同士の出会い、そして複雑な事情を抱えた学生と白ギャルの関係など、登場人物によってまったく異なる展開が用意されています。
なかでも印象的なのは、どの物語も最初から二人の関係が出来上がっているわけではなく、何気ない会話や偶然の出会い、あるいは思いがけない行動によって状況が変わっていくところです。
明るいギャルとの賑やかなやり取りが好きな人もいれば、社会人同士の少し複雑な関係に興味を持つ人もいるはず。そうした異なる好みの読者が、それぞれ気になるエピソードを見つけられるのが『えちえち継続中』という短編集の持ち味です。
そして、物語の導入だけでは分からない登場人物の表情や、関係が変化していく場面の描き方にも、漫画ならではの面白さがあります。特に、勘違いが続く柚木さんとのやり取りや、隣人同士だった二人の距離が変わる瞬間は、実際のコマ割りや人物の反応によって印象が変わる部分でもあります。
変熊が描く個性的なヒロインたちと、予想外の出来事から始まる男女の関係。さらに、描き下ろしやデジタル限定のおまけまで収録された本作は、短編ごとに異なる物語を楽しめる一冊に仕上がっています。
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