ゲームをどれだけ早くクリアできるか、そのタイムを競い合う「RTA」。プレイヤーが迷いなくキャラクターを操作し、普通に遊んでいれば数十時間かかるゲームを驚くような速さでクリアしていく姿を見たことがある人も多いと思います。
ただ、RTAの世界を深く見ていくと、単純に「ゲームが上手い」という言葉だけでは説明できないところまで来ています。移動ルートを徹底的に突き詰めたり、通常プレイではまず遭遇しないバグを利用したりするのはまだ序の口。ゲーム機の時計を操作する、本体の個体差を調べる、さらには本体の温度まで気にするなど、「それってもうゲームの攻略なの?」と言いたくなる方法まで本気で研究されているのです。
なぜ、そこまでするのか。答えはとてもシンプルで、クリアタイムを1秒でも縮められる可能性があるからです。
普通にゲームを遊んでいると、ロード時間が数秒短くなったところで、それほど気にはなりません。ところがRTAでは、その数秒が記録を左右します。操作によって縮められる時間を突き詰めた先では、ロード時間やゲーム機の仕様、場合によっては現実世界の時間までが「攻略できる対象」になっていくわけです。
ここが、RTAを見ていて面白いところでもあります。
「この壁をどうやって突破するか」ではなく、「そもそも壁を無視できないか」。「このイベントを早く終わらせる」ではなく、「イベント自体を発生させずに済まないか」。そんな発想を何度も積み重ね、普通のプレイヤーなら気にも留めないゲームの挙動まで調べていく。その結果として、ときには開発者すら想定していなかったような攻略法へたどり着きます。
そして、その探究心が行き着くところまで行くと、ディスクの汚れを利用したり、ゲーム機を温めたり、目的のゲームをクリアするために別のゲームを起動したりするという、初めて聞いた人には意味が分からない光景まで生まれてきます。実際、別タイトルで作ったコードを利用して『マリオストーリー』のクリアにつなげるという、普通の攻略という言葉では収まりきらない手法まで研究されています。
ここまで来ると、RTAは単なる「早解き」というより、ゲームという仕組みそのものを相手にした研究に近いのかもしれません。
今回は、そんなRTAの世界で実際に編み出されてきた攻略法の中から、思わず「そこまでやるのか……」と言いたくなる奇妙な方法を5つ取り上げていきます。
夏時間まで攻略に利用?『スーパーマリオ オデッセイ』のDSTA
RTAでタイムを縮めると聞けば、まず思い浮かぶのは操作テクニックやバグ技かもしれません。ところが『スーパーマリオ オデッセイ』では、ゲームの外にある**「夏時間」という現実世界の仕組みまでタイム短縮に利用する方法**が編み出されています。
本作では、各地にある「パワームーン」を集めることでストーリーが進んでいきます。その入手方法はボスを倒す、ミニゲームをクリアするといったものだけではなく、ステージに置かれた植木鉢へ種を運び、花が咲くまで待つというものもあります。
問題になるのが、この「待つ」という部分です。種を植えてから自然に成長するまでには20分ほどかかるため、普通に遊んでいるなら別の場所を探索して、時間が経ってから戻ってくれば済みます。しかし、1秒単位でクリアタイムを競っているRTAでは、20分もの待ち時間をそのまま受け入れるわけにはいきません。
もちろん、ゲーム内にもすぐ成長させられるケースはあります。近くに水を出せるキャラクターがいれば、それをキャプチャーして植木鉢へ直接水をかければ問題ありません。それが使えない場所では、Nintendo Switch本体の時計を進めて成長を促す方法もあります。
ただ、本体設定を開いて時計を変更するとなれば、その操作自体に時間がかかります。そこでRTA走者が目をつけたのが、北米やヨーロッパなどで採用されている**夏時間(サマータイム)**でした。
夏時間が始まる地域では、特定のタイミングになると時計が一気に1時間進みます。そしてNintendo Switchを該当するタイムゾーンに設定しておけば、本体側でも同じように時間が進むため、これを種の成長判定に利用できるというわけです。種を植えた直後に夏時間への切り替えが発生するよう、あらかじめ時計とRTAのルートを調整しておけば、設定画面を開いて手動で時間を変更する必要さえありません。
このテクニックは**「DSTA」**と呼ばれており、事前に時間を調整したうえで攻略ルートを逆算しておくことで、夏時間への切り替わりそのものをRTAのチャートへ組み込んでしまいます。
ゲーム内に用意されたアイテムでもなければ、特殊なアクションを成功させる技でもありません。それどころか、日本で生活していると普段ほとんど意識することのない制度まで「タイムを縮められるなら使える」と考えてしまうわけです。
**現実世界で時計が1時間進むなら、その1時間もゲーム攻略に利用すればいい。**そう考えると理屈自体は分かるものの、そこに目をつけて実際のRTAへ組み込む発想はかなり独特です。
1秒を削るためなら、ゲームの中だけを見ている必要はない――。RTAという遊びが普通のゲーム攻略とは少し違う世界にあることがよく分かるテクニックです。
ディスクを汚したほうが速くなる?『スポンジ・ボブ』で発見された逆転の発想
夏時間というゲームの外側にある仕組みまで利用するだけでも十分に変わっていますが、RTA走者の発想はそれだけでは終わりません。今度は、普通なら少しでも速くしたいはずのゲームの読み込みを、わざと遅くするという方法が登場します。
舞台となるのは、2003年に発売された『スポンジ・ボブ:バトル・フォー・ビキニ・ボトム』のオリジナル版です。
ゲームを最速でクリアしようとすると、プレイヤーの操作ではどうにもならない「ロード時間」が気になってきます。どれだけ完璧にキャラクターを動かしても、ゲーム側がデータを読み込んでいる間は待つしかありません。そのため、複数のゲーム機で発売されているタイトルなら、少しでもロードが速いハードを選ぶこと自体がRTAのタイム短縮につながります。
本作はゲームキューブ、PS2、Xboxなどで発売されており、その中でもロードが短かったのがXboxでした。しかも、同じXboxでも本体のバージョンによって読み込み速度に違いがあるため、さらに検証を重ねて「どの本体が速いのか」まで調べられていきます。
ここまでは納得できる話です。ロードが短い本体を使えば、その分だけクリアタイムも縮まる。ところが、実際に読み込み速度を追求していくと、思わぬ問題が出てきました。
本作のRTAでは、ゲームに意図的な処理落ちを発生させ、その隙を利用して壁をすり抜ける「ラグクリップ」というテクニックが使われています。ところが読み込み性能の高い本体では処理がスムーズすぎるため、肝心のラグが起こりにくくなり、ラグクリップの成功率まで下がってしまったのです。
ロードは速いほうが有利なのに、速すぎると重要なテクニックが使いにくくなる。
なんとも厄介な状況ですが、この問題を解決するきっかけになったのが、ゲームディスクに偶然付着した指紋や手汗などの汚れでした。
検証を続けていたプレイヤーが、なぜかラグクリップの成功率が上がっていることに気づきます。その原因を探っていったところ、ディスクに付着した汚れによって読み込みが遅くなり、それがラグを発生させることにつながっていたと考えられたのです。
普通にゲームを遊ぶなら、ディスクが汚れていればきれいに拭き取ります。読み込みが遅くなれば不具合を疑いますし、できるだけ正常な状態で遊びたいと思うのが自然です。
ところがRTAでは、その「読み込みが遅くなる」という現象さえ利用価値があるなら話が変わります。ロード時間そのものは短くしたい一方、壁を抜ける瞬間だけは処理を遅くしたい。つまり、速ければ速いほどいいのではなく、自分たちに都合のいいタイミングでゲームを遅くできることにも価値があるわけです。
そこからディスクを汚して読み込み状態を変える検証へ発展していくのですが、これはゲーム機やディスクの故障にもつながりかねない危険な方法です。実際に真似して試すようなものではありません。
それでも、「ロード時間を短くするにはどうするか」と考えていたはずが、最終的に「必要な場所では読み込みを遅くすればいい」という結論へ向かっていくのがRTAらしいところです。
**ゲームが速く動きすぎて困るなら、ディスク側から遅くしてしまえばいい。**普通の攻略ではまず出てこない逆転の発想ですが、1秒を争う世界では、ゲーム機の性能だけでなくディスクの状態まで攻略要素になってしまいます。
22年間なぜ見つからなかった?『ポケモン ファイアレッド・リーフグリーン』のクレミースキップ
ディスクの汚れまで攻略に利用する話を見ていると、RTAのテクニックは特殊な環境や複雑なバグがあって初めて成立するものに思えてきます。ところが反対に、誰でも簡単に再現できるほど単純なのに、長い間見つからなかった技も存在します。
その一例が、2004年に発売された『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』で発見された「クレミースキップ」です。
本作ではポケモンを捕まえると、捕獲成功後に数秒間のファンファーレが流れます。普通に遊んでいるぶんには気にも留めない演出ですが、RTAでは事情が違います。何度もポケモンを捕獲するルートなら、そのたびに発生する数秒が積み重なり、最終的なクリアタイムにも影響してくるからです。
そこで発見されたのが、捕獲後のファンファーレを途中で飛ばし、通常より早く操作へ戻る方法でした。
ここまで聞くと、特定のフレームに合わせて複雑なコマンドを入力するような技を想像するかもしれません。しかし、実際の手順は驚くほど単純です。ポケモンを捕まえた直後にLボタンかRボタンを押してヒント画面を開き、すぐに閉じる。基本的にはこれだけで、最大161フレームを短縮できるとされています。
操作が難しすぎて誰も成功できなかったわけではありません。それどころか、やり方を知ってしまえば「なぜ今まで見つからなかったのか」と感じるくらいシンプルです。
さらに面白いのは、この技が新しい移植環境で偶然生まれたものではなかったこと。2026年のNintendo Switchへの移植をきっかけに注目されたものの、調べてみると2004年に発売されたオリジナル版でも同じ現象を再現できたとされています。つまり、およそ22年間にわたってゲームの中に存在していたにもかかわらず、タイム短縮に使えるテクニックとして見過ごされていたことになります。
『ポケモン』ほど多くの人に遊ばれてきたシリーズを考えると、これはなかなか不思議な話です。発売直後だけ研究されて終わるような作品ではありませんし、長い年月の中で数え切れないほどのプレイヤーが同じ捕獲画面を見てきたはず。それでも、「捕獲直後にヒント画面を開いて閉じると何が起きるのか」という一点が、RTAのタイム短縮につながる形では長らく拾われなかったわけです。
そして、このテクニックを発見したプレイヤーの名前にちなんで付けられたのが「クレミースキップ」という呼び名です。
RTAというと、既に知られているバグや最適なルートをどれだけ正確に再現できるかという競技に見えることがあります。ただ、実際には発売から何十年も経ったゲームから、まだ誰も気づいていなかった短縮方法を探し出す余地が残されているのも、この世界の面白いところです。
最新作だから新しい発見があるとは限らない。何百万人ものプレイヤーが遊んできた昔のゲームであっても、見方を少し変えれば記録を縮める方法が眠っている――。クレミースキップは、RTAがプレイヤースキルだけではなく、長年にわたるゲーム研究によって進化し続けていることがよく分かる発見です。
ファミコンをホットプレートで温める!?『ドラゴンクエストIII』電源バグRTA
発売から22年も見過ごされていた操作がタイム短縮につながる一方で、ゲーム機そのものを徹底的に調べた結果、普通では考えられない攻略法へたどり着いたケースもあります。
それが、ファミコン版『ドラゴンクエストIII』のRTAです。
RTAにはさまざまなカテゴリーがあり、どこまでバグの利用を認めるかによってルールも変わります。その中でも、使えるものを最大限に利用してクリアを目指すカテゴリーで重要になってくるのが、いわゆる**「電源バグ」**でした。
やり方だけを聞くと、かなり強引です。王様に話しかけてセーブした直後、ファミコン本体の電源をオン・オフすることでセーブデータを意図的に壊し、通常ではあり得ない状態を作り出します。
これがうまくいくと、ゲームを始めて間もない段階にもかかわらずキャラクターのレベルが極端に高くなっていたり、本来ならストーリーを進めなければ入手できない重要アイテムを持っていたりと、通常の攻略手順そのものを大幅に飛ばせる状態が生まれます。
ただし、電源を切れば毎回同じデータが作られるわけではありません。
どのような状態になるかはファミコン本体によって個体差があり、記録を狙うプレイヤーにとっては**「電源バグに適した本体を探す」ことまでRTAの準備に含まれてきます。** そのため、複数のファミコンを用意して検証し、狙った結果を出しやすい個体を探していくという、ゲームを始める前から大掛かりな研究が必要になっていました。
ところが、この電源バグにはもう一つ、さらに意外な要素が関係していたとされています。
ファミコン本体の温度です。
きっかけになったのは、あるプレイヤーが引っ越した後、それまでと比べて電源バグの成功率が下がったことでした。そこで引っ越す前の部屋に近い室温へ調整して試したところ成功率が上がり、本体の温度が結果に影響している可能性が見えてきたのです。
普通なら、「今日はバグがうまくいかないな」で終わってしまいそうな話です。それを引っ越し前後の環境の違いまで疑い、室温を合わせて再検証するあたりに、RTA走者の執念がよく表れています。
そして、温度が関係しているなら、次に考えることは当然「狙った温度へ調整できないか」です。
コミュニティではさまざまな方法で本体を温めたり冷やしたりする検証が進められ、その中で強烈なインパクトを残したのが、2020年の「RTA in Japan」で披露された光景でした。
ファミコンをホットプレートで温めながら『ドラゴンクエストIII』をプレイする。
文章だけを見ると、とてもゲームの攻略をしているようには思えません。しかし、ホットプレートは料理をするためではなく、電源バグを狙いやすい状態へ近づけるための補助として使われていました。
もちろん、単純に「ファミコンは温めれば速くなる」という話ではありません。狙っているのはあくまで電源バグを利用しやすい状態を作ることであり、そのために本体の温度まで調整対象になったという流れです。
それでも、ゲームの攻略を突き詰めた結果として、コントローラーの操作ではなく**「ファミコンを何度に近づけるか」まで考え始める**のですから、かなり異様な世界に見えてきます。
最初に紹介した『スーパーマリオ オデッセイ』では現実世界の時間が攻略要素になり、『スポンジ・ボブ』ではディスクの状態まで利用されました。そして『ドラゴンクエストIII』では、ついにゲーム機そのものの温度まで攻略対象になってしまったわけです。
1秒でも記録を縮められる可能性があるなら、コントローラーの外側にあるものまで調べてみる。ホットプレートの上に置かれたファミコンという奇妙な光景は、そんなRTAの探究心が行き着いた象徴的な例なのかもしれません。
『マリオストーリー』をクリアするために『時のオカリナ』を起動する
夏時間を利用し、ディスクの状態を変え、ファミコン本体の温度まで調整する。ここまででも十分に「そこまでやるのか」と感じますが、最後に紹介する方法は、発想そのものがさらに一段飛び抜けています。
『マリオストーリー』を最速でクリアするために、まず『ゼルダの伝説 時のオカリナ』をプレイする。
何を言っているのか分からないかもしれませんが、本当に別のゲームを利用して『マリオストーリー』のクリアにつなげるという方法です。
この奇妙な攻略を理解するうえで欠かせないのが、「ACE」と呼ばれるテクニック。これは任意のコードを実行させる手法で、うまく利用すればゲーム本来の進行を無視して、エンディングへ到達するための処理を呼び出すことも可能になります。
もしゲーム開始直後にエンディングを呼び出せるなら、途中のステージやイベントを攻略する必要はありません。RTAという観点だけで考えれば、これほど強力な短縮方法もないわけです。
では、『マリオストーリー』でACEを使えば終わりなのかというと、話はそう簡単ではありません。
『マリオストーリー』でも理論上はACEを行えるものの、そのまま人間の操作で成立させるには難易度が高すぎるという問題がありました。そこで目をつけられたのが、同じNINTENDO 64で動作する**『ゼルダの伝説 時のオカリナ』**です。
こちらではACEを再現できるため、『時のオカリナ』側で『マリオストーリー』のエンディングにつなげるためのコードを作ってしまおう、という発想に行き着きます。
ただ、当然ながら『時のオカリナ』で作ったものが、そのまま別のゲームへ移動するわけではありません。そこで両作品をつなぐ役割を担うのが、NINTENDO 64の周辺機器であるメモリー拡張パックでした。
利用されるのは、本体の電源を切った後もしばらくメモリ上に情報が残る性質です。『時のオカリナ』側で必要な値を作り、それをメモリに残した状態でカートリッジを『マリオストーリー』へ入れ替える。つまり、ゲーム内のアイテムやセーブデータを引き継ぐのではなく、ゲーム機内部に残っている情報を別タイトルから利用しようというわけです。
ここまで準備して、ようやく『マリオストーリー』を起動します。
今度はメニュー画面を開いた状態で大量のアクションを行い、本来なら発生するはずのエフェクトを溜め込んでいきます。それをメニューを閉じたタイミングで一気に発生させることでゲームをクラッシュさせ、その際に生まれる隙を利用して、拡張パックに残しておいたコードへアクセスさせるという流れです。
そして、その先に用意されているのがエンディングへつながるコード。つまり大まかな流れを整理すると、『時のオカリナ』で必要なコードを作る→ゲーム機のメモリに残す→『マリオストーリー』へカートリッジを交換する→クラッシュを利用してコードを実行する→クリアへつなげるという、とんでもない攻略になっています。
普通なら、一つのゲームを早くクリアしたいなら、そのゲームだけを徹底的に研究するものです。ところがRTAでは、その前提すら絶対ではありません。
『マリオストーリー』だけでは難しいのなら、『時のオカリナ』の力を借りればいい。
理屈を一つずつ追えば何をしているのかは分かるものの、最終的に**「『マリオストーリー』を早くクリアするために『時のオカリナ』をプレイする」**という結論へたどり着くのが、なんともRTAらしいところです。
ゲームの内部だけではなく、ハードウェアの仕組みや別タイトルまで利用できるものとして考える。1秒を縮めるという目的を突き詰めていった結果、「攻略するゲームは一つでなければならない」という常識まで飛び越えてしまった、今回紹介する5つの中でも特に奇妙な攻略法です。
もはや攻略というより研究?RTAが面白いのは「1秒」を本気で追いかけるから
ここまで5つの方法を見てきましたが、改めて並べてみると、RTAという遊びの異質さがよく分かります。
夏時間によってゲーム機の時計が進む瞬間を利用する。ディスクの読み込みを意図的に遅くする。本体ごとの個体差を調べ、さらに温度まで調整する。そして最後には、一つのゲームをクリアするために別のゲームまで利用してしまう。どれも普通にゲームを遊んでいるだけなら、攻略方法として考えることすらなさそうなものばかりです。
ただ、こうした方法が生まれた過程を一つずつ追っていくと、単に「変なことをしている」で終わらない面白さも見えてきます。
ロードが速い本体を使えばタイムを縮められる。それなら、どの本体が一番速いのかを調べる。ところが処理が速すぎると必要なラグが発生しない。それなら、必要な場面だけ読み込みを遅くする方法を探してみる――。一見すると突拍子もないテクニックでも、その前には「どうすれば、もう少し速くできるのか」という試行錯誤が積み重なっています。
『ドラゴンクエストIII』の電源バグも同じです。引っ越しを境に成功率が変わったことから環境の違いへ目を向け、室温を以前の状態へ近づけると成功率が上がった。そこから本体の温度を調べる方向へ進み、最終的にはホットプレートまで登場するのですから、やっていることは攻略というより実験に近くなっています。
そして個人的に面白いと感じるのが、「昔のゲームだから、もう研究し尽くされている」とも限らないことです。
『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』では、捕獲直後にヒント画面を開いて閉じるという比較的簡単な操作によって、ファンファーレを短縮できる方法が長い年月を経て発見されました。しかも、その現象は2004年のオリジナル版でも再現できたとされています。
多くの人が何度も遊んできたゲームであっても、まだ誰も気づいていない挙動が残されているかもしれない。そう考えると、RTAには単純なタイムアタックとは違った楽しみ方があることにも気づきます。
もちろん、最終的に記録を出すためには高い操作精度も必要です。しかし、その裏側では「この待ち時間は本当に短縮できないのか」「この処理を飛ばす方法はないのか」「そもそもゲーム機はなぜこの動きをしているのか」と、細かな疑問を拾い続ける人たちがいます。
そして、ときには一人の発見を別のプレイヤーが検証し、そこからさらに新しい方法が見つかっていく。その積み重ねによって、何年も前に発売されたゲームのクリアタイムが今なお更新されていくわけです。
そう考えると、RTAで競われているのはコントローラーを動かす速さだけではありません。**ゲームの仕様をどこまで理解し、常識にとらわれず「まだ削れる1秒」を見つけられるか。**そこまで含めてRTAの面白さなのだと思います。
普通に遊べば、エンディングを迎えたところで一つのゲーム体験は終わります。しかしRTAの世界では、そこからゲームを分解するように調べ始め、何十年経っても新しい攻略法を探し続ける人がいる。
「たった1秒のために、そこまでするのか」。
今回紹介した奇妙な攻略法を見ていると、そんな言葉が出てきます。ただ、その**「そこまでやる」こと自体が、RTAという遊びをここまで奥深いものにしている**のかもしれません。
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