オープンワールドRPGといえば、広大なフィールドを自由に探索し、数多くのクエストをこなしながら冒険を進めていく作品を思い浮かべる人も多いと思います。
しかし、今回紹介する『The Blood of Dawnwalker』は、そうした従来の作品とは少し異なる方向から、オープンワールドの面白さを追求しています。
本作を開発したのは、『ウィッチャー3 ワイルドハント』のゲームディレクターを務めたコンラッド・トマシュキェヴィッチ氏らが設立した、ポーランドのゲームスタジオ「Rebel Wolves」です。
中世ヨーロッパを舞台にしたダークファンタジーや、複雑な事情を抱える登場人物、プレイヤーの判断によって展開が変化するクエストなど、『ウィッチャー3』を思わせる要素が数多く盛り込まれています。
ただ、本作を単なる『ウィッチャー3』の後継作品として捉えてしまうと、その独創的なゲームデザインを見落としてしまうかもしれません。
というのも、プレイヤーに与えられるのは、吸血鬼に奪われた家族を救い出すまでの30日間という限られた時間です。
主人公のコーエンは、昼間は人間として剣術や魔術を駆使し、夜になると吸血鬼の能力を使って行動する「ドーンウォーカー」と呼ばれる存在。昼夜によって探索方法や戦闘スタイルが変化するため、同じ場所を訪れる場合でも、いつ行動するかによって異なる攻略方法が生まれます。
さらに興味深いのが、30日間という制限時間の扱いです。
フィールドを移動したり、周囲を探索したりするだけでは時間が進まず、クエストの重要な工程や能力の習得など、特定の行動を選んだときに時間を消費する仕組みになっています。
つまり、常に時間に追われながら冒険するのではなく、誰を助けるのか、どの勢力と協力するのか、どの能力を身につけるのかといった判断そのものが、ゲームプレイの中心に据えられているわけです。
一方で、意欲的なシステムを採用しているからといって、すべての要素が完成されているわけではありません。操作感やアニメーション、クエストの進め方などには課題も指摘されており、購入を検討するなら、こうした部分も押さえておきたいところです。
今回は『The Blood of Dawnwalker』について、30日間の時間管理が生み出す独特の冒険や、昼夜で変化する戦闘・探索システムを中心に、物語の魅力と気になる点まで詳しく紹介していきます。
『The Blood of Dawnwalker』とは?元ウィッチャー開発陣が生み出した新作RPG
『The Blood of Dawnwalker』は、ポーランドのゲームスタジオ「Rebel Wolves」が開発し、バンダイナムコエンターテインメントが販売する、シングルプレイ専用のオープンワールドアクションRPGです。
Rebel Wolvesは2022年に設立された比較的新しいスタジオですが、その中心には『ウィッチャー3 ワイルドハント』や『サイバーパンク2077』など、数々の大型RPGに携わってきた開発者が集まっています。
なかでも注目したいのが、スタジオの設立者であるコンラッド・トマシュキェヴィッチ氏です。同氏は『ウィッチャー3』でゲームディレクターを務めた人物であり、本作のクリエイティブディレクターにも、同作でリードクエストデザイナーを担当したマテウシュ・トマシュキェヴィッチ氏が参加しています。
こうした開発陣の経歴を知ると、『ウィッチャー3』で高く評価された重厚な物語や、プレイヤーの選択を重視するクエスト設計を期待したくなります。実際、本作にもそうした特徴は受け継がれており、とりわけ吸血鬼を題材にした世界観には、人間の欲望や権力を巡る複雑な関係が描かれているのです。
物語の舞台となるのは、疫病と戦乱がヨーロッパを覆っていた1347年。巨大な山脈に囲まれたサンゴラの谷でも疫病が蔓延し、感染した住民は病の拡大を防ぐという名目で、容赦なく処刑されていました。
そんな絶望的な状況の中、谷に現れたのが、古くから生き続ける吸血鬼ブレンシスと、その配下たちです。
彼らは住民を苦しめていた権力者を打ち倒し、自らの血によって疫病に苦しむ人々を救います。圧政と病から解放された住民にとって、吸血鬼たちはまさに救世主と呼べる存在だったのかもしれません。
ところが、ブレンシスたちが新たな支配者となったことで、谷の状況は別の意味で悪化していきます。
吸血鬼たちは救済の対価として、住民に定期的な献血を義務づけ、命令に逆らう者や役に立たなくなった者を容赦なく排除するようになったのです。かつて人間の権力者に苦しめられていた人々は、今度は自分たちを救った吸血鬼によって支配されることになります。
この世界観で興味深いのは、吸血鬼が最初から人間を襲うだけの怪物として描かれているわけではない点です。
彼らが疫病から人々を救ったことも事実であり、その一方で、救済を利用して新たな支配体制を築いているという複雑な構図が、物語の土台になっています。人間と吸血鬼のどちらが正しいのか、単純な善悪では割り切れないところに、本作らしいダークファンタジーの魅力が感じられます。
そして、そんなサンゴラの谷で家族と暮らしていた青年が、本作の主人公であるコーエンです。
コーエンはブレンシスの支配に抵抗したことをきっかけに村を焼かれ、家族まで連れ去られてしまいます。さらに、一連の出来事を通して、自身も人間と吸血鬼の中間に位置する「ドーンウォーカー」へと変貌することになりました。
昼間は人間として行動できるものの、日が沈むと吸血鬼の肉体と能力が目覚め、血を求める衝動にも向き合わなければなりません。人間としての理性を残しながら、夜には怪物としての力を振るうという、二つの性質を抱えた存在なのです。
しかも、コーエンに残された時間は決して多くありません。
ブレンシスは自らの支配を盤石なものにするため、30日後に行う儀式でコーエンの家族を生贄にしようとしています。家族を救うには、それまでにブレンシスへ対抗する手段を見つけ、彼らを奪還しなければならないわけです。
ただし、そこへ至る道筋は一つに決められているわけではありません。
誰に協力を求め、どの勢力と関係を築き、どのような能力を身につけるのか。プレイヤーは限られた時間の中で、自分なりの方法を考えながら冒険を進めていくことになります。
ここで重要なのが、30日間という期限は単に物語へ緊迫感を与えるための設定ではなく、ゲーム全体を動かすシステムとして組み込まれていることです。
家族を救うという最終目的は共通していても、そこへ至るまでに誰と出会い、何を優先し、どのような力を身につけるのかによって、プレイヤーが経験する冒険は変わっていきます。
広大な世界を自由に歩き回るだけでなく、限られた時間を何に使うのかという判断そのものが、冒険の内容を形作っていく。
この独特な時間の扱いにこそ、『The Blood of Dawnwalker』が従来のオープンワールドRPGとは異なる面白さを生み出している理由があります。
30日間の使い方で冒険が変わる!従来のオープンワールドとは異なる時間システム
『The Blood of Dawnwalker』を特徴づけているのが、家族を救い出すまでに与えられた30日間という制限時間です。
一般的なオープンワールドRPGでは、メインストーリーを後回しにして寄り道を楽しんだり、キャラクターを十分に育成してから強敵に挑んだりと、プレイヤーの好きなタイミングで冒険を進められる作品が少なくありません。
一方、本作では30日後に家族が生贄にされるという明確な期限が設けられており、限られた時間をどのように使うのかが、ゲームプレイそのものに深く関わってきます。
ただ、時間制限と聞いて、探索中も時計が進み続けるような慌ただしいゲームを想像した人は、少し安心してもよいかもしれません。
本作の時間管理は、リアルタイムで刻々と期限が迫る仕組みとは異なり、プレイヤーが特定の行動を選択したときに時間を消費する設計になっているからです。
具体的には、ゲーム内の1日が昼と夜に分かれており、それぞれ8区画、合計16区画で管理されています。30日間では全部で480区画となり、プレイヤーはこの限られた時間を使って、家族を救うための準備を進めていくことになります。
重要なのは、フィールドの移動や探索、通常の戦闘では時間が進まないという点です。
たとえば、気になる建物を調べたり、周辺の地形を確認したり、敵と戦ったりするだけで、貴重な時間が失われるわけではありません。時間を消費するのは、クエストの重要な工程を進める、能力を習得する、訓練を行うといった、あらかじめ指定された行動に限られています。
しかも、それぞれの行動に必要な時間は事前に表示されるため、何も知らないまま行動した結果、突然期限が迫っていたという事態も避けられる仕組みです。
この設計によって、プレイヤーは探索そのものを楽しみながら、重要な場面では時間の使い方を慎重に考えることになります。
では、実際にどのような判断が求められるのか。
たとえば、困っている住民から助けを求められた場合、その人物のために時間を使うこともできますが、同じ時間を使って新しい能力を習得し、今後の戦闘に備えるという選択肢もあります。
あるいは、目の前の問題を解決するよりも、別の勢力と接触して協力関係を築いたほうが、家族を救うための有力な手段を得られるかもしれません。
もちろん、どの選択が正解なのかは、その時点では簡単に判断できないはずです。今すぐ誰かを助けることが後の展開につながる可能性もあれば、能力の習得を優先したことで、別の場面を有利に進められることも考えられます。
こうした判断を積み重ねながら、自分なりの冒険を組み立てていくところに、本作の時間管理システムの面白さがあります。
さらに興味深いのが、キャラクターの成長にも時間が必要になることです。
通常のRPGでは、敵を倒して経験値やスキルポイントを獲得すれば、能力を強化できる作品が多いと思います。しかし、本作では新たなスキルを習得する際、スキルポイントだけでなく、ゲーム内の時間も消費する仕組みが採用されています。
つまり、キャラクターを強くすることと、物語を進めることが、同じ480区画という限られた時間を巡って競合するわけです。
強力な能力を身につければ、その後の戦闘や探索を有利に進められるかもしれませんが、育成ばかりを優先していると、家族を救うための行動に使える時間が減ってしまいます。
反対に、成長を後回しにしてクエストを進めれば、十分な準備が整わないまま危険な状況に直面する可能性もあるため、目先の利益だけで行動を決めるわけにはいきません。
もっとも、480区画という時間は、決して何もできないほど少ないわけではありません。移動や探索では時間を消費しないこともあり、多くの人物や出来事に関わりながら、自分なりの行動計画を立てられる余地が用意されています。
ここで注目したいのは、時間制限によってプレイヤーの自由を単純に奪うのではなく、何を優先するかという判断に意味を持たせていることです。
広大なマップに大量のクエストが用意されていても、すべてを好きなだけ消化できるのであれば、一つひとつの選択が持つ意味は薄れてしまう場合があります。
それに対して本作では、限られた時間を何に使うのかを自分で決めるからこそ、助けた人物や習得した能力、協力を選んだ勢力が、自分自身の冒険を形作る重要な要素になっていきます。
そして、この時間管理をさらに奥深いものにしているのが、主人公コーエンの身体に起こる昼夜の変化です。
昼間は人間として住民と接触し、夜には吸血鬼の能力を使って別の経路から目的地へ侵入するなど、時間帯によって選べる行動そのものが変化します。
昼にしか会えない人物を訪ねるため、夜のうちに別の用事を済ませておくといった行動計画も必要になり、単に残り時間を計算するだけでは済まないところが面白い部分です。
30日間という期限、昼夜による行動の変化、そして時間を消費するキャラクター育成。これらが一つの仕組みとして結びつくことで、プレイヤーの判断そのものが物語を動かすゲームデザインになっています。
何を達成したのかだけでなく、限られた時間の中で何を選び、何を諦めたのか。その過程まで含めて自分だけの冒険になるという点が、『The Blood of Dawnwalker』の大きな特徴です。
昼は人間、夜は吸血鬼!時間帯によって変化する探索と戦闘
30日間という限られた時間の中で行動を選ぶ『The Blood of Dawnwalker』ですが、プレイヤーが考えなければならないのは、残り時間の配分だけではありません。
主人公のコーエンは、昼間は人間として行動し、日が沈むと吸血鬼の肉体と能力が目覚める「ドーンウォーカー」です。この二つの姿によって、同じ場所を訪れたとしても、探索方法や戦闘スタイルが大きく変わってきます。
昼間のコーエンは、人間として住民と接触しながら情報を集め、剣術や魔術を駆使して敵と戦います。人々との交流や正面からの交渉を通じて問題を解決していく場面では、人間としての立場が重要になるわけです。
一方、夜になると吸血鬼としての能力が解放され、壁を登ったり、通常では通れない経路から建物へ侵入したりと、昼間とは異なる行動が可能になります。
たとえば、昼間は正面から入るしかなかった建物でも、夜なら吸血鬼の身体能力を利用して別の場所から侵入できるかもしれません。反対に、昼間でなければ会えない人物も存在するため、吸血鬼の能力が使える夜だけで行動すればよいという単純な話でもないのです。
ここで面白いのが、昼夜の変化が探索の自由度を広げるだけでなく、前述した時間管理システムとも密接に結びついていることです。
昼間に会いたい人物がいるなら、その時間帯を確保するために夜のうちに別の用事を済ませておく。あるいは、正面からの侵入が難しい場所であれば、夜まで待って吸血鬼の能力を利用するという選択も考えられます。
同じクエストでも、いつ、どの姿で行動するのかによって侵入経路や出会える人物、選択できる行動が変わるため、時間帯そのものが攻略を考えるうえで重要な要素になっています。
しかも、昼夜による違いは探索だけにとどまらず、敵との戦い方にも大きく影響します。
本作の戦闘は三人称視点のアクションを基本としており、剣による攻防に、上下左右の方向を指定する防御システムが組み込まれています。
敵はさまざまな方向から攻撃を繰り出してくるため、プレイヤーは画面に表示される攻撃方向を見極め、それに合わせて防御する必要があります。単純にガードボタンを押していれば安全というわけではなく、相手の動きを観察しながら攻撃を受け止めることが重要です。
通常の防御でも攻撃を防ぐことはできますが、そのたびにスタミナを消費してしまいます。そこで戦闘の鍵を握るのが、適切なタイミングで防御を合わせる「パーフェクトブロック」です。
パーフェクトブロックに成功すると、スタミナを消費せずに敵の攻撃を受け止められるうえ、相手をひるませて反撃の機会を作り出せます。
敵との間合いを保ちながら攻撃方向を読み、防御に成功したところから反撃へ転じる。この一連の駆け引きが戦闘の中心になっており、ボタンを連打するだけでは押し切れない仕組みです。
さらに、攻撃や防御を成功させると「アクティベーションゲージ」が蓄積され、ゲージを消費することで各種アビリティを発動できます。
防御を成功させることが、そのまま強力な攻撃につながるため、敵の攻撃をただ耐えるのではなく、反撃の機会を作るために積極的に防御を活用することになります。
こうした方向指定型の攻防には『キングダムカム・デリバランス II』を思わせる部分もありますが、本作は比較的直感的な操作を重視しており、相手の動きに慣れるほど、防御から反撃までを滑らかにつなげられる設計になっています。
そして、この剣による戦闘を土台として、昼間は魔術、夜間は吸血鬼の能力を組み合わせることで、それぞれ異なる戦闘スタイルを構築できるのです。
キャラクターの成長要素として用意されているスキルツリーも、剣術・魔術・吸血術という三つの系統に分かれています。
剣術は昼夜を問わず使用できる共通の能力で、突進攻撃や薙ぎ払い、パーフェクトブロック後の反撃などを強化できます。人間と吸血鬼のどちらの姿でも役立つため、基本的な戦闘能力を底上げするうえで重要な系統です。
一方、昼間に使用する魔術には、敵への攻撃だけでなく、補助や回復に役立つ能力も用意されています。剣による攻防を中心にしながら、状況に応じて魔術を組み合わせることで、幅広い戦い方に対応できる仕組みになっています。
それに対して、夜間に使用する吸血術は、敵の血を奪って体力を回復したり、吸血によって自身を強化したりと、吸血鬼ならではの能力が中心です。
昼間の戦闘が剣術と魔術を組み合わせた堅実な立ち回りだとすれば、夜間は吸血鬼の力を利用し、敵へ積極的に襲いかかるような戦闘スタイルを構築できます。
この違いによって、同じ敵と戦う場合でも、昼間と夜間では使用できる能力や立ち回りが変化するため、どの時間帯に戦闘へ挑むのかという判断にも意味が生まれます。
ただし、三つのスキルツリーが用意されているからといって、すべての能力を気軽に習得できるわけではありません。前述したように、本作ではスキルポイントに加えてゲーム内の時間も消費するため、どの能力を優先して身につけるのかを考える必要があります。
昼間の戦闘を安定させるために魔術を強化するのか、それとも夜間の探索や戦闘で役立つ吸血術を習得するのか。剣術を中心に育成して、どちらの姿でも対応できる戦闘能力を確保するという考え方もあります。
こうした育成方針が30日間の行動計画と結びついていることも、本作の特徴といえます。
昼と夜で主人公の能力が変化するだけでなく、その違いが探索経路や戦闘、キャラクター育成にまで影響することで、時間帯を選ぶ行為そのものがゲームプレイの一部になっているのです。
人間として正面から問題に向き合うのか、それとも吸血鬼の能力を利用して別の方法を探るのか。コーエンが抱える二つの性質は、物語上の設定にとどまらず、プレイヤー自身の行動や判断にも反映される仕組みになっています。
誰を信じるかで物語が変わる!選択に重みを与える人物描写とクエスト
『The Blood of Dawnwalker』では、30日間という限られた時間の中で誰を助け、どの勢力と協力するのかをプレイヤー自身が決めていきます。
ただ、選択肢が豊富に用意されているだけでは、必ずしも物語が面白くなるとは限りません。どちらを選んでも構わないと思えるような人物ばかりでは、限られた時間を使ってまで関わろうという気持ちも生まれにくいはずです。
その点、本作では登場人物それぞれに異なる事情や思惑が与えられており、誰を信じるべきなのか簡単には判断できない人間関係が描かれています。
象徴的なのが、主人公コーエンの家族を奪った吸血鬼ブレンシスの存在です。
ブレンシスはサンゴラの谷を恐怖によって支配する人物ですが、かつては自身も人間であり、疫病に苦しむ住民を救ったという過去を持っています。
もちろん、人々を救ったからといって、その後の圧政が正当化されるわけではありません。しかし、彼が単に人間を苦しめることだけを目的とした怪物ではなく、救済と支配の両方に関わってきた人物であることが、物語に複雑さを与えています。
さらに、ブレンシスに仕える3人の配下も、それぞれ異なる思想や欲望を抱えているため、吸血鬼という共通点だけで一括りにできる存在ではありません。
同じ支配者の下で行動していても、何を求め、どのような考えでブレンシスに従っているのかは異なります。敵対する勢力の内部にも個々の事情が存在することで、単純に敵を倒せばすべてが解決するという物語にはなっていないのです。
一方、コーエンと行動を共にする仲間や、旅の途中で出会う住民たちにも、それぞれの事情があります。
主人公に協力的な人物だからといって、必ずしもその考えが正しいとは限りませんし、反対に敵対する人物にも、その人物なりの論理が存在します。
こうした人物描写があるからこそ、誰かに協力を求められたときにも、単純に報酬やクエストの達成条件だけで判断するのではなく、その人物が何を望んでいるのかを考える余地が生まれています。
なかでも印象的なのが、吸血鬼でありながら血を吸うことをやめた人物にまつわるエピソードです。
吸血鬼にとって血を求めることは、その存在を特徴づける性質の一つですが、あえてそれを拒絶して生きる人物が登場することで、人間と吸血鬼の関係を別の角度から捉えられるようになっています。
吸血鬼だから人間の敵なのか、それとも人間としての理性や信念を持ち続けることに意味があるのか。本作の人物描写には、こうした問いを感じさせる部分があり、主人公自身が人間と吸血鬼の狭間に立つ存在であることとも重なります。
また、登場人物の背景が丁寧に描かれていることは、サブクエストの内容にも表れています。
本作には、人間同士の関係や過去の出来事、サンゴラの谷を巡る対立など、さまざまな事情を扱ったクエストが用意されています。
なかには複数の人物や地域にまたがって長期間続くものもあり、最初は別々の出来事に見えていた問題が、物語を進めるうちに思わぬ形で結びついていく展開も見られます。
一つの依頼を解決したら、それで終わりという単純な構造ではなく、人物同士の関係や地域が抱える問題を通して、世界全体のつながりを感じられるところが特徴です。
こうした作りには、『ウィッチャー3』で評価された、メインストーリーだけでなく、その世界に暮らす人々の人生まで描こうとする姿勢が受け継がれています。
そして、本作ではそこに30日間という時間制限が組み合わされることで、クエストに関わる意味がさらに変わってきます。
困っている人物を見つけたとしても、その依頼を引き受けるために時間を使えば、別の行動へ割り振れる時間は減ってしまいます。
目の前の人物を助けるのか、それとも家族を救うという本来の目的を優先するのか。あるいは、その人物との関係が後の展開に影響することを期待して、時間を使うという判断も考えられます。
すべての依頼を機械的に消化するのではなく、誰のために時間を使うのかを自分で決めるからこそ、登場人物との関係にも意味が生まれてくるわけです。
ただし、人物描写や物語の構成が充実している一方で、クエストの進め方には惜しい部分もあります。
調査や交渉、潜入など、依頼を受けた段階では異なる目的が提示されていても、実際には指定された場所へ向かい、兵士や怪物を倒すという展開に落ち着くクエストが目立つようです。
物語上の事情や選択肢が違っていても、プレイヤーが操作する内容は似た流れになりやすく、長時間遊んでいると単調さを感じるという指摘があります。
これは、物語の自由度とゲームプレイの自由度が、必ずしも同じ水準で実現されているわけではないことを示しています。
たとえば、敵対する勢力との問題を解決する場面でも、交渉によって衝突を避けたり、相手の弱みを調べて別の解決策を探したりと、戦闘以外の方法がさらに充実していれば、人物描写の豊かさをゲームプレイにも反映できたかもしれません。
もちろん、すべてのクエストに複雑な分岐や特別な解決方法が必要というわけではなく、戦闘を中心とした比較的単純な依頼があることで、重要な選択を伴う場面が際立つという考え方もできます。
それでも、登場人物の思想や利害関係が丁寧に描かれているだけに、実際の問題解決にも、もう少し多様な手段が用意されていればと感じる部分です。
『The Blood of Dawnwalker』のクエストが興味深いのは、単に物語が分岐することではなく、複雑な事情を抱えた人物たちの中から、誰と関わるのかをプレイヤー自身が選ぶところにあります。
すべての人物を救うことが難しい状況だからこそ、誰を信じ、何を優先したのかという判断が、自分だけの冒険を形作っていくのです。
革新的なゲームデザインにも惜しい部分がある!操作性や完成度の課題
ここまで紹介してきたように、『The Blood of Dawnwalker』は30日間という時間制限を軸に、探索や戦闘、キャラクター育成、物語の選択を結びつけた意欲的なRPGです。
ただ、ゲーム全体の仕組みが独創的だからといって、実際に操作したときの快適さまで十分に仕上がっているとは限りません。
本作は公式に「AAA級のアクションRPG」を掲げていますが、クリアレビューでは、ゲームデザインの面白さに対して、操作感やアニメーション、UIなどの細部には改善の余地があると指摘されています。
特に気になるのが、キャラクターの移動に関する挙動です。
主人公のコーエンが走る際、足が地面をしっかり捉えておらず、滑っているように見える場面があるほか、フィールド上のオブジェクトの隙間に引っかかることもあるようです。
オープンワールドRPGでは、目的地まで移動したり、建物の周辺を調べたりする時間が長くなりやすいため、こうした挙動の不自然さは、細かな問題であっても積み重なると気になってきます。
まして本作では、昼間は人間として行動し、夜には吸血鬼の身体能力を利用して壁を登るなど、移動そのものが攻略に関わってきます。探索経路を自由に選べる仕組みが用意されているだけに、キャラクターを思いどおりに動かせるかどうかは、冒険の快適さを左右する重要な部分です。
また、アニメーションやUIについても、ゲーム全体の完成度という観点では課題が残されているとされています。
本作の戦闘は、敵の攻撃方向を見極めて防御し、パーフェクトブロックから反撃につなげる仕組みになっています。そのため、キャラクターの動きや画面上の情報が自然に伝わることは、戦闘の駆け引きを楽しむうえでも欠かせません。
操作感や演出の細部に違和感があると、せっかくの戦闘システムを十分に楽しめない場面も出てくる可能性があります。
さらに、クリアレビューでは、ゲームを進める中で細かな不具合にも何度か遭遇したと報告されています。
ただし、不具合の発生頻度や影響の大きさについては、プレイ環境や今後のアップデートによって変わる可能性もあるため、すべてのプレイヤーが同じ問題に直面するとは限りません。
購入を検討する際には、ゲームデザインの独創性だけでなく、こうした技術面の仕上がりについても確認しておきたいところです。
そして、操作性や不具合とは別に、ゲームプレイそのものにも惜しい部分があります。
前述したクエストの構造が、その代表的な例です。
本作では、複雑な事情を抱える登場人物や、複数の地域にまたがって展開するサブクエストなど、物語の面では充実した内容が用意されています。
しかし、実際のクエスト進行では、調査や交渉、潜入といった異なる目的から始まっても、最終的には指定された場所へ向かい、敵を倒すという流れに落ち着く場面が目立つようです。
物語上では誰に協力するのか、どのような判断を下すのかという選択が重視されている一方で、問題を解決するための具体的な行動には、そこまで多くの種類が用意されていないということになります。
たとえば、敵対する勢力との対立を解決する際、戦闘以外にも交渉や情報収集、潜入などを活用して目的を達成できれば、プレイヤーごとに異なる攻略方法が生まれやすくなります。
本作は時間管理や昼夜の変化によって、いつ、どのように行動するのかを考える面白さを追求しているだけに、クエストの解決方法にも同じような自由度があれば、さらに幅広い冒険を楽しめたかもしれません。
もっとも、すべてのクエストに複雑な分岐や特殊な攻略方法を用意することが、必ずしもゲーム全体の面白さにつながるとは限りません。
比較的単純な戦闘や探索を挟むことで、重要な選択を迫られる場面が際立つという考え方もありますし、戦闘を中心としたクエスト構成を好むプレイヤーにとっては、大きな問題にならない可能性もあります。
それでも、人物描写や物語の分岐が豊かであることを考えると、実際の行動にも、もう少し幅広い選択肢が欲しかったという指摘には納得できる部分があります。
ここで改めて考えたいのが、本作がAAA級のRPGとして、どの部分に開発リソースを集中させているのかという点です。
近年の大型オープンワールドRPGでは、広大なマップや膨大なコンテンツ、精細なグラフィックなど、作品の規模や映像的な完成度を追求する方向も見られます。
それに対して『The Blood of Dawnwalker』は、一つの谷と30日間という限られた舞台に、人物や勢力、クエスト、昼夜の変化といった要素を凝縮しています。
プレイヤーが何を選び、どのような順番で行動したのかによって冒険の内容が変わるという仕組みに、開発の重点が置かれているわけです。
もちろん、ゲームデザインが独創的であれば、操作性や不具合に関する問題を見過ごしてよいという話ではありません。どれだけ魅力的な仕組みを用意していても、それを快適に楽しめる環境が整っていなければ、プレイヤーの体験は損なわれてしまいます。
一方で、技術的な完成度だけを基準に評価してしまうと、本作が挑戦しているゲームデザインの面白さを十分に捉えられないのも事実です。
操作感や細部の仕上がりには課題を残しながらも、限られた時間とプレイヤーの選択を中心に据えたゲームデザインには、従来のオープンワールドRPGとは異なる魅力があります。
購入を検討するなら、こうした長所と短所の両方を理解したうえで、自分がRPGに求めるものと照らし合わせて判断したい作品です。
まとめ|『The Blood of Dawnwalker』は選択そのものを冒険に変えるRPG
『The Blood of Dawnwalker』は、元『ウィッチャー3』開発陣が培ってきた重厚な物語や人物描写を受け継ぎながら、30日間という時間制限によって、オープンワールドRPGに新たな遊び方を取り入れた作品です。
本作で特に注目したいのは、広大な世界を自由に探索できること以上に、限られた時間を何に使うのかという判断が、冒険そのものを形作っていく点にあります。
家族を救うために協力者を探すのか、それとも新たな能力を習得して戦闘に備えるのか。目の前で困っている人物を助けることもできますが、そのために時間を使えば、別の行動へ割り振れる時間は減ってしまいます。
しかも、主人公コーエンは昼間と夜間で異なる能力を持つため、いつ行動するのかによって探索経路や戦闘スタイルまで変化します。
昼間は人間として住民と接触し、夜には吸血鬼の身体能力を利用して別の経路から目的地へ侵入する。こうした昼夜の使い分けが時間管理と結びつくことで、プレイヤーは単にクエストを消化するのではなく、自分なりの行動計画を立てながら冒険を進めることになります。
さらに、登場人物それぞれが異なる事情や思惑を抱えていることも、選択に重みを与えている要素です。
かつて人々を疫病から救った吸血鬼が、新たな支配者として住民を苦しめているという世界観には、単純な善悪では割り切れない複雑さがあります。
誰を信じ、どの勢力と協力するのかを考える過程で、登場人物の背景や人間関係が重要になってくるため、物語を重視するRPGファンにとっても興味深い内容になっています。
一方、操作感やアニメーション、UIなどの細部には改善の余地があり、クエストの解決方法も戦闘中心になりやすいという課題が指摘されています。
特に、人物描写や物語の選択肢が豊富であるだけに、交渉や潜入など、戦闘以外の方法で問題を解決できる場面がさらに充実していれば、ゲームプレイの幅も広がったはずです。
技術的な完成度や操作の快適さを重視する人にとっては、こうした部分が気になる可能性もあるため、独創的なシステムだけを見て判断するのではなく、長所と短所の両方を押さえておきたいところです。
それでも、本作が提示しているゲームデザインには、従来のオープンワールドRPGとは異なる発想があります。
近年の大型RPGでは、広大なマップや膨大なコンテンツによって冒険の規模を拡大する作品も見られますが、『The Blood of Dawnwalker』は、一つの谷と30日間という限られた舞台に、探索や戦闘、育成、物語の選択を凝縮しています。
すべてのクエストをこなすことよりも、何を優先して行動したのかという過程に意味を持たせることで、同じ世界を冒険していても、プレイヤーごとに異なる体験が生まれる仕組みです。
限られた30日間の中で、誰を助け、何を諦め、どのような方法で家族を救おうとしたのか。その選択の積み重ねが、自分だけの物語になっていく。
物語の深さやプレイヤー自身の判断を重視する人、従来のオープンワールドとは異なる遊び方を求めている人にとって、『The Blood of Dawnwalker』は注目しておきたいRPGの一つです。
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