『オービタルズ(Orbitals)』は、Nintendo Switch 2向けに登場した、2人プレイ専用の協力型アクションアドベンチャーです。1人で黙々と攻略していくタイプではなく、2人のプレイヤーがそれぞれ異なる役割を担当し、ときには声を掛け合いながら仕掛けを突破していくことがゲームの中心に据えられています。
ただ、本作について最初に目を奪われるのは、そうした協力プレイの仕組み以上に、その独特なビジュアルかもしれません。
画面に映し出されるのは、どこか懐かしい1980年代から90年代の日本製SFアニメを思わせる世界。太めの輪郭線や鮮やかな色使いだけではなく、画面のノイズや色のにじみ、あえて滑らかにしすぎないアニメーション、手描きらしさを残したエフェクトまで徹底されており、単に「アニメ調のグラフィックを採用したゲーム」と呼ぶだけでは少し足りません。
実際、本作の開発における出発点には、**「プレイできるレトロアニメ」**という構想があります。その言葉を知ってから映像を見ると、なるほどと思わされる部分はかなり多く、昔のブラウン管テレビでSFアニメを眺めていたような質感までゲームの中へ持ち込もうとしているのが伝わってきます。
そして、もう一つ押さえておきたいのが、本作を手掛けたスタッフの経歴です。
『オービタルズ』のディレクターを務めるジェイコブ・ルンドグラン氏は、かつてHazelight Studiosに在籍し、『A Way Out』や『It Takes Two』、『Split Fiction』といった協力型タイトルの開発に携わっていました。そのため本作でも、単に2人が同じステージを一緒に進むのではなく、画面分割を前提として、それぞれが別の役割を担いながら攻略するゲームデザインが採用されています。
たとえば、一方のプレイヤーが仕掛けを動かしている間に、もう一方がその先へ進む。別々の場所に分断された状態で相手の状況を確認したり、それぞれが持つ道具を組み合わせたりと、「2人いること」そのものを攻略へ組み込もうとしているわけです。
こう聞くと、『It Takes Two』や『Split Fiction』のような濃密な協力プレイを期待したくなるところですが、実際に遊んでみると、『オービタルズ』はそれらの作品とは少し違った魅力と、同時にいくつかの惜しさも抱えています。
特に印象に残るのは、やはり徹底して作り込まれたレトロSFアニメの世界です。その一方で、2人協力ゲームとして細かく見ていくと、仕掛けの見せ方や遊びの広がりには粗さを感じる部分もありました。
「見ているだけでも楽しいほど世界観は魅力的。それをゲームとして遊んだとき、どこまで2人協力の面白さにつなげられているのか」
今回のレビューでは、このあたりを一つの軸にしながら、『オービタルズ』を実際に遊んで感じた魅力と惜しい部分を掘り下げていきます。
まず驚かされたのが「プレイできるレトロアニメ」と呼びたくなる映像表現
実際に『オービタルズ』を遊び始めて、まず強く印象に残るのは、やはり徹底して作り込まれた映像表現です。
最近ではアニメ調のグラフィックを採用したゲーム自体は珍しくありませんが、本作の場合はキャラクターをセルアニメ風に描くだけでは終わっていません。太くはっきりした輪郭線や鮮やかな色使いに加えて、わずかに滲んだような画面の質感、あえて滑らかにしすぎていないアニメーション、手描きを思わせるエフェクトまで含めて、1980年代から90年代に作られた日本のSFアニメらしさを再現しています。
このあたりは静止画を見るだけでも十分に魅力的なのですが、実際にキャラクターを動かしてみると、さらに印象が変わります。
たとえば何気ない通路を歩いているだけでも、背景に置かれた機械や設備まで世界観に合わせて細かくデザインされているため、「次の目的地へ早く行かなければ」という気持ちより、少し立ち止まって周囲を眺めたくなる瞬間がかなりあります。ゲームとして攻略しているはずなのに、昔見ていたSFアニメの中へ入り込み、その世界を自分の手で歩き回っているような感覚があるんですね。
しかも、『オービタルズ』が面白いのは、こうした懐かしさを単純な「レトロ風」の記号として使っていないところです。
古い作品らしい質感を残しながらも、映像そのものが古臭く見えるわけではありません。むしろ現在のゲームだからこそ可能になった立体的な空間表現の中へ、昔のセルアニメを思わせる絵作りを落とし込んでいるので、懐かしさと新鮮さが不思議なくらい同居しています。
だからこそ、開発の出発点にあったという**「プレイできるレトロアニメ」**という言葉が、本作にはよく似合います。
単にムービーシーンだけがアニメ作品のように作られているのではなく、自分で歩いている時間も、宇宙船を操作している時間も、仕掛けを動かしている最中も、その世界観がほとんど崩れません。ビジュアルだけではなく、音楽や声、演出まで同じ方向を向いているため、一つのSFアニメ作品としてのまとまりが非常に強く感じられます。
そして個人的には、この徹底ぶりこそ『オービタルズ』を遊ぶ大きな理由になっていると感じました。
もちろん、ゲームである以上はグラフィックだけで評価できるものではありません。ただ、「この先にはどんな場所が待っているのか」「次はどんな景色を見せてくれるのか」と思わせる力は確かにあり、先へ進む動機をゲームシステムだけに頼っていないんです。
一方で、これだけ完成されたビジュアルを持っているからこそ、その世界で描かれる物語にも自然と期待が高まります。実際、『オービタルズ』には見た目の可愛らしさとは少し印象の異なるSF設定が用意されており、主人公2人の明るい冒険を追っていくうちに、この世界が抱えている事情も少しずつ見えてきます。
明るい2人の冒険、その裏側にある少し重たいSF設定も面白い
映像表現に惹かれて『オービタルズ』の世界へ入っていくと、今度はそこで暮らしているキャラクターたちや、この世界が置かれている状況にも興味が向いてきます。
物語の中心となるのは、宇宙ステーションで暮らしている若き探検家のマキとオムラ。2人の故郷は「ストームウォール」と呼ばれる超自然的な宇宙嵐に閉じ込められており、ステーションそのものが崩壊の危機に直面しています。それを救うために必要となる3つのリアクターカセットを探し、2人は小型宇宙船に乗って危険な嵐の向こう側へ探索に出ることになります。
こうして書くと、かなり緊迫したSF作品を想像するかもしれません。ただ、実際にゲームを遊んでいると、その重さをあまり感じさせないのが『オービタルズ』の面白いところです。
マキは勢いよく前へ進んでいくタイプなのに対して、オムラは比較的慎重に状況を見ながら行動するタイプ。性格こそ違いますが、ありがちな「最初は反発していた2人が冒険を通じて少しずつ理解し合う」といった関係ではなく、最初から互いを信頼していて、一緒に行動すること自体を楽しんでいるのが伝わってきます。
この距離感が、個人的にはかなり心地よく感じました。
冒険の途中でも2人はくだらない冗談を言い合ったり、ときには声を合わせて歌ったりと、命懸けの任務へ向かっているとは思えないほど楽しそうにしています。それでいて緊張感を完全に壊してしまうわけでもなく、重くなりそうな場面を2人の掛け合いが少し柔らかくしてくれるため、プレイヤー側も肩に力を入れすぎず、この宇宙旅行へ付き合っていけるんですね。
ところが、その明るい冒険の背景へ目を向けてみると、意外なほど重たいSF設定が置かれています。
その象徴となっているのが、人間の意識や記憶を機械へ保存し、失われた肉体を複製する「IM」と呼ばれる技術です。マキとオムラ自身も、幼い頃に命の危機へ直面した際、この技術によって現在まで生き延びてきたという過去を持っています。
つまり、目の前では可愛らしい2人が宇宙を飛び回っている一方、その根底には「人間はどこまで人間なのか」「肉体を失っても生き続けることを選ぶのか」といった、かなりSFらしい問いが潜んでいるわけです。
この組み合わせには、どこか昔のSFアニメを思わせるものがあります。表面的には少年少女の冒険として見やすく作られているのに、その世界を支えている設定を掘り下げていくと、生命や記憶、人間の存在そのものに関わる話が顔を出してくる。先ほど触れたレトロアニメ調のビジュアルとも噛み合っているため、「見た目だけ昔のアニメに寄せた作品」ではなく、物語の題材まで含めて当時のSF作品らしい空気を作ろうとしていることが感じられます。
だからこそ、ストームウォールとは結局何なのか、IMという技術によってこの世界はどう変わったのか、そしてマキとオムラの冒険がどこへ行き着くのかと、物語そのものへの興味も自然と強くなっていきます。
ただ、ここには少し惜しいところもありました。
設定そのものには先を知りたくなるだけの魅力がある一方、それを一つの物語としてプレイヤーへ伝えていく部分については、もう少し時間をかけて描いてほしかったところがあります。『オービタルズ』のシナリオを振り返ったとき、この**「設定は面白いのに、その面白さを十分に味わう前に話が進んでしまう」**という感覚は、最後まで少なからず残りました。
ただしシナリオは惜しい。魅力的な設定に物語の積み重ねが追いついていない
先ほど触れたように、『オービタルズ』には生命や記憶にまで踏み込んだSF設定が用意されており、世界そのものには「もっと詳しく知りたい」と思わせるだけの魅力があります。
だからこそ惜しく感じるのが、その設定を物語として見せていく過程です。
マキとオムラが冒険へ出る目的は、崩壊の危機にあるステーションを救うため、各地に残された3つのリアクターカセットを集めること。ゲームを進めるうえで「どこへ向かい、何をすればいいのか」は分かりやすく、物語の大筋で迷うことはほとんどありません。
ただ、その目的が明確であることと、2人の行動に感情移入できることは、また別の話なんですね。
そもそもマキとオムラが命を懸けて守ろうとしているステーションがどのような場所なのか、そこで暮らす人々とどんな関係を築いてきたのか、2人にとって故郷がどれほど大切なのかといった部分は、それほど深く描かれません。そのため、「故郷を救わなければならない」という状況は理解できても、プレイヤー自身が2人と同じ強さで「この場所を絶対に守りたい」と思えるところまでは、なかなか気持ちが追いつかないところがあります。
これは設定の説明が少ないから物語を理解できない、という話とも少し違います。
むしろ気になったのは、プレイヤーがその世界や登場人物へ愛着を持つための時間が足りないことでした。
マキとオムラは冒険中にかなり頻繁に会話します。それなら、その何気ないやり取りの中へ故郷での思い出や住民との関係、IMによって生き延びてきた2人が現在の自分たちをどう捉えているのかといった話を少しずつ混ぜていけば、同じ場面でも受け取り方はかなり変わったはずです。
ところが実際には、物語が終盤へ差しかかってから、それまで断片的だった設定や登場人物の事情が短い時間の中で次々と明かされていきます。展開そのものには驚かされる部分があるものの、その事実を受け止めるための積み重ねが十分ではなく、「そうだったのか」と理解した直後には、もう次の出来事が始まっているような感覚が残ります。
中には、終盤になって初めて伏線らしい情報が提示され、それほど時間を置かずに回収される場面もあります。
本来なら、序盤や中盤で何気なく見聞きしていた出来事が終盤になって別の意味を持ち、「あのときの話はここにつながっていたのか」と過去の冒険を振り返りたくなる。そうした積み重ねがあれば、設定をすべて言葉で説明しなくても、物語には自然と厚みが出てきます。
『オービタルズ』の場合、その材料自体はかなり面白いんです。
人間の意識や記憶を機械へ保存するIM、迫り来るストームウォール、崩壊寸前の故郷、そして特殊な経緯によって生き続けているマキとオムラ。これだけの要素が揃っているからこそ、もう少し早い段階から情報を散りばめて、それぞれの出来事をプレイヤーの中で結びつける時間があれば、終盤の印象もかなり違ったように感じます。
もちろん、何から何まで説明してしまえば良いわけでもありません。むしろ、すべてを語り切らずに余韻を残す方向性そのものは、昔のSFアニメを思わせる本作の雰囲気ともよく合っています。
ただ、説明しないことで想像の余地を残すことと、物語を受け止めるための材料まで不足してしまうことは別です。『オービタルズ』はその境界で少し後者へ寄ってしまった印象があり、世界観に惹かれれば惹かれるほど、「ここをもう少し知りたかった」という気持ちも強くなっていきました。
とはいえ、こうしたシナリオ面の惜しさが、そのまま冒険全体の楽しさを失わせているわけではありません。
というのも、『オービタルズ』で実際にプレイヤー同士の会話が最も活発になるのは、物語を眺めているときではなく、自分たちの手でステージを攻略しているときだからです。水を使うのか、フックで動かすのか、それとも相手に先へ進んでもらうのか。2人で状況を見ながら役割を考え、うまく噛み合った瞬間には、このゲームが協力プレイ専用として作られた意味もしっかり感じられます。
声を掛け合って突破する2人協力プレイは素直に楽しい
シナリオにはもう少し踏み込んでほしかった部分がある一方、実際に2人でステージを進んでいる時間には、『オービタルズ』ならではの楽しさがきちんとあります。
ゲームプレイの中心となるのは、3人称視点のアクションと、2人がそれぞれ異なる道具を使って突破していく謎解きです。代表的なものだけでも、水を噴射する「リキッドランチャー」、離れた物体をつかんで引き寄せる「スクラップフック」、装置へエネルギーを送ったり障害物を破壊したりできるレーザーなどが用意されています。
面白いのは、これらを使って1人で何でも解決するのではなく、基本的には**「相手が行動できる状況をもう1人が作る」**という関係になっていることです。
たとえば熱された地面を片方が水で冷やし、その間にもう片方が先へ渡って扉を開ける。スクラップフックで足場を動かし続けている間に相手が飛び移ったり、レーザーを反射させる角度を調整しながら、もう1人が光を目的の場所まで導いたりと、自分の操作だけを見ていても先には進めません。
ここで自然と必要になってくるのが、プレイヤー同士の会話です。
「そっちに何かある?」「今から動かすから乗って」「もう少し右」といった具合に、相手の画面で何が起きているのかを確認しながら動く場面がかなりあります。特に2人が別々の場所へ分断されると、自分からは見えない場所にいる相手が何をしようとしているのかまで考えなければならず、ただ同じステージを並んで攻略するゲームとは違った感覚が生まれてきます。
この仕組みがうまく噛み合ったときは、やはり気持ちいいんです。
片方だけが正解を知っていれば突破できるわけではなく、2人が状況を理解して、それぞれ必要な操作をした結果として仕掛けが動く。少し手間取った場面ほど、タイミングが合って先へ進めた瞬間には「今のはちゃんと2人で解いたな」という手応えが残ります。
宇宙船を使ったパートになると、その感覚はさらに分かりやすくなります。1人が機体を操縦し、もう1人が砲台を担当するため、「もう少し右」「そこで止めて」と声を掛けながら位置を合わせていくことになり、操作の上手さだけではなく意思疎通そのものが攻略の一部になっています。
また、本編がずっと同じ形式の謎解きだけで続くわけでもありません。
途中にはシューティングや横スクロール形式へ視点が変化するアクション、巨大な敵とのボス戦なども挟まれますし、拠点となる宇宙船にも細かな遊びが用意されています。冒険中に出会った不思議な生き物やロボットが住みつくことで、最初は寂しかった船内が少しずつ賑やかになっていくのも、先へ進むちょっとした楽しみになっていました。
さらに、ステージ内に隠されたデータを見つければ、2人で遊べるミニゲームも解放されていきます。本編では力を合わせていた相手と今度はスコアを競う側に回れるので、攻略から少し離れて遊べる息抜きとしても機能しています。
こうして振り返ると、『オービタルズ』は短い冒険の中でも、できるだけ多くのシチュエーションを見せようとしていることが分かります。新しい場所へ行けば景色が変わり、使う道具や置かれている状況も変化するため、「次は何をさせてくれるんだろう」と思わせるサービス精神はかなり強く感じました。
ただ、ここで一つ引っかかってくる部分があります。
遊んでいる最中は次々と違う出来事が起きているはずなのに、ある程度進めていくと、**「見た目ほど遊び方そのものは変わっていないのではないか」**という感覚も少しずつ出てくるんです。
『オービタルズ』には確かに多くのアクティビティがあります。それでも、その「数の多さ」がそのまま「遊びの幅広さ」につながっているかというと、ここは分けて考える必要がありました。
遊びは多彩なのに、なぜ途中から「同じことをしている」と感じるのか
先ほど触れたように、『オービタルズ』にはかなり多くのアクティビティが詰め込まれています。ステージごとに景色は大きく変わりますし、宇宙船を操縦したかと思えばシューティングが始まり、横スクロールのアクションやボス戦まで用意されているため、決して変化の少ないゲームではありません。
それなのに、しばらく遊んでいると不思議と「さっきと似たことをしているな」と感じる場面が増えてきます。
その理由を考えてみると、目の前で起きている出来事は変化していても、プレイヤーに求められる行動の基本形があまり変わっていないことが大きいように感じました。
たとえば、道具を使って対象物を動かす、足場を作る、片方が装置を操作している間にもう片方が先へ進む。場所や使用するギミックこそ違いますが、根っこの部分まで見ていくと、この基本的な役割分担を繰り返す場面がかなりあります。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ゲームには基本となるルールが必要ですし、序盤で覚えた操作を後半でも活用できることは、遊びやすさにもつながります。
ただ、協力プレイを軸にしたゲームの場合、個人的には「覚えたことをどう組み合わせていくのか」という部分に面白さが出てくると思っています。
最初は水をかけるだけだった道具が、別の能力と組み合わせることでまったく違う使い方を見せる。序盤では単純だった役割分担が、ゲーム後半になると2人が同時に状況を判断しなければ突破できない形へ発展する。そうやって最初に覚えたルールの意味が少しずつ変わっていけば、同じ道具を使い続けていても「できることが増えている」という感覚につながります。
『オービタルズ』にも複数の道具を組み合わせる発展的な仕掛けは登場するのですが、残念ながら、この広がりがそれほど強くありません。
むしろ後半になるにつれて、パズルそのものが奥深くなるというより、仕掛けの構造や次に何をすればいいのかが分かりにくくなっていく場面もあります。複雑になっていることは確かなのに、プレイヤー側が考える内容や操作の幅まで同じように広がっているわけではない。このあたりに、遊んでいて少し引っかかる部分がありました。
プラットフォームアクションについても、似た印象があります。
ジャンプや回避といった基本操作そのものは難しくなく、失敗してもすぐに復帰できるため、アクションが得意ではない人でも遊びやすい作りになっています。一方で、動く床や消える足場を順番に渡っていくような場面が繰り返されるため、進めるほどアクションが発展していく感覚は薄めです。
さらに、距離感や着地点が読みづらかったり、地形に引っかかって思うように動けなかったりする場面もありました。2人の連携が噛み合わなかったから失敗したのであれば、「次はタイミングを合わせよう」と相談すること自体が遊びになりますが、キャラクターの挙動によって落下すると、そこに残るのは協力ゲームとしての悔しさとは少し違います。
ここまで考えると、『オービタルズ』が単純に「遊びの少ないゲーム」ではないことも分かってきます。
むしろ逆で、アイデア自体はかなり豊富なんです。
次々とロケーションを変え、宇宙船やシューティング、謎解き、プラットフォーム、ミニゲームまで盛り込んでいる。そのサービス精神は素直に評価したいですし、短い作品の中でプレイヤーを飽きさせないよう、できるだけ多くのものを見せようとしていることも伝わってきます。
それでも、「いろいろな場面を体験した」という印象に比べて、「いろいろな遊び方を覚えた」という手応えは弱い。
この違いが、『オービタルズ』の協力プレイを評価するときにかなり重要だと感じました。見た目やシチュエーションの変化だけなら十分に楽しませてくれる一方、2人で考え、試し、できることを増やしていくゲームとして見ると、もう一段階先まで発展してほしかったところです。
そして、この問題がよりはっきり表れるのが、後半の謎解きです。難しくなったから悩むというより、「そもそもゲーム側が自分たちに何を求めているのか」が分からず、2人で立ち止まってしまう。そんな場面が少なからず出てきます。
謎解きで悩むのではなく「何をすればいいのか」で迷ってしまう
先ほど触れた「遊びが思ったほど深まっていかない」という感覚は、後半の謎解きになると、また少し違った形で気になってきます。
そもそも協力型ゲームの謎解きで、2人揃って答えが分からず立ち止まること自体は、決して悪いことではありません。「こっちを動かしたら何か変わるんじゃないか」「いや、先にそっちへ行ってみよう」と話し合い、試しては失敗しながら正解へ近づいていく。その過程まで含めて、1人用のパズルとは違った面白さがあります。
『オービタルズ』でも、2人で相談しながら突破方法を探す場面は数多く用意されています。ただ、後半になるにつれて気になったのが、「どう解くのか」で悩んでいるのか、それとも「何をすればいいのか」が分からないだけなのか、その境界が曖昧になってくることでした。
たとえば目の前に新しい仕掛けが現れたとき、今持っている道具のどれが反応するのか、2人のうちどちらが先に行動すればいいのか、それ以前にどこへ干渉できるのかが分かりにくい場面があります。その結果、仕組みを理解したうえで解法を考えるというより、とりあえず周囲へ道具を使いながら、ゲーム側が想定している反応を探すような時間が増えてしまいます。
ここは、実際に遊んでいると意外に大きな違いです。
難しいパズルなら、解けなかったとしても「あと少しで分かりそう」という感覚がありますし、正解へたどり着いた瞬間には、それまで考えていたことが一本につながります。ところが、何が問題として提示されているのか自体が読み取りにくいと、正解を見つけても「なるほど、そういう仕組みだったのか」という気持ちよさより、「ここにこれを使えばよかったのか」という感覚のほうが残りやすいんですね。
もちろん、画面上へ矢印を大量に表示したり、キャラクターに答えを喋らせたりすれば良いという話でもありません。何をすればいいのか最初から全部教えられてしまえば、今度は2人で相談する意味そのものが薄れてしまいます。
必要なのは答えではなく、考え始めるための手掛かりなのだと思います。
「あの装置が怪しい」「この道具なら反応しそうだ」とプレイヤー自身が気づき、そこから2人で役割を考えていければ、答えを直接教えられなくても攻略は成立します。ところが『オービタルズ』では、その最初の手掛かりが弱い場面があり、謎を解くための試行錯誤と、正解となる操作を探す総当たりが混ざってしまっている印象を受けました。
そして、もう一つ惜しいのが、2人の役割に偏りが生まれる場面があることです。
基本的には両方のプレイヤーへ何らかの操作が求められるものの、一方が仕掛けを動かしている間、もう一方が先へ進むという構造が繰り返されることで、片方は移動やジャンプ、周囲の確認といった複数の操作をこなしているのに、もう片方は装置を動作させたまま待っているだけ、という状況も出てきます。
これも一度や二度なら、役割分担としてまったく気になりません。
むしろ「自分がここを支えているから相手が進める」という構造は協力ゲームらしいものです。ただ、それが何度も続いてくると、同じ場面へ参加している2人の間で、プレイしている密度に差が出てしまいます。
ここまで遊んでくると、『オービタルズ』に足りないものが少しずつ見えてきます。
仕掛けの数が少ないわけでも、2人で協力する場面が用意されていないわけでもありません。実際、タイミングを合わせて仕掛けを突破した瞬間には、このゲームならではの楽しさがあります。
惜しいのは、その仕掛けをプレイヤーへどう理解させ、2人それぞれに何を考えさせ、最後にどう協力させるのかという部分です。
アイデアは面白いのに、それを遊びとして気持ちよく理解させるところで少し引っかかってしまう。この差を考えていくと、どうしても比較したくなるのが、同じく2人協力を前提として作られた『It Takes Two』です。
『It Takes Two』と比べて見えてくる、オービタルズに足りなかったもの
ここまで『オービタルズ』の協力プレイについて触れてきましたが、このジャンルを遊んだことがある人なら、『It Takes Two』を思い浮かべる場面は少なくないと思います。
もちろん、両作品を単純に並べて「どちらが優れているのか」と比べるのは少し乱暴です。開発規模も作品として目指しているものも異なりますし、『オービタルズ』に『It Takes Two』と同じ物量を求めるべきではありません。
ただ、本作のディレクターを務めるジェイコブ・ルンドグラン氏がHazelight Studiosに在籍し、『A Way Out』『It Takes Two』『Split Fiction』などの開発に携わっていた経歴を考えると、両者のゲームデザインを完全に切り離して考えるのも難しいところです。
では、『オービタルズ』を遊んでいて感じた物足りなさは、具体的にどこから生まれているのか。
改めて考えてみると、大きな違いは**「新しい遊びを見せること」と「覚えた遊びを発展させること」**にあるように感じます。
『It Takes Two』のような協力型ゲームでは、新しい能力を手に入れると、まず比較的安全な場所でその使い方を試す機会が与えられます。そこで「これはこういう能力なのか」と理解したところから、今度は相手の能力と組み合わせる場面が登場し、さらに進めばアクションやボス戦の中で応用を求められる。こうして一つの仕組みを段階的に発展させることで、プレイヤー側にも「自分たちが少しずつ上手くなっている」という感覚が生まれます。
しかも重要なのは、単にギミックの種類が多いことではありません。
地形やカメラ、色の使い方、キャラクターのセリフなどを通して、「次はここを見ればいい」「この能力が使えそうだ」という手掛かりが自然に与えられるため、答えそのものを教えられなくても、自分たちで仕組みを理解した感覚が残ります。だからこそ、2人で相談して突破できたときに「ゲームの正解を見つけた」というより、「自分たちで解いた」という達成感につながるわけです。
対して『オービタルズ』は、個々のアイデアやシチュエーションを見せることにはかなり積極的です。
新しい場所へ行くたびに景色が変わり、違った仕掛けが現れ、ときにはゲームそのものの見せ方まで変化する。次から次へと何かが起きるので、作り手が「こんなこともやらせたい」「次はこれを見せたい」と、たくさんのアイデアを詰め込んでいることは伝わってきます。
ところが、一つの仕組みを理解したあと、それを2人でどう発展させていくのかという部分は弱めです。
新しい仕掛けを一つ攻略したら、次の仕掛けへ。その次を終えたら、また別のものへと進んでいくため、それまで覚えてきたことが積み重なり、後半になって一つの大きな協力プレイへつながっていく感覚はあまり強くありません。
この違いは、遊んでいる最中にはそれほど気にならなくても、数時間続けてプレイすると徐々に効いてきます。
新しいロケーションへ到着した瞬間には「今度は何が始まるんだ」とワクワクする。それでも攻略を始めてみると、片方が装置を操作し、もう片方が移動するという、それまでと似た役割分担へ戻ってくる。見た目は大きく変化しているのに、プレイヤーが考えていることはそれほど変わっていないため、次第に作業的な感覚が顔を出してしまいます。
だからといって、『オービタルズ』に協力ゲームとしての面白さがないわけではありません。
宇宙船を2人で動かした場面のように、お互いの状況を確認しながら声を掛け、タイミングがぴったり合った瞬間には、このゲームだからこその達成感があります。問題は、その感覚をもっと多くの場面で、さらに一段深い形へ発展させられたのではないか、というところです。
言い換えるなら、『オービタルズ』に足りないのはアイデアの数ではなく、豊富なアイデアを「2人だから面白い遊び」へ変えていくための磨き込みなのだと思います。
これは本作に対する評価として、かなり惜しい部分でもあります。なにしろ、世界観や映像表現については、他の協力型ゲームと比べても埋もれないだけの個性があります。そこへゲームプレイまで同じ密度で作り込まれていたら、『オービタルズ』という作品の印象はさらに強いものになっていたはずです。
それだけに、『It Takes Two』の代わりになる作品を期待して遊ぶのか、それとも「レトロSFアニメの世界を2人で旅する作品」として楽しむのかで、本作を遊び終えたときの評価はかなり変わってきます。
オービタルズはどんな人におすすめ?クリアして感じた総合評価
ここまで見てきたように、『オービタルズ』は評価するポイントによって、かなり印象が変わる作品です。
2人協力型のアクションゲームとして細かく見ていけば、仕掛けの発展性やプレイヤーへの情報の伝え方、2人それぞれに与えられる役割のバランスなど、まだ磨き込めたと感じる部分は少なくありません。特に『It Takes Two』のように、次々と新しい遊びを覚えながら、それを2人で応用していくタイプの協力ゲームを期待すると、物足りなさが残る可能性はあります。
ただ、それだけで『オービタルズ』を評価してしまうのも、少し違うように感じます。
というのも、本作で最後まで強く残るのは、パズルがどれだけ複雑だったか、アクションがどれだけ歯応えのあるものだったかという記憶より、「あの世界を2人で冒険した」という体験そのものだからです。
1980年代から90年代の日本製SFアニメを思わせる世界を歩き、奇妙な機械が並ぶ施設を探索し、ときには2人で宇宙船を操縦する。冒険の途中で出会った生き物やロボットが宇宙船へ住みつき、最初は寂しかった船内が少しずつ賑やかになっていくところも含めて、短い旅の中に思い出を残そうとする作りはかなり丁寧です。
そして、その中心には常にマキとオムラがいます。
2人は世界を救う使命を背負った主人公ではあるものの、必要以上に悲壮感を漂わせることはなく、冗談を言ったり、一緒に歌ったりしながら宇宙を進んでいきます。この掛け合いがあるからこそ、プレイヤー側も「難しいミッションを攻略している」というより、気心の知れた相手と少し不思議な宇宙旅行をしているような感覚で最後まで付き合えるところがありました。
そう考えると、『オービタルズ』と特に相性が良いのは、完成度の高いパズルゲームを攻略したい人よりも、好きな相手と一緒に一つの世界を冒険する時間を楽しみたい人だと思います。
アクションについても、ジャンプや回避に極端な難しさはなく、失敗した場合の復帰も早めです。協力プレイ専用という時点で一緒に遊ぶ相手は必要になりますが、その条件さえクリアできるなら、普段それほどアクションゲームを遊ばない相手とも比較的入りやすい作りになっています。
一方、歯応えのある協力パズルを求めている人や、『It Takes Two』『Split Fiction』のように次々と新しい仕組みが登場し、それまで覚えた操作がさらに発展していくゲームを期待している人は、少し慎重に考えたほうがいいかもしれません。
『オービタルズ』にもアクティビティ自体は豊富に用意されています。ただ、その豊富さが必ずしもゲームプレイの深さへ直結しているわけではなく、後半まで進めても基本となる役割分担は大きく変化しません。さらに、謎解きでは解法を考える以前に「何に反応するのか」が読み取りにくい場面もあるため、純粋な協力アクションとして完成度を求めると、気になるところは出てきます。
それでも、クリアしたあとに『オービタルズ』を振り返ると、不思議と欠点ばかりが残る作品ではありません。
むしろ、「この世界をもっと見たかった」「この設定をもっと掘り下げてほしかった」「この2人でもう少し冒険したかった」という気持ちが残ります。
これは裏を返せば、それだけ本作のビジュアルやキャラクター、世界設定に人を惹きつけるものがあったということでもあります。ゲームプレイの設計まであと一段磨き込まれていれば、かなり強烈な一本になっていたのではないか。そう思えてしまうからこそ、本作に対しては「悪かった」よりも「惜しかった」という言葉のほうが、個人的にはしっくりきます。
圧倒的な映像表現で作られたレトロSFアニメの世界を、誰かと一緒に冒険してみたい。
そんな魅力に少しでも惹かれたのであれば、『オービタルズ』には触れてみる価値があります。協力アクションとして完璧な作品ではないものの、2人で一本のアニメを最後まで駆け抜けたような体験は、本作だからこそ味わえるものになっています。
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